「お兄様っ!」

 と私が駆けつけるよりも早く、お兄様は私に向かってふらふらになりながらも、それでも走って私に駆けつけ、私をきつく抱き締めた。

「美和―……っ!」

 私の首筋に顔を埋めるお兄様の吐息は熱かった。

 はぁ……っと大きく呼吸を繰り返す。とても苦しそうで私は思わずお兄様の背中に腕を回してしまう。

 兄妹なのに―……!

 なのに、なのに……

 お兄様は私を抱き締めていて、

 私もお兄様を抱き締めていて、

 果たしてこれが兄妹の形なのだろうかと、

 愚問してしまうのだけれど、

 私たちは兄妹であって

 兄妹ではないのかもしれない。

 他と比べていては、

 私たちは兄妹ではなくなってしまう。

 だから―……

「お兄様ぁ……っ」

 気づいたら零していた涙。

 滴る涙も、これは全てお兄様のものだ。

 お兄様が流す血が、私のものであるように、

 この涙は私のものなのだ。

「美和……平気か? 怪我はないか―……」

 言葉の途中で私は背中に回した腕を首に回した。

 もっとお兄様を近くで感じたくて。

「そんなの、どうでも良いんです……っ! ただ、お兄様が……お兄様が、こんなにも私の為に……」

 自分の言葉は恥ずかしくなかった。

 お兄様は私の言葉を聞いたからか更に私をきつく抱き締めた。

 血の匂いがほのかにする。

「当たり前だろう……?」

 どういう過程で、お兄様は私を助けるに値する存在だと認識したんだろう。

 私はお兄様にとっての何なのだろう。

 その答えはとても欲しいものだった。

 だけど今すぐ欲してしまうとお兄様との関係が壊れてしまいそうで、嫌なのだ。

 ―……壊れてしまうのが嫌?

 私はお兄様がいなくてはだめなのか―……?

 そんな―……。

 自分の思考に絶望してしまうのは、

 お兄様が私の、

 兄だから―……。





「お兄様? 大丈夫ですか? 病院に―……」

 その私の言葉を飲み込むようにお兄様は私の頬に口づけた。

「もう少し、このまま―……」

 熱を持った濃厚な舌が私の頬を這う。

 思わず喘いでしまいそうだが、そこは自粛する。

 その口づけも終わりお兄様の視線は私の目に定まった。

 視線が交差する。

「お兄様……お兄様は何故……私を毎夜抱くのですか……?」

 視線はそのままだった。

 だがお兄様はハッとしたように目を大きく見開いた。

「……そうだな……それが一番の疑問だろうな……何故今までお前が私に問わなかったのかが、不思議だ……」 

 私は……聞いてはいけない気がしたのだ。

 お兄様のどうしようもない感情が流れ込んで来て、どうしても聞けないような気がしたのだ―……。





「ただ、お前は私の欲求を満たす道具だよ」

 血の気が

 引いた―