レコメンド業界は熱かった | ビジネスに効くクスリ

レコメンド業界は熱かった

先週木曜日、日本ダイレクトマーケティング学会・次世代Web研究会主催のオープンフォーラムに参加してきた。
テーマは「レコメンデーション最前線」
「レコメンドはウザい」という風潮も出てき始めているという中でいかにレコメンドという仕組みが上質な店員のようにそっと顧客の行動を補助できるか、そして社会の役に立つかといったことを中心に各レコメンドシステムサプライヤーから事例を交えた熱いプレゼンが行われた。

会場にはすでに導入しているEC企業、これから導入を検討する企業、そしてEC企業をクライアントに抱える広告代理店などが参加。しかもこの日は当夜のワールドビジネスサテライトでホットリンクさんのレコメンドツールが金融工学としても活用できるというネタでオンエアーされることが発表されるなどタイミングの良さも手伝い、みんな熱心に聴いていたと思う。

基調講演では電通イーマーケティングワンの北澤さんから「レコメンドとは」という概念的な内容とレコメンドがこの先、顧客起点の展開に向けてどう変わっていくべきか、どう活用されていくべきなのかというお話を聴いた。
そしてその後、サプライヤーさんからのお話を聴いいたのだが、意外と自社製品の売り込みをゴリゴリやるのではなく、自分たちが考えるレコメンドの世界という観点でのお話が多かったように思う。
プレゼンされた企業は以下の5社。
・コトハコ(山内社長)
・シルバーエッグ・テクノロジー(西村淳子COO)
・ブレインパッド(佐藤洋行氏)
・ホットリンク(内山社長)
・リッテル(坂大嘉彦氏)
みなさまそれぞれにお話が楽しく興味深いものでした。
コトハコの山内社長はダジャレ使いで、ホットリンクの内山社長は素人とは思えないしゃべりのうまさ(笑)

さて、振り返ってみると、レコメンドというのは簡単なものから複雑なものまで導入企業のニーズによってさまざまな対応ができる。大規模サイトでは細かい顧客分析をレコメンドと組み合わせて効果を上げることも可能だし、小さなサイトではさしあたってサイトの制作リソース上、どうしてもまかなえない部分をレコメンドツールで補い、売上貢献に持っていくことも可能だ。
しかしながらレコメンドを入れるだけでは解決にはならないということも知っておくべきだと思う(後述)。そのあたりを少しメモとして残しておく。

レコメンドはサイトの中の各ページに訪れたユーザーのそれまでの導線や考えによって求められる次の一手が異なる。つまり、サーチエンジンからトップページにランディングしてきたユーザーと、お気に入りに商品を追加した場合とカートに入れた直後の対応では次に行ってもらうアクションが異なるからだ。さらに細かく言えば、各ページへ訪れたユーザーの思いによってもレコメンドするモノが異なってくる。
例をあげると、サーチから商品名でランディングしてきたユーザーにも以下のタイプに分かれる。
・欲しい商品はわかっていて、価格と在庫を調べたいだけ。
・欲しい商品はわかっていてもどの型番にするかまでは決めていない。
・何となく欲しいものを探している。
それぞれに次に行ってもらいたいことをどうレコメンドしていくか。
しかも「自然体で」というのがこれからのレコメンドに求められることなのかもしれない。
全セッションが終了した後の懇親会で某社のアナリストから伺ったのだが、顧客から「サイトの中でいろいろと私に奨めてくるのは気持ち悪いのでやめてほしい」というレコメンドに対するクレームが実際に届き始めているらしい。
レコメンドされているという認識を一般ユーザーもふつうに感じているということだ。

レコメンドを導入する目的はどの企業も「単価アップ」のためが主目的、あとは言い方が悪いかもしれないが在庫が残っているからサイト内に多めに露出しちゃえという発想などもあるだろう。しかしこれだけではレコメンドはもはや成功しないステージにきているんだなと思っている。

サイトにはユーザビリティという考えがあり、それは「接客」であり「おもてなし」である。ならばレコメンドというのも大切な接客の一部に違いない。
お店の店員さんがそばでいちいちリアクションしてくるのは本当にウザいと思うのと同じようにサイトの中でも行き過ぎたレコメンドというのは邪魔になるだけだ。
ただ、顧客は不安なときや決められないときに店員さんを頼り、感じの良い店員さんにはいろいろと聞いてみたりするものである。この先、接客が上手な店員さんの要素をどうやってテクノロジーに乗せていくか各社とも必死で考えていくべきだろう。

導入する側の企業としては、レコメンドは導入するだけでは簡単には効果が出ないということを知っておかねばならない。私が前職で2006年頃に某社のエンジンを導入したときも、目に見えて効果があったというよりも被験となった購入者サンプルの数人の中でやっと1商品が増えたとかの程度だったと記憶している。
その後ルール設定を細かく修正したりというたゆまぬ努力によって効果を少しずつあげていくということになるのだが。
このあたりはSEOと同じで日々のチューニングがモノを言う世界なのだ。

あと、今回非常に勉強になったのが、ホットリンクさんの例のようにレコメンドとブログやバズデータと組み合わせて、通常のECのみならず金融商品の売り買いをレコメンドしたりできるというところまで進化しているということだ。
基調講演でも聴いたが、これからはさまざまな家電製品にもインターネットが接続し始めると、レコメンドの果たせる役割はもっと広がるとのこと。冷蔵庫の中身を冷蔵庫自身が把握し、今残っている食材にあと何をプラスすればこんなメニューができますよということをスマートフォンなんかにレコメンドしてくるとか、カラダログと呼ばれるものをつなぎあわせるとカラダに必要な食べ物をレコメンドしたりなども実現可能か。
また、思想やわいせつな情報を必要としない人には排除するレコメンドという機能も有効になってくるだろう。
レコメンドという概念だけでは追いつかないかもしれないが、いずれにせよこの領域はまだ当分熱そうだと実感した一日だった。

ご登壇された方々ならびに懇親会でご挨拶させていただいた方々、大変勉強になりました。ありがとうございました。