否認の話の続きです。






故意とか目的とかいった主観的要素の否認がよくある…と書きましたが、ほかにも否認の態様はさまざまです。




例えば、恐喝の事件で




『…被害者に対し、「どこのもんだ」「金を出せ」「殺すぞ」などと語気鋭く申し向け…』




といった送致事実だった場合、審判で「違っているところはありますか?」と尋ねると




「えっと~殺すぞとは言ってません」




なんてよく言われます。これは、個人的にプチ否認と呼んでいます。




少年を担当して、最初にこのプチ否認に当たると、内心ちょっと動揺した覚えがあります。捜査段階では、その点の否認が調書に出てこないのです。こちらとしては「えー聞いてないよー!」ってところです。




しかし、よく考えてみると、このプチ否認、あんまり重要でないのです。恐喝罪の成否に影響しないからです。




もちろん、その事件の事実関係によっては、その一言だけが被害者を畏怖させる脅迫行為であることもあるので、プチ否認の全部がその犯罪の成否に影響しないというわけではありません。


ところが、否認されたその一言がなくても、恐喝罪として成立してしまう場合、こちらとしてはテンション下がります。




そんな一言、あってもなくてもどうでもいいよ…って思います。






ところが、少年は真剣です。




「でも絶対言ってないんです」


「本当です」


「警察では、言っても信じてもらえないと思って、言いませんでした」




確かにですね、「殺すぞ」って、単なる金品の要求を超えた言葉ですからね。それだけ聞くと、殺人の予告です。




被害者の調書を読むと、「殺すぞ」と言われたと書いてある…




少年の横に座っている親の顔を見ると、これまた深刻な顔でこちらを見つめています。

















「そんなとき、どうすればいいんですか?」




と、少年を担当するようになって間もない裁判官から相談されたことがあります。




おー なるほどね。




観護措置は満了直前。審判で予期しないプチ否認…