キックスタートは
今では珍しくなった バイクでのエンジンスタート機構の一つ
みんなでツーリングに行って小休止
そろそろ、出発!というときに
自分だけ、なかなかキックでエンジンがかからないと
迷惑だし、アセるよね~
見た目にほれて古いバイクを手に入れたのはいいけれど
ツーリング先でなかなかエンジンが かからない
横の彼女は あきれ顔
これじゃ カッコ悪いよね~
逆にキック一発でエンジンかけちゃったときには
心のなかで「 今の俺、カッコイ~!」と、どや顔しちゃう~(笑
キックスタートを すんなり決めるのは たいていベテランライダー。
見ていても、当たり前と思う。
だから、若いライダーや女性ライダーが
キックスタートを決めた場面に出くわすと
「かっこいいなぁ~」と思う。
いつもなら すぐにエンジンが かかるあなたのバイクでも
出先で、エンジンが温まった状態で しばらく置いておくと
かかりが悪くなることがある。
化学的理由を知り、対応策を知っておけば
より早く ピンチを切り抜けられます。
しっかり見て、読んで、自分なりに理解して
キックスタートを楽しもう!
あくまで日常整備がされているバイクと仮定して進んでいくので、
不動車、不調車、長期保管物など
キャブやタンク内のガソリンが腐ってるバイクとかは論外だからな!
あと、定期的なキャブの掃除は大事だよ。
かかりが悪くなったらキャブの掃除をしよう。
-「ツーリング先で少し休憩したら、
エンジンかからないぞ」編-
SRX-6 (600cc空冷単気筒)で学ぶ エンジン・キックスタート
-まず知っておきたいガソリンの話-
吸湿性が高い
ガソリンは空気中の水分を吸収しやすく
放置しておくと、点火性能が悪くなる。
キャブの小さなフロート室のガソリンも
吸湿しやすく、燃えやすい部分は気化して減少するから
1週間もほっておけば、
空っぽになるか燃えにくいガソリンに変質している。
(それでもエンジンはかかるけどガソリンの性能はダウンしている)
長期放置バイクは
フロート室のドレンからガソリンを抜いておく
日常駐車バイクは
負圧燃料コックはON位置にして無駄なガソリンの消費を抑える
着火点は-40℃
極低温でも揮発していて 火がつくということだから
点火性において夏も冬も あまり大差ない。
バイクのようにむき出し、穴だらけのキャブからは
つねに気化ガソリンが微量ながら出ている。
自然にガソリンが減っていく
だから、エンジンが動いてないと
自動的に燃料コックが閉まる構造の
負圧コックが装備されているのだ。
沸点30-220℃
ガソリンに近似の蒸留物にも、種別がある
(ガソリン、ベンジン、その他)によって
沸点にも違いがあるが、自動車用ガソリンは元から使用環境を考慮し
パーコレーション(沸騰)が起きにくくなっている。
自然発火点は260℃前後
気化ガスがマフラーに溜まっていき
空気(酸素)との混合比が合えば、マフラー内の熱で発火する。
マフラー内で「バンッ!」と大きな音とともに爆発する
たぶん排気バルブの位置とプラグのスパークが原因であろう。
-気化ガスと混合気の違い-
キックスタートのポイントとして便宜上の解釈
気化ガスとは
蒸発した ガソリンの粒子だけ の気体
空気より重い 滞留しやすい
酸素と熱が無ければ意外と燃えにくい気体である
混合気とは
ガソリンの霧と空気が混合したもの
(空気とガソリン霧の比率が空燃比)
キャブが作りだす一気に燃えやすい状態の気体である
-休憩時に何が起こっているのか-
アイドリング20分間、休憩15分後にエンジン各部の温度を計測
走行風での冷却も無く エンジン側から熱伝導でキャブも温まってきた
キャブ・フロート室 50℃
中のガソリンは沸点寸前状態!燃えにくい気化ガスを噴出中!
ヘッド・インテークバルブ付近 100℃
エンジンの余熱で通常より大量に発生している重い気化ガス(燃えにくいガス)は
低い位置にあるエアクリーナーボックスに充満していく
(バルブ位置によってはシリンダー内への流入もあるだろう)
エアクリーナーBOXに充満している燃えにくい気化ガスを
空気の代わりにキャブが吸っても酸素不足
エンジンはかからない
燃えやすい混合気ではないのだから。
走行直後はエアクリBOXもエンジンの放熱で少し温かい、
まるで気化ガス用保温ボックスになっている。
長時間?休憩すれば、やがてキャブもエアクリBOXも冷え
気化ガスも冷却され縮小、外気が流れ込む。
沸点直前のフロート室では
ガソリンの気化で油面が下がり
最初のキックスタート時には吸い込み量が減る→だからコックをPRI位置にする
何度もキックレバーをケっていれば、やがて
・負圧バルブが開き燃料がキャブに行く→油面正常化
・吸い込む外気(酸素)がエアクリーナー内の気化ガスを吸い出す
→燃えやすい混合気を作る
必死にキックしてると「バンッ!」大きな音で注目を集める
シリンダー内、マフラー内へ 気化ガスの押し出され具合と
自然発火点260℃のガソリンだから
火花やマフラーの温度によってアフターファイヤの可能性があがる
アイドリング直後の排気管 外側温度 394℃
-少し休憩して再始動困難時の対処方法-
事前チェックでキャブをさわって温度確認
お風呂の湯以上に熱かったら対処が必要かも!
