むじかほ~音楽雑記彼是

1. Empty Stations
2. Recognise
3. Come With Me
4. Red Night
5. Keep It Low
6. SF Summer
7. Faded
8. Tunnels
9. Stay The Night ★
10. Lead In The Light
11. Stay The Endless Night [Bonus]


US出身のオルタナティヴ/ポストパンクデュオによる2枚目。

相変らずエレノアさんはお綺麗ですねえ。


00年代も終わりに登場し、名門WARPのハートも見事射止めた期待の新人と持て囃されたのも懐かしい。

今作は、あちらこちらにぼろっかすに叩かれた問題作ということで、ちょっとおっかなびっくり聴いてみました。

うん、これは叩かれでもしょうがない(笑)

そう形容してしまうほど、非常に内向的。ダークではなく、デリケート。要するに、閉じているわけですね。

前作は非常に狂騒的で、無論今作のように落ち着いた志向の曲もあったのですが、開かれたポップアルバムとして受け入れられていました。しかし、今作は落ち着いているわけではありません。

むしろどんどん沈み込んでいっている音像と言っていいでしょう。

私がこれを嫌いかと言えば、とんでもない。非常に大好物な方向性です。

今作のモチベーションは「孤独」と「喪失」だそうです。発端がBloadcastのTrish Keenan、TV on The RadioのGerald Smith両者の早すぎる死ということもあるようで、歌詞はひたすら置いていかれることの苦痛を歌っています。

故に、表層的な聞き方をしてしまえば到底捉えられるものでもなく、かといって全くポップでなくなったかと言われるとそうでもない。

彼ら流のポップマナーは楽曲のいたるところで聴けるし、むしろ前作よりもより高みの次元に達しています。

ここぞとばかりに唸りを上げるギターも主張しすぎず、あくまで曲のエッセンスとして効果的に機能していて、なおかつ全編のスペーシー&アトモスフェリックなシンセも蠢くように曲を覆っています。

そして何より、Voエレノアの表現力の向上が凄まじい。

退廃的に気だるく歌えば、泣き叫ぶようにも歌い、光を感じさせる歌い方もしています。この表現力は控えめながらもぐっと聴き手を掴んで離さない。


アンビエントなSEからギターが優しく爪弾かれ絢爛なポストパンクへ変貌するM-1、遠雷のようなプロダクションで叩かれるビートに導かれる感傷的なダブステップの中をVoがゆったり漂うM-2、金属質なリフが唸りを上げる神経質的に迫ってくるM-3、ひんやりしたブリストル/ダブの海を蠢くようにVoが歌うM-4、耽美なシンセからミニマルテクノのような乾いたビートが心地好いM-5、宙に溶けていってしまうかのようなプロダクションの美しいエレポップM-6、聴き手を遮断するように遠くの方で歌い続ける密室的で神秘的なM-7、静かなギターから爆発するようにコーラスが折り重なるM-8、光を感じさせるような音の中を優しげなメインのVoラインと神秘的なコーラスが昇り詰めていくM-10、M-9をリミックスしたミニマルテクノM-11と非常に粒ぞろいの楽曲が揃っています。

白眉はやはり、M-9の美しさと蠢くような孤独感の絶妙な対比。

大地を這うようなシンセもさることながら、この曲は非常に寓話的。

なのに、歌は非常に私的。

「私のそばにいてほしい」と歌い続けるVoに、切々としたものを感じます。

中盤の祈りのようなコーラスの隙間から立ち昇るシンセとか美しすぎて言葉も出ませんで。


一切の妥協も感じられない、非常に高次元で音を丁寧に組み立てている作品といっていいかもしれません。

偏執的と言ってもいいほど、手抜かりなく、音が重なっています。

元々そういった技には長けていましたが、今作では極致に達したというか2枚目でこの境地とか何それこわいレベル。

幻惑的で、何者をも拒むかのような耽美さと、一歩入れば掴んで離さない魔性の中毒性を併せ持った作品。


(2012年発表)


満:★★★★★★★★★ (9/10)

薦:★★★★★★★★ (8/10)