【25年ぶり】一般用検査薬に関する一般原則の変更 | BBブリッジ公式ブログ クワトロB(BB-Bridge Blog)

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 現在、「予防医療・セルフケア時代の個人向け検査/診断ビジネスの最新動向と将来展望」というテーマで技術・市場調査レポートを作成しております。

 国民医療費の増加や予防医療への関心の高まりを背景に、個人向け検査・診断(日本では一般用検査薬という名称が利用されています)に対する期待が大きくなっています。国としても個人向け検査・診断の方向性を検討するため、厚労省 薬事・食品衛生審議会 (医療機器・体外診断薬部会)において一般用検査薬の取り扱いや今後について議論が行われていました。


そして年末も差し迫った2014年12月25日に厚生労働省医薬食品局長から「体外診断用医薬品の一般用検査薬への転用について」という通知が出されました。これは一般用検査薬に関する制度(一般原則)が約25年ぶりに更新されたことになります。本通知における主な変更点・ポイントは以下の通りです。



(1)検査項目追加のための検討
 一般用検査薬として利用することが適している検査項目について、追加のための工程を具体的に示しています。なお、検査項目について下線部の内容が追記されています。


「健康状態を把握し、受診につなげていけるもの。ただし、悪性腫瘍、心筋梗塞や遺伝性疾患など重大な疾患の診断に係るものは除く。また、感染症に係る検査は個別の検査項目ごとに販売方法を含め慎重に検討を行う。」



(2)検体について
 以前の一般原則(1990年に通知)では検体の条件としては「採取が容易で特別な器具を必要としない」という条件のみででした。血液については「医師の指導が必要と思われるので今後の検討に任されるべきである」という記載に留まっていました。今回の通知ではこの点が改定され、以下のように記載されており、実質的に血液を検体とする検査は一般用検査薬として認められないものと思われます。


「尿、糞便、鼻汁、唾液、涙液など採取に際して侵襲のないものが検体として適当である。 検体の採取に採血や穿刺等を伴う行為であれば、「侵襲がある」と考える。具体的な検体として、穿刺血、咽頭拭い液、口腔内擦過検体などが考えられる。」


 上記以外にも販売時の注意や製品に対する要件などが記述されています。25年間特に動きがなかった一般用検査薬について、厚労省から今後の製品化に関する通知が出されたことは大きな一歩であると思います。通知では製品化のフローについてより明確な記載がありますので、開発側にとっても今まで明確な基準があまりなかった一般用検査薬の開発について、より円滑に進めることができます。

 一方、上記のように通知ではがんや心筋梗塞、遺伝性疾患、感染症などを対象とした一般用検査薬の開発にはストップがかけられており、さらに血液を使うことも推奨しない内容になっています。これでは開発候補となる検査項目はかなり限定してしまうことが予想されます。米国では検査キットの安全性が担保されれば(FDAの認証が必要です)、指先からの微量血液を利用した検査キットを一般の方が使用して自分で検査をすることが可能になっています。実際に感染症や生活習慣病を対象とした検査キットがドラッグストアやインターネットで販売されています。


 日本の医療システムは米国とは大きく異なるため単純な比較はできませんが、前述の通知を前提とするならばかなり限定的な場面でしか個人が一般検査薬を利用することができないと思います。日本では昨年検体測定室に関するガイドラインなども発表され、個人が自分の意志で検査を受けることが身近になっています。検体測定室の制度などを活かし、日本に適した個人向け検査・診断のシステムを作っていくことが日本で予防医療・セルフケアを進めるために必要です。




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予防医療・セルフケア時代の個人向け検査/診断ビジネスの最新動向と将来展望
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