細川俊夫の新作オペラ《海、静かな海 Stilles Meer》の世界初演が、
ドイツのハンブルク州立歌劇場で2016年1月24日に上演され、
3月13日にNHK-BSで放映された。
細川俊夫の新しいオペラは、
東日本大震災と原発事故後の福島を舞台に、
犠牲者の鎮魂、そして被災地に留まる人々の心を描いている。
その音楽は限り無い静謐さをたたえ、
ひとの内奥にしずかに、しずかに、
そして深々と楔を打ち込む。
「海、静かな海」(2015)は、1幕5場のオペラ。
平田オリザが書きおろした日本語の脚本を
ドロテア・ガストナーがドイツ語翻訳をし、
ハンナ・デュブゲンが台本にした。
平田自身による演出。
あらすじは
「日本人と結婚し、バレエ教師として
福島で暮らしていたドイツ人女性クラウディアは、
2011年3月11日の津波によって最愛の夫と子を亡くす。
彼女は夫の死を受けいれているが、
息子の死を信じられずいる。
原発事故後、夫の姉ハルコは彼女にドイツへ帰国するよう勧め、
またクラウディアの元恋人で息子の父親でもあるシュテファンも
彼女を祖国に連れて帰ろうとするが、
それでも彼女は被災地に留まる・・・」
能『隅田川』
子と引きさかれた母親が
子を求めるあまり、狂気にいたる・・・が通奏低音となり、
オペラの根幹となっているよう。
クラウディア(ソプラノ)のスザンヌ・エルマークの
押さえようとしてもほとばしる息子への想い。
義姉・ハルコ(メゾソプラノ)の藤村実穂子
の声の緻密にして、静謐、しかも底力のある歌唱。
おどろいたのはもと恋人のシュテファン、
この役をカウンター・テナーに設定してあること。
ベジュン・メータの輝かしく、しかも深い声。
高音での絡まりあう声の不思議なこと。
じつに綿密に構成されて創られており、
観ていて、観終わってさまざまな思いにいざなう。
このオペラを日本でこそ観たい。
新国立劇場の中ホールで上演できないのだろうか・・・
◆細川俊夫「海、静かな海」 (1幕5場)
2011年3月11日の犠牲者に捧げる
原作(日本語):平田オリザ
ドイツ語翻訳:ドロテア・ガストナー
オペラ台本:ハンナ・デュブゲン
委嘱:ハンブルク州立歌劇場
出演
クラウディア(ソプラノ):スザンヌ・エルマーク
ハルコ(メゾソプラノ):藤村実穂子
シュテファン(カウンター・テナー):ベジュン・メータ
ヒロト(テノール):Viktor Rud
漁師サカモトタロウ(バリトン):マレク・ガセツェッキ
ハンブルク・フィルハーモニカー
合唱:ハンブルグ・ゾリステン
指揮:ケント・ナガノ
原作・演出:平田オリザ
舞台美術:杉山至
衣装:正金彩
照明:Daniel Levy
世界初演:ハンブルク州立歌劇場(ドイツ)
2016年1月24日・27日・30日・2月9日・13日
◆細川俊夫インタヴュー
http://www.schottjapan.com/news/2016/160118_182535.html
◆ケント・ナガノ インタヴュー
https://www.facebook.com/permalink.php?story_fbid=956176511133672&id=232636353487695