「ピチャヴァイ」の話。。。 | ARSNOVA 銀座 オーダーメイド リフォーム ジュエリー 選び抜いた美しい宝石

ARSNOVA 銀座 オーダーメイド リフォーム ジュエリー 選び抜いた美しい宝石

Bijou de ARSNOVA Ginza,Tokyo Est.1984
「生涯、愛せるジュエリーを…」 飽きることなく、永く愛せるジュエリーをご所望のお客様方にご愛顧頂いております


mughal art


 今日は一日自宅で静養をしていました。

先週1週間のハードなスケジュール、

またこの仕事独特の緊張感で食事が喉を通らないのです。

1週間で2kgウエイトダウン。。。

嬉しいような、悲しいような・・・

でも、私は宝石商という仕事が好きです。


 さて先日もご紹介した上の画像ですが、

「ピチャヴァイ」というインド更紗の一種なのです。


 ほとんど本屋に行かない(行く時間がないのです。

いつもは100%アマゾンドットコム・・・です。)私が、

電車の待ち時間が15分ほどあることに気が付いて、

本屋に立ち寄りましたら、

別冊太陽の「更紗」を見つけました。


小笠原 小枝
更紗

 この本を開くと、

「ヘェー、更紗ってインドが発祥なんだ・・・」とか、

「更紗という言葉自体インドの土語のサラーサからきているんだ。」とか、

(インドの土語で「サラーサ」は「最高級」の意味)


 また、私が扱っているマハラジャジュエリーに

施されている七宝と

そっくりなモチーフがあったり・・・


良い資料になるな、と思い、この本を求めたのです。


 そしてこの本がきっかけとなり、

私はウェブサイトでもインドの布について調べてみるように

なりました。

あるサイト上に出ている布・・・が、

(実は私は当初それを細密画だと思っていました。)

とても気になり、それは売り物なのかどうか

問い合わせをしてみたのです。

『お譲りしても良い。』とのお話、

私はワクワクしながら

その方の元へ向かったのです。


実際に目にしたその布は、

想像を遥かに超える美しさでした・・・

ただ思っていたよりもかなり大きなものでしたので、

そこの部分がちょっと気がかりでした・・・


 すると、その場に偶然居合わせた

老婦人がとても的確なアドバイスをしてくださったのです・・・

「ここをカットして、裏から布を張った方が良い。」とか、

「ここの部分は修復をかけた方が良い。」とか、

あまりの的確さに、驚いておりますと、

「私は何十年も美術館でこのような仕事をしておりましたの・・・」と

おっしゃるのです。

失礼かとは思いましたが、

「どちらの美術館で?」と尋ねましたら、

「メトロポリタンミュージアム。」・・・と。


もう、ビックリです!

それは的確なはずです・・・


「あなたはいつからムガールのテキスタイルを

集めていられるの?」と尋ねられ、


「・・・1週間ほど前から・・・

私はジュエリーが専門なのですよ・・・」

と答えますと、


「インドの、しかもムガールのテキスタイルの美しさは格別よ。

私もいろいろなものを見てきたけれど、

今はムガールだけしか見たくないの。

それにしてもこの布はすごいものよ。

私がメトロポリタンにいた間にもここまでのピチャヴァイは

なかったわ・・・」


(この時、初めてピチャヴァイという言葉を聞きました。

時のマハラジャがヒンドゥーの寺院に奉納をした

掛け布であるとのことを・・・)

もっともっとお話を伺いたかったのですが、
自分の店からの呼び出しがかかって、
その布を必ず買う旨を伝えて
その場をあとにしました。

 後日、この布をお持ちだった方から電話があり、

そのご婦人がメトロポリタン美術館のテキスタイルの室長として

長く勤め上げた方であること。

日本でテキスタイルを専門とする方なら、

このご婦人を知らない人はいないとのこと。

また、私が求めたピチャヴァイにとても感激をされて、

翌日もそれを見に来られたことをお聞きしました。


また、私の決断の早さにも驚かれたようです。

私は良い物は30秒でわかるのです!

これは多分特技だと思います。


このピチャヴァイの修復のことだけが気がかりで、

帰りがけに、オーナーとご婦人に、

「修復にかけてはお知恵をお貸し願えますか?」と

お願いをしておきました。


今、このピチャバイは修復の方の工房にあります。

この工房がまたすごい!!

メトロポリタンで長くテキスタイルの修復をされていた方(老婦人の部下だった方)と

東京国立博物館で絵画の修復をされていた方が、

ご一緒に工房を持たれているそうで、そこにお願いをしてあります。

私のピチャヴァイは布にペインティングをしてあるものですので、

修復に関して、これほどジャストな工房はないのではないかしら?


修復の費用は普通の方が聞いたら、

驚かれるのかな・・・

でも、このピチャヴァイはミュージアムピースを越えるようなもの。

そのようなものにそれなりの修復をすることは

それを持つ人間の責任だとも思うし、

修復の方の技術を拝見するのも、

実に愉しいものなのです。

私は根っからの美術品好きです^^



 結局のところ、2月の講習会が無かったら、

私がこのようなものに関心を持つこともなかったと思います。

私が扱うマハラジャジュエリーと同時代の

違う分野のインドの芸術を見ることで、

扱っているマハラジャジュエリーが

今まで以上にクリアーに見えるようになりました。


このめぐり合わせにとても感謝をしています。


ピチャヴァイの詳しい説明は

後ほどupします。