姿勢・運動制御×臨床①〜CPGによる下肢の機能回復と末梢からの感覚情報〜 | 脳の治療を考える

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ニューロリハビリテーション研究会BRAIN代表の針谷遼です。
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姿勢・運動制御×臨床①~CPGによる下肢の機能回復と末梢からの感覚情報~



CPGは「感覚入力や上位中枢からの神経指令なしに周期的な運動パターンを生成する神経回路網」と定義されるのだが、実際のところ、歩行運動の制御には感覚情報が重要な役割を果たすことが明らかにされている。1)


脊髄の歩行リズム生成機構2)

図1:脊髄の歩行リズム生成機構2)



CPGの駆動には中枢からの指令と、末梢からの感覚情報が必要で、どちらかが欠けるとCPGが駆動しない。だから、末梢の情報を整えてあげることも重要になる。特に筋紡錘からの入力は屈筋群介在ニューロンを、荷重情報の入力は伸展介在ニューロンを賦活する。どちらを賦活したいかで、整えるべき末梢のパーツも異なってくる。


別件になるが、下肢の運動麻痺の改善にはCPGが関与する、という話もあるらしい。下肢の機能回復にCPGといった脊髄介在ニューロン群が関わってくるとしたら、末梢の情報を整えること自体が下肢の神経機構を賦活し可塑的な変化を起こすことにつながると言える。皮質脊髄路や網様体脊髄路を賦活するように、末梢の感覚神経を賦活することで、機能回復を促進するCPGを賦活することができる。つまり、脳の治療として、筋骨格系へアプローチする方法もあるのかもしれない。


CPGなどの脊髄介在ニューロン群への入力として皮質脊髄路、網様体脊髄路、筋緊張促通系、感覚神経Ⅰa線維などがあるから、これらを同時に賦活していけば、CPGなどの脊髄介在ニューロン群の閾値を超えた瞬間に筋活動が生まれる。そしたら長期増強を使って、入力してくる神経と脊髄介在ニューロンとのシナプスの伝達効率を高められれば、と思う。


筋骨格系にアプローチして感覚神経Ⅰa線維を賦活する方法は、他の経路を賦活するよりも簡単にできる。だから、最低限、ここはやっておこうと思う。



参考文献:
1)河島則天:正常歩行の神経制御.理学療法26:19-26,2009
2)土屋和雄,高草木薫・他:シリーズ移動知第2巻 身体適応ー歩行運動の神経機構とシステムモデル.オーム社.東京,pp46-49,2010