2016年のエクサン・プロヴァンス音楽祭で上演された
ドビュッシーの唯一のオペラ「ぺリアスとメリザンド」、
この7月7日の公演をNHK-BSで放映。
このオペラは舞台での上演が難しく、
演奏会形式による上演のほうが、
ドビュッシーの音楽がよく聴ける、わかる、との意見も。
この「ペレアスとメリザンド」は
カティー・ミッチェル(英国の女性演出家)によ<るプロダクション。
幻想と現実が交錯し、潜在意識まで視覚化されて。
本人とドッペるゲンガーのような分身・・・などがあらわれ、
人物の心理の意識下まで描き出す。
この物語全体を「メリザンドの夢」となっているのが
メリザンドの最初と最後に同じ衣装(ウエディングドレスでしょうか)
でそれと納得。なんとも興味深い演出。
たとえば「メリザンドの死」ではひとりのメリザンドは歌い、動く。
死をむかえているもうひとりのメリザンドはベットに横たわり、
ゴローや家族は悲しみ、嘆きながら見守っている・・・
演奏がなんといっても素晴らしさかった。
メリザンドを歌ったバーバラ・ハンニガン、
ほとんど出ずっぱりでの歌唱と演技。
心理の深層にまでえがきだす声と緻密でゆたかな表情。
筋肉も強靭で、かつしなやか。
ゴローとメリザンドと分身
ペレアスのステファーヌ・ドゥグーの表現力、
ゴローのロラン・ナウリ。
むろん歌っているのだけれど性格俳優では思うほど演技派。
アルケルのフランツ=ヨーゼフ・ゼーリヒの穏やかでいて重厚。
ジュヌヴィエーヴのシルヴィ・ブルネ=グルッポーソ、
イニョルドのクロエ・ブリオ、
医者のトーマス・ディアー。
この演出のもと、どの歌手もいい歌で、演じている。
メリザンドとゴロー
歌といってもこのオペラではレティタティーボとアリアなどはない。
あるいはワーグナーのライトモティーフでもなく、
フランス語のディクションをいかした音形で、
語るように歌われる。
指揮のエサ=ペッカ・サロネンと、
フィルハーモニア管弦楽団があざやかな音楽を響かす。
なんとも素晴らしい「ぺリアスとメリザンド」に出会った。
(画像・動画はエクサン・プロヴァンス音楽祭の広報より)
《ペレアスとメリザンド》
エクス=アン=プロヴァンス音楽祭
2016年7月7日
プロヴァンス大劇場
■ 作曲/クロード・ドビュッシー
原作・台本/モーリス・メーテルランク
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演出/ケイティ・ミッチェル
制作/マーティン・クリンプ
装置/リジー・クラチャン
衣裳/クロエ・ラムフォード
照明/ジェイムズ・ファーンコム
振付/ジョゼフ・W・オルフォード
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メリザンド/バーバラ・ハニガン
ゴロー/ロラン・ナウーリ
ペレアス/ステファーヌ・ドグー
アルケル/フランツ・ヨーゼフ・ゼーリヒ
ジュヌヴィエーヴ/シルヴィ・ブリュネ=グルッポーゾ
イニョルド/クロエ・ブリオ
医師/トマス・ディア
メリザンド(分身)/ミア・シール・ヘイヴ
召使(黙役)/サラ・ノースグレイヴズ、サーシャ・プレージュ
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エサ=ペッカ・サロネン指揮
フィルハーモニア管弦楽団
ケープタウン歌劇場合唱団