いきなり、何の意味か不思議でしたでしょうが、
ビートルズのCDのお話です。

この商売を始めた時に、全ての自分のコレクションを
手放してしまおう!と断腸の思いで
決心した経緯は前にお話したとおりです。

特にビートルズのCDの日本の1stプレス盤は
「アビイ・ロード」でした。
宝物中の宝物でしたので、
心を鬼にして店頭に陳列したものです。
顔は笑って、・・・で泣いて・・辛いものでした。

実はこのCDには
こんな裏話があるのです。

LPのCD化は1982年ごろから始まり、
ビートルズのLPについても当時始まりつつありました。

当時のLPの発売元は東芝EMIですが、
本国のイギリスのEMIにCD化を打診したところ、

英EMIでは新しい媒体としてのCDに
それほど重要性を感じていなかったためか


アビイ・ロードのCD化について、
簡単にOKの返事が返ってきたらしく、
それが実現し、1983年ごろCD化されました。


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しかし、この当初の盤がいわくつきのCDとなります。

日本でのCD化後、しばらくしてから、CDの媒体の
重要性と将来性に気づいた英EMIは、
ビートルズのCDは整理された形で行う方針に変換。

そして日本に対しては、このアビーロードのCDの

廃盤を指示しました。

それで、このCDは「幻のアビイ・ロードCD」に
なってしまったわけです。

幻の廃番アイテム・・・全世界で日本のみにしか
存在しない貴重盤です。

そのためこのCD盤の中古は、現在、50,000円ぐらいで
高価で取引されています。

(このいわくの記事は、ブログ=猪苗代スポーツ
クラブ様のものを一部転用させていただいております)

このアビーロードの幻のCDはマニア垂涎となって
そのCD番号はCP35-3016 です。

これを、吹聴するわけでもないのですが、
ファンとして当然というか当たり前のように
CD化と同時に購入したのです。

ちょいと、高いなぁ・・・という相場感はありました。
3500円でした。

仕方がないですね。CDの出始めの頃ですから。

当然、この後のプレミアなど考えもしなかったことです。


こうしたアビーロードの幻のCDも含めて、お店の
ビートルズ関連のアイテムでも200種を越えて
珍品やレア・アイテムも自慢できるほど
陳列できたのです。

来店したお客様の話題となり、わたしの店は
「ビートルズに詳しい、在庫豊富な店」として、
一部マニア間では有名になっていました。

わざわざ、夏休みの帰郷の時、かならず寄ってくださる、
熱心なお客様もいました。県外からです。


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ある日突然、その仲間の方が来店して、

この幻のCDを是非買いたいと言うのです。

展示しているからには、売りものです。
なんとも複雑な気持ちでした。

商売です!ありがたく購入していただきました。

値段は廃番状態が続いていましたので、10000円で
お売りしたと思います。

高価なものなので、そのお客様に『お好きなんですね・・』と
話しかけてみると、

『以前から、見ていて絶対欲しいと
思っていました。お小遣いでは買えないので、バイトをして
お金を貯め今日やってきのです
』との事でした。

そんな方に買ってもらうのだったら、
幻のCDも喜ぶに違いないと安堵したのですが、
なんだか落ち着きません。

何度も言いますが本当に複雑な心境です・・・・
これで個人的にはビートルズとサヨナラだな・・
と思いました。

買っては売り、売っては・・ではケジメがつきません。

いまさら個人のコレクションなどと考えもしたこともありません。

お店と個人との趣味の端境(はざかい)線をどうするかが、
この商売の一番の難関です。

いっそ、ビートルズなんか知らなければと、
何度思ったことでしょうか。


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以後10年間は一切買わないで過ごしました。

他の同業者は、自分の好みのCDが入荷すると
すぐ自分のコレクションに加えてしまう方もいます。
店頭には出ないのです。自分の所有物にしてしまうのです。

個人的には、こういった考えは好みませんので、
入荷=買い入れ品については全部店頭に陳列しました。
なんといっても、お店あってのわたしですから。


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そうして、一年間は経ったでしょうか。

突然、あの幻のCDを買った方が来店したのです。

それも、幻のCDをを売りにいらしたのです。

これには、ギョッ!としました。
いったい何があったのか?
疑心暗鬼になってしまいました。
あれほど欲しかったCDを、こうして
売りにくるとは、どういう事なのだろう?

商売柄、不可思議な顔をしていられません。
気持ちを冷静にして査定をしました。

わたしの呈示した金額でOKとの事でしたので、
すんなり買取しました。
訳を何気なく訊いてみると、案外簡単なものでした。

ただ、持っていてもしょうがないから・・と
大雑把に言うと、こんな理由でした。

レアだから、貴重品だから欲しいという心境は
十分理解できます。
しかし、こんなに早く、それも他店ではなく、
売ったわたしの店にUターンです。
偶然にしては出来過ぎです。

何はともあれ、幻のCDは帰ってきました。
またまた、複雑な気持ちになってしまいました。

いったんは決別して、また邂逅する・・・
男と女の関係みたいです。

買い取ったCDは、本当に例外的に
在庫棚に封印してしまいました。
以後、一度も店頭に陳列することはありませんでした。

こんなことは、15年に一回の事です。
心のつっかい棒がとれたようです。

一般買い入れしたものは、全て店頭に出す!
という方針で、それまで営業してきたのです。
・・・もろいものです。呆れてしまいます。

自分なりに「おきて破り」をしたような、
罪悪感みたいなものが湧いてきました。
・・・自分の所有物ですが、お客様に対してです。

我が青春のビートルズは、どこまでもわたしに
かかわりあいを求めてくるようです。

やはり、ビートルズが帰ってきたのです。


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