週末になるといつも行くビアレストランがあります。


昨年50周年を迎えた関西で老舗のお店で大阪・神戸に支店もたくさんある。


私が行っている高槻店の店長が転勤で本店に行き、

本店の店長だった方が高槻へ配属になった。


店長交代の一週間前には引継ぎのため新しい店長はこちらへ入っていた。


その頃からあるジィさん客が来るようになった。


その人は昭和43年からこのビアレストラン各店舗に通い続けて

社長、店長代々の名刺を大きな名刺ホルダーに入れて持ち歩いている。


とにかく自分はこの店の顧問であるかの気分で

他の客やスタッフに、いかに店や店の人物、歴史、内情をずっと見てきて詳しいか、を自慢したい人なのである。


奈良の生駒郡から出てきて ごくろうさんなんだけど


その人が来ると相手をしないといけない感じで

店側としてはありがたい気持ち半分、ちょっとうっとおしい存在でもある感じにとれる。


1人出来てカウンターで大きな声でしゃべりまくるので

私も最初、「なんだこのジジィは」と思っていた。


店長交代してからの週末、私がいつも座る席のとなりに

そのジィさんが座ってた。


ちょっとイヤな予感がしたけど仕方ない。


店長が来て 「隣のオッサンうるさいけど 気にせんといてくださいね」


しかし、隣にいてなかなか無視も出来ず、相手するハメになってしまった。


ジィさんは、店長の交代など変化があった時には しばらくそこへ通い

ちゃんとやっとるか、慣れてきたか、しっかり見届けるためと

肩書きが変わってからの名刺をコレクションに加えるためにやってくるみたい。

(店長にしたら大きなお世話と思うけど・・)


ジィさんの持っているセカンドバッグはその店のロゴが入っていて

かなり昔に作ったグッズで店のも関係者も珍しがるくらいの貴重なものとは思う。


そして大きな名刺ホルダーを自慢する。


本店からローカル店まで全店長や役員さん、前頁にズラリ。


マネージャーから店長へ、または大きな店舗からローカルへ左遷など

そのジィさんは異動のたびに名刺を並べ替えて

「こいつは出世した」とか「オチよった」とか ニタニタと1人で自分の世界で楽しむらしい。


ちょっと気味が悪いが、その人の一番の趣味で生き甲斐みたい。


ジィさんは今年で60歳らしいけど、どう見ても70歳こえてる様に見える。

しゃべりはしっかりしてるけど・・・うるさいほどに。とまらない。


お相手をした事で気をよくしたジィさんに


「次いつ来るの?」と聞かれ、 うっかり金曜が多いと言ってしまった。


ジィさんは手帳にメモしていた・・・(しまった!)


悪い人ではないけど 好きになれないのは 自慢タレなのと


年寄りに多いしぐさで

冊子のページをめくる時にいちいち指にツバをつけてめくる。


名刺ホルダーを自慢げにめくるのと日記代わりの手帳をめくるしぐさを

さんざん見せられ、


きったな~・・・・ ツバでゴワゴワ・・・


その手でボディタッチしてくるから もう、、、勘弁してくれ~~!


それでなくても気安く触る人って嫌い! ジジィだからじゃないよ。


それに、風呂に入ってないのか、服を洗濯してないのか、只の加齢臭なのかわからないけど

ジィさんは臭うのです。 それもイヤ。



そして昨日。 金曜日がやってきた。


店長にメールした。

「6時半くらいに行きます。

お願いなんですが、Kさんと席を離してもらえませんか すみません」



店に着いたらいつもの私の指定席とその隣の席に飲み物のコースターが置かれ

予約席の札が置かれていた。


やっぱり来ていたジィさんはカウンター中央に座らされ、店長が相手をしていた。


私の隣に座れないよう2名の予約ということにしてくれたらしい。感謝!


でもまだカウンターは私とそのジィさんしか客がいない。


ジィさんは私に、よく知ってる人に挨拶するみたいに 「ヨッ」 とこちらに手を上げた。


軽く会釈して席につくと

店長がこちらに来たので、「変なお願いしてすみません」 と一言謝った。


「私が来る日に 来るって先週言われたので、毎回相手するのはちょっと・・・

こちらも自分の時間を過ごすためにここに来てるわけですから」


店長は「先週となりだったから もしかして、と思ってました。大丈夫ですよ」



するとジィさんが 遠くから 話かけた 「優子さん、あとでプレゼントあります」


先週、確か何かくれるみたいに言ってたよなぁ・・・NTTが電電公社だった頃のテレカの自慢の時・・


その場は聞こえないふりしてメニューに目を通していた。


15分後くらいして ジィさんはこちらにやってきて

「これよかったら」 紙袋から箱に入ったものを取り出し、開けて見せる。

昔この店の抽選会で当たったという陶器のワイングラスのセットを私にくれるという。


いただく理由がありません と困惑して言った。


「迷惑やったら持って帰るけど、変な意味もないし

また隣で座った時にはよろしくってことで」


ますます困惑! そんな意味では余計にいただけない。絡むのは1度で充分だし。


バーテンダーさんは 「くれるって言うんだから貰っといたら?」


せっかく持ってきてまた持って帰らせるのも気の毒にも思った。


どうしよう・・・。



店長がやってきて


「ちょっと、ヤカラがまた何をからんでんねん!」


ジィさんに言った。


プレゼントをされて困っている状況を見て



「一応、受け取って、あとは店で保管してもいいですから」と店長がコソッと言ってくれた。


そうですね・・。


「じゃあ、いただきます」 とその場では返事した。

「あ~よかった」 とジィさんは喜んでいた。


それから2時間くらい店で飲んでた。


ジィさんは近くに1人で座ってる男性客を捕まえ、

先週私にした話とまったく同じ話をしていた。



「あの人、僕らよりこの店の事よー知ってはるねんけど

どこ行っても嫌われんねん」

40数年前からずーっと居る酒場のバーテンダーさんが言う。



ジィさんは今までの人生で1度も結婚したことはないそうだ。


友達もいなさそうな。



私が帰るとき、


ジィさんは ジーっとこっちを見ていた。


自分がプレゼントした荷物を持って帰らないのに気がついた思う。



店を出たところまで店長が送ってくれた。


「しばらく店で預かっときますね。 Kさんにも一言注意しておきます」


「すみません・・私も、いただくかどうか考えます。」



大好きなお店。


行きづらくなるのがつらい。


これから2週ほど土曜出勤になりそうだから、金曜は行かないけど。



店長が変わる前は高槻店では見かけなかった人なので

今の店長は比較的ジィさんをよく相手してあげてきた人なのだろう。

それでついてきちゃったんかなぁ・・・


私の隣に座ってはいけない人がこれで2名に


なぜか2人ともイニシャルがKさん(笑)



他のお客さんの迷惑にならない飲み方をしよう。

客マナーの基本なんだよな。




それにしても、どうしよう、あのプレゼント。



はぁ・・・