浮き雲 | ひでの徒然『映画』日記

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浮き雲


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アキ・カウリスマキ監督の「敗者三部作」の1作目。


レンタル店でようやく見つけたこの作品。久々にVHSで鑑賞しました。


「敗者三部作」の名に恥じない?敗者っぷりです(^_^;


レストラン「ドゥグロヴニク」の給仕長イロナは38歳。支配人に代わり、まとめ役としてみんなから信頼を得ています。イロナの夫ラウリは路面電車の運転手。2人の暮らしはごく平凡なものでした。


しかし、ラウリがリストラされてしまってから、2人の人生の歯車が狂いだします。


2人でデートに出かけても、イラつくラウリ。不審に思うイロナはラウリを問い詰めます。ラウリはイロナにリストラされたことを言っていなかったのです。その期間1ヶ月。ラウリは、失業手当も受けずに再就職先を探そうと決意しますが、ことごとく失敗。頼りになるのはイロナだけでした。


しかし、イロナにも不幸が訪れます。


レストランが融資を受けていた銀行が代わり、銀行員がローンの完済にやって来たのです。とても払えないと支配人のスヨホルム。亡き夫から受け継いだレストランの38年の歴史に幕を閉じます。


そして、イロナも無職になってしまうのですが・・・。


まぁ、これでもかと不幸が襲いかかるイロナとラウリ。


同じく無職になってしまったレストランのクローク係メラルティンやシェフのラユネンは、飲んだくれて嘆いているだけでしたが、この2人は決して弱音を吐かず、常に前を見て歩いていました。


「敗者三部作」で共通して言えることは、敗者となる主人公たちが、自分のことを「敗者ではない」と思っていることが挙げられます。


それは、プライド?なのかもしれないし、単なる勘違い?鈍感?なのかもしれません。


でも、これって結構重要ですよね。自分で負けを認めたら、そこまでですから。


イロナとラウリを見ていると、リストラされてお金がない程度の不幸は不幸と言えないのでは?と思ってしまうほどでした。


イロナとラウリのこれほどまでの逞しさは、2人の愛もエネルギーになっているのでしょう。2人の会話は、アキ・カウリスマキ監督作品独特の言葉数が少なく、感情の強弱も少ないため、時折みせる2人の何気ないキスシーンが非常に印象に残り、2人の愛を深く表現しているかのようでした。


イロナ役にはカティ・オウティネン。アキ・カウリスマキ監督作品にはなくなてならない女優ですね。


アキ・カウリスマキ監督作品のもう1つの特徴とも言える音楽もオープニングから聞かせます。この作品ではジャズ調の曲が多いですが、イロナとラウリの人生と相まって中盤あたりから「演歌」のようにも聞こえてきました(^_^;


あと、お約束のワンちゃん(名前はピエタリ)も登場します。


ラスト。他の「敗者三部作」である「過去のない男」、「街のあかり」と比べると、大団円になるのでしょうね。それでも、イロナとラウリの2人(それと、ピエタリ)のラストシーンに、三部作に共通する素晴らしい人生が始まる予感と心の温もりを感じることができます。


真っ青な空に浮かぶ真っ白な雲を見上げたときのように、心が穏やかになれる作品でした。



にひひにひひにひひにひひ



Title:

KAUAS PILVET KARKAAVAT


Country:

Finland (1996)


Cast:

(Ilona)KATI OUTINEN

(Lauri)KARI VÄÄNÄNEN

(Rouva Sjöholm)ELINA SALO

(Melartin)SAKARI KUOSMANEN

(Lajunen)MARKKU PELTOLA

(Forsström)MATTI ONNISMAA

(Pietari)PIETARI


Director:

AKI KAURISMÄKI



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