1. Jacob's Ladder
2. Jonah
3. Sternenfall
4. Death Worship
5. The Black Projector
6. Second Coming of the Pig
7. Deus Irae ★
8. Jericho
フランスのブラックメタルバンドによる3枚目フルレングス。
ジャケットが絵画的で素晴らしいですよね。
前作までとは趣を少し異にしている作品です。
前作はブラックメタル特有の湿り気のあるRawプロダクションでしたが、今作ではかなり音圧を上げて輪郭を明瞭にしています。
プリブラ特有の鬱な感覚が消えたわけではなく、ある程度「プリブラの音楽性はこういうもの」として明示しやすい=一般層にアピールしやすい作品だと言えます。
タイトルは「ヤコブの梯子」ということで、非常に暗示的な世界観を作り出しています。
歌詞ブックレットにもしっかり章分けがなされているので、コンセプチュアルなものと捉えて問題ないと思います。
ところどころ使われているSEは映画「ジェイコブス・ラダー」の抜粋なのかな?
そういうところからも、ある程度エンターテイメントしている聴きやすい音作りとは裏腹に、徹底的に作りこまれている世界観は圧巻。
フレンチブラックと言えばDeathspell Omegaが有名ですが、このHell Militiaも漏れなくDsOの影響は受けている音楽性で、メロディーラインなんかはDsOのそれに近いです。
ただ、DsOがカオティックコアに近づいたのに反し、あくまでプリミティヴブラックの枠に留まっています。
その枠の中でいかに世界を作りこんでいくか。それが、このバンドの個性なのかな、と思います。
陰鬱で耽美なメロをゆったりと弾き倒すギターが主で、そこに突進するブラストを絡めており、その対比がなかなかに美味。
不協和音リフっぽいものもあるものの、結構聴きやすく、曖昧でなく明瞭なところが良いですね。
掻き毟るようながなり声はクリアになった音質の中でもくっきりと浮かび上がり、異様な迫力で迫ってきますね。
SEからど派手なリフと絶叫で幕を開ける爆走プリブラが陰鬱かつドゥーミーに沈み込んでいくM-1、DsOっぽいトレモロリフとブラストビートで押し込むような爆走パートと儀式的な静寂パートの対比がいいM-2、SEと重たいリフでずーんと沈み込んでからの狂気的な爆走で駆け抜けていくM-3、トレモロリフが重なり合ってドゥームメタル的に展開していくもリフが明瞭なので聴きやすいM-4、断末魔で始まり爆走→静寂→ミッドテンポとややプログレッシヴに展開していくM-5、全体的にドゥームブラック的な世界を持つもやや短めの爆走とアンビエントを挟んでクソ重たいパートに移行するM-6、ゆったりと弾かれるトレモロリフを泳ぐようにがなり立てる作中最も長いM-8となかなか聴かせる構成だと思います。
わかりやすい突進のファストブラックM-7がお気に入り。
ファストと言えど、メロが非常に凝っていて突進と進軍のバランスが絶妙。
ミドルパートは何箇所かありますが、どんどん派手かつ儀式的になっていくのも面白い。
何よりリフが作中一番かっこいい。これ。
湿った暗鬱な世界観なので聴く人自体は選ぶと思いますが、案外ポストロック界隈の人にもアピールできる音使いかな、と。
とは言え、美しくはないですけれども。美しいメロは存在しても、基本的には暗くおぞましいので。
フレンチブラックって何ぞや?って人には案外うってつけの作品かもしれません。
個人的には満足できたけどもう一押しあれば嬉しかったかもです。
(2012年発表)
満:★★★★★★★★☆ (8.5/10)
薦:★★★★★★★★☆ (8.5/10)