アスベスト(石綿)関連産業の集積地だった大阪・泉南地域で石綿による健康被害を受けたのは、国が早くから被害を認識しながら必要な対策を取らなかったのが原因として、工場の元従業員や遺族らが国に計9億4600万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が19日午後、大阪地裁(小西義博裁判長)で言い渡される。原告が主張する国の不作為が認められるかが焦点で、判決次第ではアスベストをめぐる全国の訴訟に影響しそうだ。

 原告は、泉南市の藪内昌一さん(68)ら集団訴訟第一陣の30人。昭和14年~平成17年の間に石綿工場などで3~44年間働き、石綿肺や肺がんになった元従業員のほか、遺族や工場の近隣住民らで、それぞれ3300万~4400万円の賠償を求めている。

 裁判の争点は、国がアスベストが原因で石綿肺などになることを予見することができた時期と、被害の拡大を防ぐため、工場に排気装置の設置を義務付けすることができた時期。

 原告側は、泉南地域で昭和15年に旧内務省保険院の医師らが実施した健康被害調査で、対象者の約1割に石綿粉塵(ふんじん)による健康被害が明らかになり、「法規的取り締まりが必要」と指摘されたことを挙げ、「国は戦前から被害を十分認識していた」と指摘。少なくとも石綿肺が労災補償の指定疾病とされた昭和22年には被害を予見できたとした。

 そのうえで、粉塵対策のための局所排気装置について、工場に設置を行政指導した33年には義務付けが可能だったにもかかわらず、その権限を行使しなかったとして、国の不作為を訴えている。

 これに対し国側は、保険院の調査は症例が不十分な実態調査に過ぎないため、旧じん肺法を制定した35年より前には予見できなかったと反論。局所排気装置も、33年の通達をきっかけに普及の基盤作りを行い、義務付けのための技術的、社会的基盤が整ったのは46年以降と主張している。

 また、原告側は労働関連法規について、「労働者だけでなく家族や近隣作業者も保護対象としている」として、原告全員の救済を主張。国は「労働関連法規はあくまで労働者保護が目的」として、家族・近隣作業者の曝露(ばくろ)を認めておらず、双方の主張を裁判所がどう判断するか注目される。

 ■アスベスト(石綿) 天然に産出する繊維状の鉱物の総称。酸やアルカリの影響を受けないうえ、耐熱、絶縁、吸音などに優れている特性から、「奇跡の鉱物」としてさまざまな用途に使われた。一方、繊維を吸入することで肺がんのほか、胸膜や腹膜にできるがんの一種、中皮腫などを引き起こす。中皮腫は潜伏期間が30~40年と長く、「静かな時限爆弾」とも呼ばれる。

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