素晴らしいデビューアルバムである。

UKのポストパンクバンドとして注目されたThe Chapman Familyの1stアルバム。

ポストパンクと比喩されることからわかるように、暗黒的で耽美なメロディーと跳ねるベース&躍動的なビートから構成されている。

しかし、陰影のあるギターと轟音のおかげで、密室的な空気を持ちつつも野外でも対応できそうなレンジの広さを獲得した。

本人たちも言っている通り、ブレイクのきっかけとなったM-8の勢いのままアルバムを制作していれば、少なくとも今より知名度は上がっていたはずである。

だが、それではよくある「ポストパンク/ニューウェイヴ」のリバイバルの唯の一枚で終わっていたはずだ。

彼らはそれを良しとせず、曲を練りに練り上げてきた。

また素晴らしいことに、このアルバムには確かな衝動とでも言うべき感情が注入されている。こなれていないのだ。

だからこそ聴いていると無性に居ても立ってもいられない心地にさせられる。

デビューアルバムにして二枚目のような完成度を持ちながら、これは1stアルバムとして非常に正しい。

柔らかで艶やかな歌声からはじまる聖歌のようにすら聴こえるM-1、続くノイジーで攻撃的なM-2、まるでTaking Headsが乗り移ったかのような図太いドラムと翳りのあるギターが美しいM-5、けたたましい轟音ギターと噛み付くようなVoが作中最も凶暴なM-8、ノイジーなベースラインと他人事のように呟かれるVoの対比が面白いボートラM-13と、かなり多彩だ。

中でも個人的には特徴的なベースラインと痙攣するようなギター&ドラムが癖になるM-7がお気に入り。

この曲は、Voのキングレーが最も好きだと語るNINのような雰囲気がある。

これはNIN大好きな自分の心を打った(笑)

曲タイトルも何だかそれっぽいし。


どっしりとした落ち着きと、おそらく苛立ちや葛藤からくるであろう焦燥感と衝動。

それらを見事に内包し、融合している。

扇情的なタイトルに負けないくらい、攻撃的な作品である。

今時珍しいくらい、やりすぎたギターロックのアルバムであり、非メタルの攻撃性に飢えている諸氏にはぜひともお勧めしたいアルバム。

年甲斐もなく興奮してしまった。完全にツボ押された感じです。

しかしこれは今の流行とは本当、無縁だね。


(2011年発表)

Myspace


満:★★★★★★★★★ (9/10)

薦:★★★★★★★★ (8/10)

FT:A Certain Degree、All Fall、1000 Lies、Something I Can't Get Out、Kids、All That Is Left To Break