不況とはいえ、住宅の着工件数にはそう大きな変化はない。ライフプランを考えるとき、住宅は最も関心の高いことのひとつだ。若くて独身なら"賃貸派"が圧倒的。しかし、結婚して数年がたち「そろそろ子どもでも」という時期に差しかかると、「子ども部屋も必要になるし、どうせ家賃を払っていくのなら、マイホームを購入したほうがいい」という"購入派"が多くなってくる。

持ち家であれば棚をつけることもできるし、間取りだって自由に選ぶことができる。なんといっても、老後には家賃の支払いの心配がないことが一番の魅力だろう。いっぽう、賃貸の場合は、会社や子どもの学校のそばなど、そのときの状況や予算に応じて、臨機応変に住居を変えていくことができるし、固定資産税などの税金やリフォーム代も必要ない。

持ち家と賃貸のどちらがよいかを突き詰めると、何歳まで生きるのかというテーマになってしまうから、簡単に結論を出すことは難しいかもしれない。今回はまず、持ち家のリスクについて考えていこう。

国土交通省の「土地問題に関する意識調査」(2011年3月)によると、不動産を持つことのリスクについて「維持管理・修繕・建て替え」を挙げた人の割合が42.8%と、最も高いという結果が出ている。以下、「収入減等によるローン負担の増大」(26.4%)、「不動産価格の下落」(24.8%)、「相続」(15.4%)、「ローン金利の上昇」(14.4%)と続く。

金銭的な面から考えると、確かに住宅を維持するためには税金やリフォーム代がかかる。さらにマンション購入の場合は、管理費、修繕積立金、車を持っているのなら駐車場代など、ローン返済のほかにも負担は大きい。つい、住宅ローンの返済金額だけに目を奪われがちだが、そういった費用も見込んで賃貸と購入とを比べてみよう。

まずは賃貸。10万円の家賃で、50年間支払うと6797万円だ。この金額には、将来の物価の上昇による家賃アップなども0.5%見込み、8年ごとに引っ越しを行うという前提で計算を行った。仲介手数料や礼金として2カ月分を計上。引越費用は1回20万円を見込んでいる。ただ、今後は礼金や更新料はかからなくなるかもしれない。世の中の流れと少子化で、将来は住宅が余ってくるからだ。

いっぽう、3500万円の住宅を35年固定金利2.4%のローンで購入する場合、税金やリフォームを考慮すると、一戸建てでも7867万円に達してしまう。注意をしてほしいのは、たった2.4%の金利であっても35年間という長い期間で考えると約1677万円も利息を払う点である。

さらに、マンションを購入した場合は、管理費や修繕積立金など1000万円以上かかることを忘れないでほしい。修繕積立金は、通常、販売時には低めに設定を行い、一定期間後に値上がりや一時金を徴収されることが一般的だ。徴収済みの修繕積立金では、実際の工事費用が不足してしまうためである。


恐ろしいローン金利のカラクリ

購入する場合の試算は35年の固定金利で行ったが、変動金利型や固定金利選択型を選んでいる場合は、さらにローンの負担が重くなる可能性が高い。住宅を持つことのリスクの第5位が「ローン金利」の上昇であるが、実は金利の上昇が一番コワいことをご存じだろうか? 修繕積立金であれば、毎月の支払い額はさほど大きくなく、不足分を補うために一時金の支払いが発生しても、とりあえずはその時だけしのげば大丈夫だが、住宅ローンの返済を怠ると家を失ってしまうことがあるからだ。特に頭金ゼロなど、毎月の負担が10万円以下のローンで買える物件には注意をしてほしい。


<3500万円、35年返済、固定金利の場合>

  
金利 1カ月あたりの返済額
1% 9.9万円
2% 11.6万円
3% 13.5万円
4% 15.5万円
5% 17.7万円


この表は金利の上昇と返済額を記載した。1%では10万円以下であっても、金利が上がると返済額は思った以上に高くなる。せいぜい払えるのは3%くらいまでではないだろうか。というものの、利息の計算は残っている借入金を基準として計算するから、ここままの金額ではないが、一般的に住宅ローンは、当初利息ばかりに返済が回ってしまい、元金はなかなか減らない。さらに近い将来、国の政策として国債を海外の投資家に購入してもらうために、金利が高く誘導される時代が来る可能性も高い。


家は一生で一番大きな買い物となるわけだから、以上のような情報も勘案しつつ、自分のライフスタイルと世の中の動きをよく考えて選択する必要がある。「日本は少子高齢化が加速し景気はよくならないから、金利は上がらないよ」との声も聞こえるが、2012年2月のギリシャの金利は35%前後、ポルトガルは12%前後まで上昇している。日本がずっと金利が低いままだとは限らない。目先の返済額だけではなく、一生かけて払う金額を比べてみたり、世の中の動きを敏感に感じ取って、よい選択をすることが大切なのだ。



ビッグパンダの日記