水商売をしながら、母親ひとりで子どもを育てるのは、並々ならない苦労があるだろうと思います。
体を二つに分けることはできないですから、店の仕事をするなら、夜は子どもと一緒にいられません。
子どもは勝手に夜遊びして、悪さをしてきてしまう…
実は、この少年、詳しく書きませんが、なかなか見どころがありました。
身柄で送致されてしまいましたが、こっちとしては、まだ、少年院に収容しなくてもいいだろうと思っていました。
しかし、この先は、わからない…
これまでと違って、子どもが鑑別所に収容されたことに母親は参っている様子でした。
「お母さん、彼のこれからはどうなるんですか?」
そう尋ねました。
わたしが男と長続きしないのはなぜかしら…と以前の審判で軽口を叩いていた母親、ほんとはいろいろ大変だってことぐらいこっちもわかっているんです。
しかし、あなたが、審判で、子どもを隣にして、裁判官に言わなければならないことは、そんなことではないはずだ…
「非行事件を起こした少年を監督する能力が親にないなら、違うところで監督してもらうしか、ないんですよ」
こっちが、そう言い終わらないうちに、母親がやっと言いました。
「わかりましたよ。連れて帰ります。夜遊びしそうなときは、あたしが連れて帰ります。わかりました…」
そして、表情はあまり素直な感じではありませんでしたが、はっきり
「首に縄をつけてでも」
と言いました。