$ベレットのブログ


首相、欧州で“中国封じ” 原発・医療売り込み巻き返し
2013.6.17 08:51 (1/2ページ)[外交]

安倍首相の欧州歴訪をめぐる構図

 欧州歴訪で安倍晋三首相が最初に訪れたポーランドは、欧州連合(EU)市場への直接アクセスを狙う中国が近年、投資を増大させている中・東欧諸国に属する。これらの国々が中国になびけば、EUによる対中武器禁輸解除などで日本の安全保障にも影響が出かねない。首相は日本が得意とする原発・医療分野の協力を軸に関係強化を進め、巻き返しを図る考えで、欧州を舞台にした陣取り合戦は激しさを増している。

V4と関係強化

 東欧4カ国(V4)首脳との会談後、共同記者発表で首相は「あらゆる分野での関係を強化し、日本と4カ国の関係を飛躍的に発展させることを確認した」と強調。V4議長国であるポーランドのトゥスク首相も「日本は原発や再生エネルギーの技術を持つ国として非常に重要なパートナーになる」と応じた。

 旧ソ連の圧政から西側陣営に加わったポーランドなどV4はいずれの国も首相が掲げる「価値観外交」を支持している。だが欧州全体でみれば、巨額の資金をバックに影響力を強める中国はやはり脅威だ。

 中国では温家宝首相(当時)が昨年4月、同国首相としては20年ぶりにポーランドを訪れ、中・東欧諸国向けに100億ドルの融資枠を設ける意向を表明。同地域との貿易額を2015年までに1千億ドルへ倍増させる考えを示した。

 経済発展に向け海外投資を呼び込みたい中・東欧圏は一般に法人税も安く、進出企業は関税を払わずにEU域内で活動できる。中国が投資強化に乗り出したのにはこうした背景がある。

これに対し日本は、中国にはないエネルギー技術分野を切り札に巻き返しを図る。チェコ、ハンガリーでは原発の、石炭生産量が世界9位のポーランドでは新型石炭火力の需要がある。チェコではテメリン原発(南ボヘミア州)の3、4号機の建設を計画しており、発注企業が年内にも決まる見通し。東芝子会社の米原子力大手ウェスチングハウスが入札で最上位評価を得ており、両国首脳は個別会談でも「協力の潜在性がある」との認識で一致した。

 首相が19日に訪問するアイルランドも中国が影響力を強める。昨年3月には両国がEUの対中武器禁輸解除に言及した共同声明を発表した。アイルランドは製薬企業の誘致に力を入れており、首相は首脳会談で協力を表明する一方、武器禁輸継続に理解を求めることにしている。