オスロ(ノルウェー)での国際医療技術評価学会への参加 | BBブリッジ公式ブログ クワトロB(BB-Bridge Blog)

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おはようございます。
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先日、当社で作成している技術レポート「医療経済評価を取り入れた医薬品開発の現状と展望(7月上旬発刊予定)」の取材のために、ノルウェー オスロの国際医療技術評価学会(HTAi)の年次大会に参加してきました。医療経済評価は従来のように効果や副作用に基づく評価だけでなく、治療に必要なコストという指標を加え、費用対効果に基づく評価を行うことで、限りある財源をより適切に配分・活用するという考え方です。
HTAiは医療経済評価・医療技術評価の専門家によって構成されている老舗の学会で、当日は世界各国から医療経済評価に関わる国の専門家や大学などの研究者が参加していました。欧州やアジアでは医薬品や医療機器開発の際に医療経済評価を求められるケースが増加し、近年では産業界(製薬企業、医療機器メーカー)からの参加も増えているとのことでした。オスロでの年次大会は約900名の参加、この内産業界からの参加は全体の20%強です。実際に年次大会のスポンサーにはEli Lilly、Amgen、Medtronic、Pfizer、Genzyme(Sanofi)、AstraZeneca、Bristol-Myears Squibbなど大手製薬・医療機器メーカーが名を連ねていました。
HTAiの年次大会は初めての参加でしたが、参加登録の際に参加費が所属国によって異なっており、日本のような先進国は参加費が高く、アフリカのような途上国からの参加費は安価に設定されていました。私も多くの学会の大会に参加していますが、このような国の区分での参加費の違いは初めてで、さすが医療経済評価をテーマにしている学会であると思いました。
実際に大会に参加してみると、欧米からの参加はもちろん、アフリカや南米からの参加も多かったです。これはアフリカや南米の国々は欧米諸国に比べて医療財源が少なく、限りある財源をより効率的かつ公平に活用するために医療経済評価を積極的に取り入れようとしているからです。

既に欧州ではイギリス・フランス・ドイツなど多くの国が医薬品の保険償還の際に医療経済評価を導入しています。これにより費用対効果が悪いと評価された医薬品は保険償還されなかったり、保険償還されても低い薬価で償還されます。このような判断は、製薬企業はもちろん新薬を使いたい患者にとっては非常に厳しい状況となります。一方、膨張する医療のコントロールは、増税などの選択肢も含めて国民全体で考えなければならない課題です。実際にイギリスの研究者と話をしてみると、「NICE(医療経済評価を行うイギリスの公的機関)の厳しい決定に対し一部の患者団体が反発しているものの、多くの国民は限りある財源を有効活用するという面でNICEの決定については受け入れている」と語っていました。
日本でも2012年5月に中医協において費用対効果評価専門部会が設置され、2016年の診療報酬改定より医療経済評価を試験的に導入することを視野に議論が進められています。今後我が国において医療経済評価がどのようなシステムで導入されるのか、非常に注目されます。

BBブリッジでは医薬品開発における医療経済評価について、各国の動向や製薬企業の対応動向、今後の展望をレポートにまとめています。発刊前のため概要しか記載しておりませんがご興味のある方は以下をご覧ください。

【技術・市場調査レポート】医療経済評価を取り入れた医薬品開発の現状と展望
     

今回年次大会が開催されたオスロはノルウェーの首都で、懇親会が開催されたオスロ市庁舎はノーベル平和賞の授賞式が行われる会場としても有名です。ノルウェーの名物はサーモンやヤギのチーズなどがありますが、消費税が高いため生活にはお金がかかります。外食費用は日本のおよそ2倍程度です。食事以外では「ムンクの叫び」で有名なエドヴァルド・ムンクがノルウェー出身であり、オスロ国立美術館やムンク美術館でムンクの叫びを鑑賞することができます。

ちなみに今回参加したHTAiの2016年の年次大会は来年5月に東京で開催予定です。中医協での医療経済評価の試験的導入の行方も含め、来年は医療経済評価が非常に注目されることになると思います。
オスロの街並み
オスロ市庁舎でのレセプション