むじかほ~音楽雑記彼是-wyrm

1. Necrotoxic
2. The Fallen
3. Night Stalker
4. Rune Rider ★
5. Ballet For The Antichrist
6. Fucked In The Grave
7. Cave Canem
8. With Hate In Their Eyes
9. ...And Cursed Be The Land I Walk Upon


チェコのペイガンメタル/ブラックメタルバンドの3枚目フルレングス。

結構このジャケかっこいいんですよね。ロゴもなかなか渋い。


チェコと言えば、最近ではLamb Of GodのRandyが逮捕されたことでUSメタルファンからの株が急降下ですね。

結構不当な逮捕だったので、メタルに不寛容な国なのかというイメージすら抱いている人もいると思いますが、このバンドはかなり良質なバンドだと断言しておきます。

ギタリストが女性ということでも有名なようですが、彼らの音楽性はDissection、もしくはTaakeに近いと思います。

Bathoryに忠実、といった見方もできるかもしれません。

音質もRawかと思いきやかなり分離が良く厚みもあり、それでいて薄気味悪いプロダクション。

多くの人が想像する通り、ペイガンなブラックメタルそのまま、といった装い。

彼らの場合、Dissectionと大きく違うのが、土着的なメロディーが前面に出ているということ。

うっすらとリフに被せる、というような使い方はせずに、そのままリフでメロディーを描き出す感じ。

そのため、かなり耳馴染みが良く、そのメロディーも絶妙のバランスを保持しているため、EquilibriumやEnsiferumらほどクッサクサではありません。

そして最大の特徴がパンク寄りの軽快さを持っているということ。

この聴きやすさはそれが一番の要因なのかな、と。

ドラムはブラスト織り交ぜのスタイルですが、時折明らかにもたついているのが愛しい(笑)

ギターはトレモロをかけたオーソドックスなものながら、前述の通りしなやかにメロディーを構築するセンスに長けていると思います。

Voが意外と白眉で、この手の音楽性ではギャアギャアがなるのが主体かと思いますが、案外芸達者で何より声質がかっこいい。このがなりは苦手な人少ないんじゃないかな、と。


いきなりどがつくほどキャッチーなリフが飛び出すペイガンブラックM-1、ギャアギャアがなるVoで悪魔っぽさを演出しながらも陽気なリフと緩やかなソロで魅せるM-2、一転闇雲にスタスタドラムが暴走しトレモロリフで殺しに来るM-3、ノリのいいHRチックな面白ペイガンブラックM-5、ユニゾンするリフがやたら熱い2分に満たないM-6、初期のTaakeを思わせるわかりやすいリフと呪術的なコーラスが癖になるM-7、ベースソロから繋がるアンビエントなシンセへと展開していき不思議とニューウェイヴっぽい質感を帯びる邪悪なM-8、悠然と広がっていく荒涼さがドゥームメタル的でもある重厚さを持つM-9と、案外ゆったり目な曲にこそこのバンドの持つ旨味が凝縮されているかもしれません。

表題曲でもあるM-4がすんごい好き。

うっすらギターでメロディーを弾きながら渾然一体となって哀愁を振り撒く感じが渋い。渋すぎる。

緩急をかなりつけているのもまた好印象。走りまくるドラムも可愛いです(笑)

単純にメロディーがいいんですよね。こう、グッと胸を焦がしてくれます。

哀感を表現したトレモロで弾かれるソロも心憎い。うっすら響くレトロなシンセもいい味出してます。


いやあ、これは掘出物だと言えるかも知れません。

B級と言えばB級なのですが、特有の聞き苦しさは皆無で、結構いい作品と言えます。

トレモロピッキングっていうブラックの基本かつ必殺武器と劣悪なプロダクションっていう雰囲気に頼っていない感じも好印象ですね。

しっかしこのドラム、決してうまいって感じではないのに愛嬌があって不思議と聞き入ってしまうなあ。


(2012年発表)


満:★★★★★★★★☆ (8.5/10)

薦:★★★★★★★★ (8/10)