腰痛に(ひとまず今日のところは)打ち勝つ | 桂米紫のブログ

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米朝一門の落語家、四代目桂米紫(かつらべいし)の、独り言であります。

年に一度の、繁昌亭での『桂米紫独演会』、無事に終演致しました。


先週の土曜日に、高座の上でギックリ腰になってしまいまして…いやもう正直今回ばかりは「もうだめぽ」と、一昨日まで本気でそう思っておりました。
だって一昨日の昼間の時点で、歩行すら困難な状態でしたから。

でもコルセットと、病院処方の湿布と飲み薬と座薬と…何より皆様のご声援のお陰で、何とかいつも通りの高座を務めさせて戴く事が出来ました。


「鷺とり」は(まだ数回目の口演でしたが)、あのオモチャ箱をひっくり返したような楽しさと、脱線だらけのアナーキーさと、気の狂ったようなシュールさを、自分なりにもっともっと際立たせたいと思い、今回かなり冒険をさせて戴きました。
カットされて演じられる事も多い“俄(にわか)”の部分を、どうしても省きたくなくて、結果いい意味で無茶苦茶な仕上がりになったんじゃないかと思います。

続く「宗論」は、もう、無茶苦茶の上塗り(いい意味でね)。
演じ慣れたネタではありますが、今日は独演会ならではのクスグリも加えられて、僕自身久しぶりに新鮮な気持ちで取り組めた「宗論」となりました。

「鷺とり」と「宗論」で、腰の事を一切気にかけずに暴れ回ったので、「ねずみ」はいつも以上に腰を落ち着けて演じさせて戴きました。
タイムリーと言うか、運命のいたずらと言うか…「ねずみ」の主要人物の一人である“ねずみ屋の主”が、腰を傷めているという設定。
お陰でいつも以上に、その辛さや惨めさに感情移入する事が出来ました。
ドラマチックでありながら、同時に極上のファンタジーでもある…そんな「ねずみ」の魅力を、僕自身再度発見できる高座でありました。


思えばいつもいつも、落語の登場人物達に助けられています。

彼らが不器用に、でも必死にもがく姿が、僕に勇気と力を与えてくれてるんじゃないかと思います。


…とか言いつつ、今日頑張った事によって、明日腰の具合がどうなってしまってるか、すごい心配なんですけど。

でも落語の登場人物達なら、きっと最後は居直って、笑顔でこう言い放つ事でしょう。
「明日は明日の風が吹く」。


ご尽力くださったスタッフの皆様や、ゲストとして華を添えて戴いた米團治兄さん。前座を務めてくれた團治郎くんに、手伝いに来てくれた鯛蔵くん。
そして何より本日ご来場くださった全てのお客様に、心よりの御礼を申し上げます。


僕の腰が砕けてしまうまでは、これからもご贔屓の程をよろしくお願い申し上げます。