今年もなんとなく8月になりました。
前回の記事のコメントで、なおこさんから質問をもらっていました。
「非行なし審判をするというのは「不処分」ってことでしょうか(?_?)」
ええと、答はイエスです。
不処分というのは、
「とくに保護処分をしない」
という意味でその名前がついています。
もうひとつ、よく似た用語で「審判不開始」という用語もあります。
これも、保護処分は行われません。
しかし、審判手続が開始されないまま終わってしまう「審判不開始」とは違い、不処分は、審判手続が行われた上で「とくに保護処分をしない」という結論になります。
審判不開始は、不起訴処分と同じように考えてもらっていいと思います。
少年事件は、全件送致主義なので、検察庁で不起訴処分にならないまま送致されてきたものを、家裁の方で審判不開始にしている…というイメージです。
で、問題の「不処分」、二種類あります。
圧倒的に多いのは、有罪であるけれども処分はしない…という不処分です。
この「有罪であるけれども」ってところが肝心なんですが、一般には、どうもそうは受け取ってもらえません。
審判廷で、よくよく念を押して「有罪なんだよ」と説明しても、後日、別の事件の手続で会うと
「あれは…別になにもありませんでした」
なんて少年から言われたりします。
うっかりすると
「無罪でした」
なんて言われたりします。
親でさえ、そう言うことがあります。
警察官でさえ、そう思っていることがある…
(これは、後日の新件の調書でわかります。)
不処分…というと一般には「不問に付す」って考えてしまうかも知れないです。
ただでさえ、そのように誤解されがちな概念なので、なおこさんからのような質問があることはもっともだと思います。おまけに審判不開始なんてのもある…誰かがくどいくらい説明すべきですな。
さて、もうひとつの、圧倒的に少ない方の「不処分」…これがまさに無罪です。
圧倒的に多い方の不処分と区別するために
「非行なし不処分」
と呼んだりします。
前回の記事では、これの省略形で
「非行なし」
と書いたわけです。
こっちは、つい省略形で話をしてしまうわけですが、聞き手にはわかりにくい…
用語の問題なので、もっとわかりやすい用語に変えたらどうか…
って話は、もう昔っからありますね。
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前科と同じで、少年時代にしでかした悪さが、なにかの記録に残っていることがあります。
それが、場合によっては、後日、問題になることがあります。
刑事事件で、検察官が、被告人の前科と前歴を立証するとき、出してくることがあります。
前科の方はいいんですが、問題は少年時代の前歴です。
見ると、結果の欄に
「不処分」
なんて書いてある。
よくよく読んでみても、それが、圧倒的に多い方の「不処分」か、圧倒的に少ない方の「不処分」か、書いていない…
こういう場合、よく確かめもしないで
「被告人には少年時代の前歴もあるから規範意識が低いことは明らかである」
なんて言ったり書いたりしてはいけません。
確かめられたならいいけど、証拠上、区別が付かないなら、それは
有罪の不処分
か
無罪の不処分
か
わからないわけだから、無罪だったかも知れない不処分を有罪の不処分だったかのように扱うのは、かなり、まずいのです。
もちろん、有罪の不処分の方が圧倒的に多いんだから、いいだろう…なんてルーズな発想は、論外です。
ひとくちに「前科前歴」と言っても、やっぱり、つぶさに検討しなければならない。
中には、参考にならない前歴が、あり得るんです。