誰か有名な人が亡くなると、生前それ程親しくなかったにも関わらず、急に追悼ツイートとか追悼ブログとか書いてしまう人ってたまにいますが…僕はあれ、あんまり好きじゃありません。
一門の先輩である喜丸兄さんが亡くなられた時に、喜丸兄さん主催の会なんかに足を運んだ事もなかったような人が「素敵な噺家さんでした。惜しい人を亡くしました」みたいなブログを書いているの読んで、「ほな生きてる間に見に行ってやらんかい!」…と思った事がきっかけです。
だから僕、滅多に追悼ブログや追悼ツイートを書きません。
もし僕が死んで、然程僕のファンでもなかった人が僕の追悼ブログや追悼ツイートを書いているの発見したら、どうかこの文章をコピペして送りつけてやってくださいまし。
でも、すみません…。
今日は僕、その禁を破ってしまいます。
その事どうかお許しください。
東京の『王子落語会』でいつもお世話になっていた立川左談次師匠が、3月19日の午後9時20分、食道ガンのため都内の病院でお亡くなりになられました。享年67歳でした。
それこそ僕、『王子落語会』でしか左談次師匠の事を知りません。
そんな僕が左談次師匠の追悼コメントを書く資格なんて、僕の信念からすればありません。
でも今、無性に悲しいのです。
自分でも何故だか分かりませんが、親戚のおっちゃんが死んだ時以上に、心にポッカリ穴が空いたような気がしています。
左談次師匠と最後にお会いしたのは、去年の12月20日の『王子落語会』でした。
闘病中できっととても苦しかっただろうし…それに加えてお声も出にくかったにも関わらず、楽屋では苦しい素振りを微塵も見せず、いつもの素敵な笑顔で馬鹿話に興じていらっしゃいました。
ちょうど僕がぎっくり腰を患った直後で、深々とお辞儀が出来なかった事もありその旨をお伝えすると、ご自分のご病状を差し置いて「大事にしなきゃいけないよ」と、優しく仰ってくださいました。
今までたくさん出会った方の中で、左談次師匠は一番“粋”な方でした。
本当の“粋”とは、格好をつける事でも粋がってみせる事でもなく、「俺なんて大した事ァねぇんだよ」と自分を小さく見せつつ、気づかれないぐらいの然り気無さで周りに大きな気遣いが出来る、左談次師匠みたいな人の事を言うんだなと、お会いする度にそう思える…そんなお師匠さんでした。
たぶん僕は、左談次師匠に惚れていたのだと思います。
あの粋さに。
あの飾り気のない格好良さに。
あの素敵な笑顔に。
あの笑顔にもうお会いする事が出来ないのかと思うと、悲しくって仕方ありません。
『王子落語会』でしか左談次師匠の事を知らない僕みたいな人間が、知った風な口でこんな事を書いて申し訳ありません。
でも、そんな僕みたいな人間をも魅了する、とてもとても素敵なお師匠さんでした。
すみません。それだけを記しておきたかったのです。
画像は、その去年の12月20日に『王子落語会』で撮った写真。
左談次師匠が「みんなで撮りたい」と仰って、師匠のカメラで撮った一枚です。
お声が出にくかったので、その日の高座は赤いバッテンの付いたマスクを着用されての「サイレント落語・長短」でした。
どこまでも茶目っ気たっぷりの、芸人らしい“粋”に満ち溢れた方でした。
左談次師匠のご冥福を、心よりお祈り申し上げます。