オペラ「ペレアスとメリザンド」エクサン・プロヴァンス音楽祭2016 @NHK-BS | 「月球儀」&「芭蕉座」  俳句を書くメゾソプラノ山本 掌のブログ

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第四句集『月球儀』
「月球儀」俳句を支柱とした山本 掌の個人誌。

「芭蕉座」は芭蕉「おくのほそ道」を舞台作品とする
うた・語り・作曲・ピアノのユニット。
    



俳句を金子兜太に師事。「海程」同人・現代俳句協会会員。


ペレアスとメリザンド Ⅰ




2016年のエクサン・プロヴァンス音楽祭で上演された

ドビュッシーの唯一のオペラ「ぺリアスとメリザンド」、

この7月7日の公演をNHK-BSで放映。

このオペラは舞台での上演が難しく、

演奏会形式による上演のほうが、

ドビュッシーの音楽がよく聴ける、わかる、との意見も。


この「ペレアスとメリザンド」は

カティー・ミッチェル(英国の女性演出家)によ<るプロダクション。

幻想と現実が交錯し、潜在意識まで視覚化されて。

本人とドッペるゲンガーのような分身・・・などがあらわれ、

人物の心理の意識下まで描き出す。


この物語全体を「メリザンドの夢」となっているのが

メリザンドの最初と最後に同じ衣装(ウエディングドレスでしょうか)

でそれと納得。なんとも興味深い演出。


たとえば「メリザンドの死」ではひとりのメリザンドは歌い、動く。

死をむかえているもうひとりのメリザンドはベットに横たわり、

ゴローや家族は悲しみ、嘆きながら見守っている・・・



演奏がなんといっても素晴らしさかった。

メリザンドを歌ったバーバラ・ハンニガン、

ほとんど出ずっぱりでの歌唱と演技。

心理の深層にまでえがきだす声と緻密でゆたかな表情。

筋肉も強靭で、かつしなやか。


ゴローとメリザンドと分身

            ゴローとメリザンドと分身 



ペレアスのステファーヌ・ドゥグーの表現力、

ゴローのロラン・ナウリ。

むろん歌っているのだけれど性格俳優では思うほど演技派。

アルケルのフランツ=ヨーゼフ・ゼーリヒの穏やかでいて重厚。
 
ジュヌヴィエーヴのシルヴィ・ブルネ=グルッポーソ、

イニョルドのクロエ・ブリオ、

医者のトーマス・ディアー。

この演出のもと、どの歌手もいい歌で、演じている。


ゴローとメリザンド

             メリザンドとゴロー



歌といってもこのオペラではレティタティーボとアリアなどはない。

あるいはワーグナーのライトモティーフでもなく、

フランス語のディクションをいかした音形で、

語るように歌われる。


指揮のエサ=ペッカ・サロネンと、

フィルハーモニア管弦楽団があざやかな音楽を響かす。


なんとも素晴らしい「ぺリアスとメリザンド」に出会った。






   (画像・動画はエクサン・プロヴァンス音楽祭の広報より)



《ペレアスとメリザンド》

エクス=アン=プロヴァンス音楽祭
2016年7月7日
プロヴァンス大劇場

■ 作曲/クロード・ドビュッシー
 原作・台本/モーリス・メーテルランク


演出/ケイティ・ミッチェル
制作/マーティン・クリンプ
装置/リジー・クラチャン
衣裳/クロエ・ラムフォード
照明/ジェイムズ・ファーンコム
振付/ジョゼフ・W・オルフォード


メリザンド/バーバラ・ハニガン
ゴロー/ロラン・ナウーリ
ペレアス/ステファーヌ・ドグー
アルケル/フランツ・ヨーゼフ・ゼーリヒ
ジュヌヴィエーヴ/シルヴィ・ブリュネ=グルッポーゾ
イニョルド/クロエ・ブリオ
医師/トマス・ディア
メリザンド(分身)/ミア・シール・ヘイヴ
召使(黙役)/サラ・ノースグレイヴズ、サーシャ・プレージュ


エサ=ペッカ・サロネン指揮
フィルハーモニア管弦楽団
ケープタウン歌劇場合唱団