Ian McDonald. 『Drivers Eye』 | Music and others

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 最近購入したレココレ(Record Collectors)12月号、表紙は「太陽の戦慄でした」。そう言えば、ロバート・フィリップ翁(Robert Fripp)のコンプリート音源シリーズがまだ続いていた事を思い出しました。 日本では根強い人気を誇るキング・クリムズン(King Crimson)です。
 

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 72年リリースの代表作、いわゆるメタル・クリムズンのルーツとなるアルバムですね。 40周年記念盤が発売されました。 特に、日本では絶大な人気を誇るプログレ界の仕掛人、ロバート翁のことですから、発売形態も凄いです。2枚組(CD+DVD)に何と15名組ボックス・セット(CD12枚組+DVD+BlueRay)とのことです。 

 ところで、変拍子満載のクリムズン、イメージ的にはしっくり来る邦題ですね、今思っても。何故に、「Larks' Tongues in Aspic」(ゼリー寄せの中の雲雀の舌)からこの邦題を思い付いたのか、当時の担当者ディレクターである方へのインターヴューも掲載されていました。 やはり、予想通りですが、ジャケットのヴィジュアル(モノクロでのアートワークが送付されてきた)から連想して思いついたようです。 この原題にしても、当時のメンバーであった、パーカッション担当のジェイミー・ミューア(Jamie Muir)の思い付きのようで、英国人固有の一種の言葉遊びから来ています。料理の名称のようですが、英国人にしか理解出来ないような”言葉遊び”のニュアンスが込められているみたいです。


クリムゾン・キングの宮殿/キング・クリムゾン

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 クリムズンと言えば、私には1stの『クリムズン・キングの宮殿』(In The Court Of The Crimson King)が真っ先に思い浮かび、私のプログレ収集のスタートポイントになります。 あのビートルズ(The Beatles)の『アビーロード(Abbey Road)』を押しのけて、チャート1位に君臨したアルバムです。 さらなる想い出として甦る出来事と言えば、学生時代に大学の軽音サークルの定期演奏会でこのアルバムから3曲を取り上げたことです。 今から30年も前ですから、機材的にはポリフォニック・シンセサイザー(Polyphonic Synthesizer)など存在しない時代です。

 

 

 

 

 

 

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 当時、学内にはロック系サークルが3団体、フォーク系(日本のフォーク)が1団体、ジャズ系が1団体で、バンド数は8くらいありました。 自腹で機材は購入せざるを得ないような中、やはり医学部系のサークルは資金面でも潤沢で個々の所有する楽器もコピーものではなかったこと、鮮明に憶えています。我々、工学部や教育学部のメンバーはみんな国産のグレコやヤマハの楽器(ギターやベース)で我慢していました。せいぜい、ドラム担当の連中がスネアだけ、ラディック(Ludwig Drums)を持っていたか、我々ならストリングだけフェンダー、ギブソンやロトサウンド(ROTO Sound)という具合です。 今の世代のバンドやっている人たちは、普通にギブソン(Gibson)やフェンダー(Fender)のギターを所有していますよね、本当に時代が変わったと思います。貨幣価値から言えば、3倍から4倍の差があったように思います。 30年前に住んでいたアパートの家賃から考えると、そのくらいの差があるように感じます。

 
 当時、最初で最後の機会だったのですが、音楽的嗜好が似通っているメンバーがサークルの枠組みを越えて、混成バンドを組んで普段と違う選曲でコンサートをやる企画が持ち上がりました。 私は、医学部系のサークルのメンバー(ジャズ系サークルのメンバー含む)と共に、このキング・クリムズンの1stアルバムの楽曲を含むプログレバンドを組みました。 
記憶が曖昧な部分がありますが、取り上げた楽曲は、

■ キング・クリムズン
"I Talk to the Wind"
"Epitaph" (including "March for No Reason" and "Tomorrow and Tomorrow")

■ ピンクフロイド
   ”One Of These Days” (吹けよ風、呼べよ嵐)

の3曲でした。 私は本来のベースギターではなく、木管楽器(Woodwind)であるフルートにピッコロを担当しました。 と言うのも、小中学時代にブラスバンドでフルートとオーボエを担当した経験があり、楽器を持っていたからです。 メロトロン(Melltoron)は当然調達できませんから、替わりはストリング・アンサンブル(Solina String Ensemble)であったように思います。 当時はコルグ(Korg)から発売された製品「PE-200」だったと思いますが、楽器店より無償で借りてきたものだったと思います。 「静と動」のコントラストがあり、かなりジャズ寄りの演奏内容だったと思います。 バンドも大所帯で、ツィン・ドラムにトリプル・キーボード(ストリング・アンサンブル担当がいた?)に、ヴォーカル2人、ツイン・ギター、サックス、ベースで総勢11人という記憶があります。 集大成のような感覚で朝から晩まで、毎日のように『宮殿』(アナログLPです!)聴いて頭に構成を叩き込んでいました。 普段演奏していたブルーズやクラプトンとは全く異なる音空間に、とても興奮したこと鮮明に憶えています。 まあ,自画自賛であって良いように解釈しているようにも思います。

