これは2015年3月に書いたブログ記事を編集・修正して再公開するものです。こちらで紹介している内容が、実は2020年8月にSCARSの記事をもとに紹介した国際ロマンス詐欺被害に遭ったことに気づいたらするべきこと2020版 と大きく違いはありません。当時は詐欺情報をAntiscamサイトに報告するように促していましたが、今はパートナー団体であるSCARSのAnyscam.comに報告をお勧めしていますのでその文脈も修正しています。

【Q1】 交流サイトで知り合った自称アメリカ人とインターネットで3か月ほどお付き合いしていました.。相手が贈り物と一緒に日本に来てからビジネスを始めるための資金を国際宅配便サービスで送ってくれたというのですが、そのあとマレーシアの税関から電話がかかってきて、大金が入っているため税金がかかると言われました。そして、その税金をウェスタンユニオンを通して送金したのち、贈り物も貴重なものが入っているため、贈り物の分も税金が必要と言われ、その送金もウェスタンユニオンからしてしまいました。銀行に提出する証明書、荷物の受け取り手であることを示す証明書、裁判費用の証明書など、いろいろ手続きに必要なお金も要求され、総額一万ドルを送金してしまいました。そのあとネットで調べて、ナイジェリア詐欺であることを知りました。これからどうすればよいでしょうか。

【答え】
1.まず彼との連絡を一切断ってください。自分で何らかの調査をしようとしてはいけません。彼らはパスポートのコピーや様々な偽の証明書を見せたり、実在する住所(たいていの場合入れ替わりの多い賃貸住宅や売り出し中の家)を教えてくれたりしているかもしれませんが、すべて偽物です。証明書にある住所や会社名を辿っていっても何も出てきません。犯人たちは組織犯罪者であり、自分たちの居所を隠す術を持っています(VPNの使用など)。

 

電話番号やメアドなど、相手に提供した連絡手段や個人情報に関わるものを、ことごとく変更しましょう。パスワードなども変更してください。大変な作業が伴いますが、もう相手が連絡してこないだろうと思って放置しておくと危険です。

(1) 最後の送金をしなかったことにより生じた(もちろん嘘の)事態により蒙った損害の責任を偽弁護士などを通じて問われたり、『お金が戻ってきます』『捜査に協力してください』などという偽銀行や偽捜査機関や国連機関などからのリカバリー詐欺の連絡が来たりします。彼らはメアドもメッセンジャーもなんでも平気でいくらでも新しいものを作れます。

(2) たとえあなたを騙した詐欺師からのアプローチがなかったとしても、提供していた個人情報はインターネット上の犯罪者のネットワークの中で売り買いされます。詐欺被害者(個人情報を容易に提供しお金を送ってくる人)であるというコメントとともに住所や氏名、電話やメアド、銀行口座番号やクレジットカード番号、免許証のイメージファイル、SNSやメアドなどのパスワードなど、様々な情報は売り物になるのだということを認識しましょう。

2.金銭的被害を受けられたので、警察にも連絡なさってください。警察に連絡することにはメリットがあります。以前被害に遭った被害者の方から、警察は力にならないとアドバイスされているかもしれませんし、実際に嫌な想いをすることもあります。しかしそれでも警察に届け出ることはメリットがあります。国の救済措置を受けるにも、警察の届け出が必要です。犯罪被害者であることを認められないと、救済措置は受けられないのです。(参考:【重要】国際オンライン詐欺被害に遭ったら警察に届け出るべき理由:国の制度の適用 ) また、警察が全く動いてくれなかったとしても、警察に届け出たことで『自分が犯罪被害を受けたのだ』ということを認めることができ、『もう一度相手を信じてみよう』という気を起こさせない助けにもなります。


3.大金を振り込んでしまったり、お金を送っていなくても相手が偽物だと分かった時点で受ける精神的な打撃は決して小さくありません。そのうえ警察に行って調書を取られる際、言いたくもないことも言わされ、参ってしまうことでしょう。ぜひ精神科医やプロのカウンセラーによるカウンセリングを受けてください。そして自分の心身の回復をすることにエネルギーを使いましょう。



【Q2】 相手と交信していた記録はコンピューターから消すべきでしょうか? 彼の写真やメアド、電話番号、送られてきた手続き書類など、どうすればよいですか?

【答え】 
1.警察に持ってゆく場合、すべての交信記録は証拠として有効になります。もし、メアドなどを変更するのが可能であれば、古いメアドは使わずに放置し、警察に求められたときにプリントアウトして持ってゆけるようにするのが良いです。また、ガラケーのメアドをお使いで、メールの内容をご家族や職場に知られたくない場合、携帯用メアドではなくインターネット用のメアド、例えばYahooとかGoogleなどのメアドを作成し、そちらに転送して保存ということも出来ます。テキストファイルを保存とかそういったノウハウを知らない場合、画面のスクリーンショットも使えます。

 

ばらばらでごちゃごちゃした情報をそのまま警察に持って行っても、言語の問題もあり困惑されます。警察が情報を整理してくれることを期待するのではなく、読む側の立場に立って、理解しやすいように順序だって説明できるようにして証拠を整理しましょう。警察に対して効果的なプレゼンをするつもりで準備してください。


(1)相手の自称する名前、ほかの登場人物の名前、彼らのメアドや電話番号、ほかの登場人物の情報と彼らの立場(偽弁護士、偽外交官、偽税関オフィサー、偽上司など)をリストする。
(2)相手やほかの登場人物が使っていた写真(写真は盗用なので、犯人の証拠としては意味がありませんが、誰かのものを盗用しているという証拠になります。)

(4)相手とのやりとりのメッセージを時系列に整理する。(金銭要求に至るまでの経緯が分かるように時系列委整理)

  ●相手の身の上話のメール

  ●銀行やウェスタンユニオンを使って送金してほしいというメール、送金先情報
  ●相手があなたを信用させるために使用した偽の証明書類(契約書、パスポートコピー、銀行の証明書など)

(5)送金した証拠となる文書(銀行の振り込み票など)を一緒に用意する

 


2.また、相手の情報をSCARSのAnyscam.comに報告してください。(2019年のブログ記事を参照)

このサイトに報告すると、単に『詐欺に使われた写真やメアド、SNSアカウント等』として情報がサイトでディスプレイされるだけではなく、海外の警察など関係機関にも周知されるようになっています。このデータベースをご活用ください。

 

もし、送金被害をうけていなくて、警察に届け出る必要がない場合は、Anyscam.comに報告した後自分のパソコンやスマホなどから詐欺師関係の情報をすべて削除し、写真などを残さないようにしましょう。相手のことを忘れるようにするのが、疑似的な失恋から回復する助けになります。