無邪気に掻き鳴らされる純粋さに胸がすっとするイメージ。
One Night Onlyのデビューアルバムはその類のもので、どちらか言えばスタジアム級のステージでこそ映えそうでもあるし、ライヴハウスという狭い場所では一緒になって騒げもする音楽。
スティーヴ・リリーホワイトのプロデュースということで、U2とかのイメージも確かにある。あるのだけれど、彼らのような主張の重さは、One Night Onlyにはない。
メンバーはみんなあどけなさが残り、それは楽曲の持つ陽気さ・無邪気さを裏付ける要素にもなっている。シングルにもなったM-3「You & Me」にも見られるように、彼らの歌はごく日常的なものだ。
故に、単純にメロディーの良さが際立つ。
けれど、他のバンドと一線を分けているのが、ギターのリリカルな響き。とにかく彼らのギターは、真っ直ぐで抜けがいい。アルペジオで丁寧に弾いているし、他の楽器に絡ませる技量にも長けている。
ポップはポップでも、パワーポップとかそういうのは期待してはいけなくて、UK伝統のポップなロックという趣が強い。メロディーは陽性ながら、翳りへ落ちそうな危うさも、少しだけ感じ取ることはできる。
The Killersというよりは、TravisのGood Feelingのようなアルバムではある。つまり、それくらい軽快なのである。
重くない音に、くっきりとしたVoのラインとコーラスがあって、それは聴いているだけで気持ちよくなる。
今流行りのニュー・レイヴだとかニュー・エキセントリックだとかいうバンドとは真逆の立ち位置にいるが、キーボードの音色がそれっぽさも少し感じさせるのはご愛嬌。
癖がないという意見もあるが、無味乾燥というわけではなく、この真っ直ぐさをきちんと曲に反映させている辺り、好感は持てる。
優しい音だけれど、くっきりと楽器が立っていて、ちょっと尖っているのも面白い。
フロア受けというよりは、ライヴハウスやバーなどで演奏されるに相応しい音という印象。
インディー・ロックという感じではないけれど、案外こういうバンドが大きくなったりするんだろうなって思った一枚。
必聴!っていう風に肩の力を張って聴いてはいけないアルバム。
全10曲約40分が一気に駆け抜けていって、実に気持ちがいいや。
(2007年発表)
満: ★★★★★★★ (7/10)
薦: ★★★★★★★★ (8/10)