 

 

 

 

 

 

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 私にとって、クリムズンと言えば、フィリップ翁ではなくて、イアン・マクドナルド(Ian McDonald )になってしまいます。 この1作目限りで脱退して、次はマクドナルド&ジャイルス(McDonald & Giles )でアルバムをリリースしました。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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そして、表舞台から遠ざかっていたと思ったら、70年代末期には産業ロックの中でフォーリナー(Foreigner)で登場し前線復帰かと思いきや、3作付き合った後でまたしても小休止。 80年代には殆ど音沙汰がなくて、90年代に入り突然のように、スティーヴ・ハケット(Steve Hackett)のソロ・プロジェクトのバンド・メンバーとして来日しました。 そこから,ようやく初のソロアルバムとなる『Drivers Eyes』を99年にリリースしました。 当然、喜々として即買いしました。 でも、すぐに忘れ去られたように、CD収納ラックの奥深くに眠っていたわけです。 彼も『宮殿』の呪縛から逃れることが難しかったのか、”the 21st Century Schizoid Band”を組んでかつての名曲再演プロジェクト・ツアーを行ったりもしていました。


このソロアルバム、ポップな曲が多くて何か中途半端で、イアン・マクドナルドの多彩な音楽性が悪い方向に出てしまったような気がしました。 期待が大き過ぎた分、少し肩すかしを食らったような感じなのです。 客演しているかつてのバンド・メートがヴォーカルを取る曲では、明らかにそれぞれのバンドの音になってしまうところは仕方ない気はしますが(苦笑)。 本人のヴォーカルが弱いため、どうしてもヴォーカルの個性に引きずられてしまうのでしょうが・・・・。

**** 『Drivers Eyes』 : Ian McDonald ******

1.Overture
2.In Your Hands
3.You Are A Part Of Me
4.Sax Fifth Avenue
5.Forever And Ever
6.Saturday Night In Tokyo
7.Hawaii
8.Straight Back To You
9.If I Was
10.Demimonde
11.Let There Be Light


各曲の特筆すべき点を挙げれば、

3.ですが、ゲスト・ヴォーカルはあのベイビーズのジョン・ウェイト(John Waite)が担当しており、良い仕上がりだと思います、ポップチューンとしては。

5では、作詞とヴォーカルはあのジョン・ウェットン(John Wetton)が担当しており、クリムズンの影が色濃く出ている作品でしょうか? エイジアというよりは、確かにクリムズン色が濃い気はしますが、もう一つ決め手に欠けるのかなー。

6は少し安易な感じで、ご当地ソングにしても今更な感じで、時代錯誤な気がします。 無理に曲数合わせのために入れた感がしてしまいます。 かつてのディープ・パープル(Deep Purple)の迷曲である、「Woman from Tokyo」を思い出してしまいました。

8では、フォーリナーの一員であったルー・グラム(Lou Gramm)がらしいヴォーカルを聞かせてくれます。 イントロ聞いて、フランジャーの効いたベース音が響いた瞬間に、「Cold as ice」を連想しました。 いい曲です。

9では、ギターで懐かしきワウなピーター・フランプトン(Peter Frampton)がらしいギター聞かせてくれます。

10が、私が最も期待していたマクドナルド&ジャイルス(McDonald & Giles)復活かと思った曲です。でも、あの装飾音(おかず)だらけのドラムはいつまで待っても、出て来ません。 やはり、「バードマン( Birdman)」復活は無理なのか、でもらしさは十二分に感じられます。 二人でデモ・テープなどは制作したりしたそうですが、契約してくれるレーベルがないため,幻に終わったようです。 少なくとも、あのたった1枚のみで終わった『McDonald & Giles』のリマスター盤だけは、リリースして欲しいと切に願います。

11は、現在来日して、ユーミンとのジョイント・コンサートをしたプロコル・ハルム(Procol Harum)のガリー・ブルッカー(Gary Brooker)がヴォーカルで、しかも、作詞があのピート・シンフィールド(Peter Sinfiled )です。 結構ドラマティックな曲調で期待できるのですが、もう少し聞きたいと思うところでフェイドアウトして終了です。


 我々が期待していた往年の「プログレッシヴ・ロック」の復活は見事に裏切られました。曲によっては、フォリナーを連想したり、「クリムズン」の名残を垣間見ることもある。 でも、この作品にあるのは紆余曲折を経て現在に至る「今」のイアン・マクドナルドの姿なんでしょうね。「年齢を重ねる」ことの重みを十二分に感じました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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それから、久しぶりにCDジャケットを見て思ったのは、ビル・エヴァンス(Bill Evans)のアルバム、『I Will Say Goodbye』そっくりな事に気がつきました! 当時は全く気がつかなかったのに・・・。 彼がビル・エヴァンスのファンだったのでしょうか? たまたまなんでしょうけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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