北野武の器 | 光の射す方へ

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幾つもの時を越えて

全思考/北野 武
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「こいつら、フランスから遊びに来てくれたんだ。」

北野武さんが赤坂にあるお店に遠路はるばるフランスから北野武監督の故郷を見たい

一心で日本までやって来たという熱心なファンを二人連れて来た。

とびっきりの食事を御馳走して、一緒に酒を飲んで、それからカラオケに行こうということになった。

赤坂のお店の御主人と奥様も一緒にカラオケに行った。

北野武さんと二人のフランス人とゾマホンさんがいた。

会話は日本語と英語とフランス語。

しかし、意味は通じる。

皆で歌を唄って大騒ぎ。

夜中の2時ぐらいに北野武さんが「カラオケやめ!」突然マイクを握って立ち上がった。

酔って何かおもしろいことでも言うのかなと思ったが違う。

「いや、今日は本当に・・・・・・」と北野武さんが改まった口調で話し始めた。

皆は一瞬シーンとした。

ゾマホンさんが二人のフランス人のために通訳を始めた。

「今日はいつものお店で飯を食って、いつものようにお酒を飲んで、いつものように遊びました。
これが嘘も偽りもない、本当の北野武です。君たちは俺に思い入れがあるみたいだから
ひょっとしたらがっかりしたかもしれない。でも、俺は今日、君らに会えてとっても嬉しかった。
ありがとう。またいい映画作るよ。」

北野武さんはそんなことをおっしゃった。

北野武さんには、ひとっかけらの気取りも、偉そうな素振りもなかった。

一緒にお酒を飲んで、大騒ぎして、これが本当の俺だよと。


北野武という人間の器は底知れなく大きい。