1.燃料コックをPRI位置へ→油面正常化
(フロート室の温度下げ効果も)
2.気化ガスの排気と空気混合で可燃ガス化させるため
吸入する空気の流速と気圧をさげるため
アクセル全開状態で数回キックして外気を多く吸わせる
SRX-6 キック回数 試算例
エアクリーナボックス 容量 約1.5リットル?
インテークパイプ等通路の 容量 約1リットル?
ピストン、 排気量 608cc
合計 3108cc
を排気(可燃化)したいから 大体600cc×5回=3000cc
4サイクルだから吸気行程は2回転に1回で10回給排気
(実際には1キックで3,4回スパークするから複数サイクル回っているが
それでも4,5回はしっかりキックして吸排気させたい)
これで外空気吸入により、ちゃんとした混合気がキャブでも作れるはず
ここから先は通常のエンジンスタートになる
3.アクセル全閉に戻してチョークを1段引く
(エンジン自体が温まっていればチョークは不要かも?)
4.混合気吸い込みのために2回すばやくプレキック
5.軽くゆっくりキックして圧縮工程の上死点だし
6.ここで初めてイグニッションON
(プレキックでせっかく吸気した混合気に
プラグのスパークをさせないため)
7.ブレーキを軽くかけアクセル閉めたまま
地面に立てた空き缶を一気に踏み潰すようにキック!
注意
あまりにも遅すぎるキックスピード(300rpm以下)では
スパークしない設計とか
祝 エンジン始動!
走り出したら燃料コックを ONに戻し
チョークを使ったなら戻しておくこと
これでも かからない場合は
上死点出しのところから繰り返す
アイドリング調整ノブをプラス1回転で
少しアクセルを開けたのと同じ状態にして
~キックスタートもバイクの楽しみの一つ~
空燃比の良い混合気がピストン内に流れ込む。
上死点まで圧縮された良い混合気に
強い火花で点火させる様子を想像しながらキックしよう。
かからないときは
チョーク使用で濃すぎたのか
吸入が足りずまだ薄いのか
アイドリング状態より少しアクセルを開けたほうが係りが良いのかも?とか
シリンダーの中をイメージしながら・・・・
前編、後編をここまで読んで理解すれば
次にやるべきこと、試すべきことは もう判るはず。
通常走行時のアイドリング調整ノブの位置では、始動しにくい場合もあり
キック直前に1回転開けたほうが良い場合もあるらしい
(アクセル全閉が鉄則。「アクセルを少し開ける」と他人から聞くより、
数値化で表現できるのでお勧め)
原付からリッターバイクまで
キックスタートのバイクは多種多様
すべてのバイクに当てはまるキックスタート方法は無いし
専門家から見れば間違っている点もあったと思うが
大体の方向性は あっているはず。
ここから先は自分のバイクに合わせた
いろんなキックスタート法を各自で確立してもらいたい。
” キックスタート ”それ自体もバイクの楽しみ
やってはいけないこと
手動デコンプを握ったままの状態でキック
一般に、バルブとピストンの 行程と位置には いかなる場合も
セーフティークリアランスというスキマがあるから 衝突しないのだが、
見えないチューニングで・・・
他人のバイクのエンジン始動のとき
つい癖でデコンプレバー握ったまま キックしたら{ガキッと」変な音が・・・
ハイカム、ハイコンプレッション仕様とかだと
バルブとピストンが ぶつかる危険があります。
修理費 高いですよ
だいたい、間違った使い方です。これでエンジン始動が容易になるなら
そのエンジンは要修理ですね。
-おまけ-
プラグの効果
イリジウムや白金のプラグは値段も高いし
効果を体感しにくいと言う者もいるが私はオススメする。
たしかに普通プラグと比較しても
供給される燃料の量が同じなら完全燃焼時の馬力に差は出ない。
しかし、電極が細いから 低い電圧でも しっかり安定した火花が飛ぶし、
電気系の負担も減る
エンジンが冷えた状態の始動でも 太い電極に比べ火種が冷却されにくいので
点火性も高くなる。 プラグ1本の単気筒とはいえ、
ツーリング先でのプラグ交換は掃除ややけどなど意外と大変である。
かぶり 冷却に強く、始動できる空燃比の幅が広い・・・ などのメリットから
使ってみる価値はあると思う。
FCRキャブの加速ポンプについて
アクセルを数回、全開全閉にして
加速ポンプをチョーク代わりに使うのだが、
長期駐車した場合、ドレンを抜いておいても
新しいガソリンがしっかり充填されないと
機能しないことがある。
消火器ではないが
燃えにくいガソリンに似た液体を噴出しているだけかもしれない