ノープリーツ→ワンプリーツ。
昨年くらいからBEAMSの若手スタッフの間で流行っているお直しがあります。
それは、ノープリーツのパンツをワンプリーツにするというお直し。
そんなことできるの? という方が大半だと思いますが、実はある条件を満たしていればできるのです。
私も既に数本のノープリーツパンツをワンプリーツにお直ししましたが、ちょうど今日お直しが上がってきたパンツがあるのでお見せします。
数年前にスミズーラしたSTILELATINOのスーツの組下パンツ。
これがお直しをする前のノープリーツの状態。
コレがお直し後のワンプリーツになった状態。
これも数年前にスミズーラしたBELVESTのスーツの組下パンツ。
お直しする前のノープリーツの状態。
そして、お直しでワンプリーツになった状態。
これも綺麗に1cmの深さのプリーツが入っています。
このノープリーツをワンプリーツにするというお直し、全てのパンツができるということではなく、ある条件が必要となります。
それは、ヒップの上のウェスト部分の縫い代がある一定の寸法以上にあること。
STILELATINOのパンツは縫い代が8cmあるので充分な分量があります。
BELVESTは6cmなのでギリギリです。
なぜ縫い代の寸法が6cm以上必要かというと、このお直しはウェスト部分の縫い代を広げて、その分量を使ってフロントにプリーツを入れます。
つまり、1cmの深さのプリーツを作るには片側で2cmの分量が必要で、左右で合計で4cmの分量が必要ということになります。
ウエストやヒップの縫い代は、強度にかかわってくるので最低でも片側1cm、左右で2cm必要になります。
つまり、上のBELVESTのパンツのように、縫い代が最低でも6cmないと、フロントに1cmのプリーツを入れることができません。
また、縫い代が充分にあったとしても、コットンのパンツは縫い代を広げたあとにステッチの跡が残るので、このお直しはできません。
ウールの生地で縫い代が6cm以上あれば、ノープリーツのパンツもワンプリーツにすることができるということです。
このお直し、特殊な直し方なので多少のデメリットもあります。
それは、後ろ身で4cm出しているので、お直し後脇ポケットが前に付いているように感じることと、前身に対して後ろ身の分量が多くなるので、プリーツが入っていても前身がコンパクトになったように感じるかも知れません。
お直しされる方は、この点だけはお直しの特性上仕方ないということをご理解のうえ、お直しをしてください。
因みに、十数年前ノープリーツが流行り始めた頃は、プリーツ入りのパンツをノープリーツにするお直しが流行ったことがありますが、お直しの方法はこの直し方の逆ですね。
今日あるお直し屋さんとも話しましたが、今は当時と逆のパターンで、ノープリーツからワンプリーツに直す問い合わせが非常に多いそうです。
私の場合、スーツの組下パンツは、直せるものは全てワンプリーツにお直ししました。
理由は、今の流れはスーツはエレガントに着こなすという本来のドレスの基本的な考え方に戻っていて、今後もその流れが続くのは確実で、その考えに則って考えれば、パンツもエレガントに見えるプリーツ入りが求められるというのが自然な流れだからです。
私は2年くらい前から新調するスーツは全てプリーツ入りのパンツでしたが、それ以前のパンツは、ここ10年くらいはノープリーツでした。
ジャケットは変わっていないのにパンツの流れが変わっただけで、このまま着なくなるのももったいないなということで、ワンプリーツにお直ししました。
このお直し、SARTOさん、心斎橋リフォームさん、コーダ洋服工房さんで対応できるようです。
もし、ご興味があれば、上記のお直し屋さんにお問い合わせください。
このお直し、上記のようなデメリットもあり、イメージ通りの仕上がりになるかどうかは分かりませんので、あくまでも自己責任でお直しをしてください。
着丈を詰めたり、身幅を欲しくしたり、裾幅を細くしたり、短くしたり、ベルトレスにしたり・・・
そうやって長く着て、いつかは形やスタイルが古くなって着なくなる。
永遠に着続けられるものって意外と少ないものです。
もちろん、流行なんか気にしないでずっと着続けるという考え方もありますが、クラシックにも時代性はあります。
進化を望まない人もいますが、クラシックなスタイルにも進化は必要。
私はそう考えます。
SARTO
http://www.sarto.jp/
心斎橋リフォーム
http://s-reform.co.jp/
コーダ洋服工房
http://www.coda-kobo.jp/