昨年は3年ぶりのリーグ2位となり、今シーズンは更なる飛躍を目指す横浜DeNAベイスターズ。
今シーズンのカギを握っているのは先発陣。
WBCに今永昇太が参加しており、現時点では開幕投手からは外れる可能性が高く、キャンプ中から開幕投手やローテ争いに注目が集まっていました。
しかし開幕投手最有力と目されていた大貫晋一が「右三角筋後部繊維肉離れ」で離脱。ローテ候補の石田健大、濱口遥大、上茶谷大河、東克樹らがオープン戦でアピールできておらず、非常に悩ましい状況となっています。
そんな中で3月14日、2021年までロサンゼルス・ドジャースでプレーし、2020年にはその年最も活躍した投手に贈られる“サイ・ヤング賞”を受賞したトレバー・バウアー投手と契約合意に達したと発表しました。
【DeNA】サイ・ヤング賞右腕バウアーと1年約4億円で契約 背番「96」メジャー83勝大物(日刊スポーツ)
DeNAは14日、前ロサンゼルス・ドジャースのトレバー・バウアー投手(32)と契約合意したことを発表した。出来高含め総額300万ドル(約4億円)の1年契約。背番号は「96」に決まった。早ければ今月下旬にも来日の予定。
バウアーはメジャーで2ケタ勝利を5度達成し、通算83勝をマークする超大物メジャーリーガー。レッズ時代の20年にはサイ・ヤング賞を獲得。
球団を通じ「今シーズン、ベイスターズでプレーができることになり、非常に興奮しています。日本プロ野球界でプレーをすることは私の夢であり、その夢をファンの皆さんの前でお見せすることができる球団として、ベイスターズ以上のチームはないと思っています。素晴らしいチームの一員となり、一緒に優勝を目指すことができる機会をいただいて、とてもうれしく感じています。選手、そしてファンの皆さんに会いたい気持ちで既に待ち遠しいです。横浜の街で会えることを楽しみにしています」とコメントした。
三浦大輔監督も「ひと言ですごいピッチャーですよ。メジャーでの実績もすごいですし。まだ若いですしね。現役バリバリのメジャーリーガーが横浜に来るということで、興奮しています」と興奮を隠せない様子だった。
バウアーは21年6月に女性に対する暴行疑惑が浮上し、制限リスト入り。当初は324試合の出場停止処分を受けたが、昨年12月に異議申し立てし、処分期間が194試合に短縮された。
今年1月にメジャー40人枠から外れ、ウエーバーにかけられたが、獲得希望の球団はなく、自由契約とされた。球団側はMLB、本人との面談など慎重に精査。NPBでのプレーに問題はなく、獲得に至った。
出場停止処分中だった22年は登板はなかったが、自主トレを継続。コンディション面での問題もなく、メジャー屈指の先発右腕が、25年ぶりの優勝への使者として、チームに加わる。
今回は、DeNAが獲得を発表したトレバー・バウアーについて紹介します。
メジャー通算83勝、20年には“サイ・ヤング賞”を受賞した経験を持つMLBのトップ級右腕
トレバー・バウアーは、アメリカ合衆国・カルフォルニア州ロサンゼルス出身の32歳。右投げ右打ちの投手です。
カルフォルニア大学ロサンゼルス校時代には、ゲリット・コールと2枚看板を形成し、大学通算34勝、防御率2.36、460奪三振を挙げ、注目を集めた。
2011年MLBドラフト1巡目(全体3位)でアリゾナ・ダイヤモンドバックスから指名され、前述したコールが全体1位指名を受けた事で同一大学からドラフト上位3位以内で2人が指名されるという快挙も達成し、プロ入り。
7月30日には1A+でプロデビューし、8月14日には2Aに昇格し、7試合1勝2敗、防御率5.96、43奪三振を記録した。
2012年は開幕前にベースボール・アメリカから球界全体9位の有望株として紹介されるなど、注目を集め、6月28日にメジャーデビューを果たし、メジャーで4試合1勝2敗、防御率6.06、17奪三振を記録。しかし捕手の配球を公に批判したり、コーチの指導を無視するなど態度面が問題視されるなど、トレード候補にも名前が挙がる様になっていた。
2012年12月11日に9人の選手が動く三角トレードでクリーブランド・インディアンスへ移籍した。
2013年はメジャーで4試合1勝2敗、防御率5.29、11奪三振を記録。このオフからはドライブイン・ベースボールを訪れ、科学的なトレーニングを取り入れ始めた。
2014年は先発ローテーションの一角に定着し、26試合5勝8敗、防御率4.18、143奪三振を記録した。
2015年はシーズン通して先発ローテを守り抜き、31試合11勝12敗、防御率4.55、170奪三振を記録した。
2016年は35試合12勝8敗、防御率4.26、168奪三振、1.31WHIPを記録するなどローテの一角を守り、チームのポストシーズン進出に貢献。しかしポストシーズンではドローン整備で負った指の負傷で活躍はできなかった。
2017年はシーズン序盤は乱調気味だったが、夏場に調子を上げると32試合17勝9敗、防御率4.19、196奪三振、1.36WHIPと成長を見せた。
2018年は自身初のオールスター選出を果たすなど、28試合12勝6敗、防御率2.21、221奪三振、1.09WHIPと防御率、奪三振、WHIPでリーグ上位の数値を残した。
2019年はインディアンスで24試合9勝8敗、防御率3.79を記録すると、7月30日に三角トレードでシンシナティ・レッズへ移籍。移籍後は成績を伸ばすことが出来ず、34試合11勝13敗、防御率4.48、253奪三振、1.24WHIPを記録した。
2020年は新型コロナの影響で短縮シーズンとなる中で11試合5勝4敗、防御率1.73、100奪三振、0.79WHIP、2完封で最優秀防御率を獲得。またオフにはサイ・ヤング賞に選出。オフに契約満了に伴い、FAとなった。
2021年2月11日、ロサンゼルス・ドジャースと3年総額1億200万ドルと契約を結んだ。
開幕からローテーションの一角を担い、17試合8勝5敗、防御率2.59,137奪三振、1.00WHIPと活躍を見せていた。
しかし5月16日に女性に対して暴行を行ったとして警察が捜査を行っている事が公表された。(のちに不起訴処分)
7月2日に制限リストに入ると、以降も調査完了までリスト入りの期間が延長され続け、最終的にシーズン中は復帰する事はなかった。
2022年4月29日、MLB機構からDVなどの禁止規定違反によって、2シーズンに相当する324試合の出場停止処分が下された。のちに異議申し立てによる再調査で処分期間が194試合に短縮されたが、2022年はプレーする事はなかった。
2023年1月6日、メジャー40人枠から外れ、自由契約となっていた。
シーズン成績
上記はトレバー・バウアーのMLBでのシーズン成績です。
2015年から5年連続の2桁勝利をマークし、2017年には自己最多となる17勝をマーク。翌年の2018年は防御率2.21の好成績を残して、オールスターゲームに選出されるなど、好成績を残し続けています。
2020年は新型コロナによる短縮シーズンとなったものの、11試合5勝4敗、防御率1.73、100奪三振、0.79WHIP、2完封と好成績を残し、MLBでその年に最も優れていた投手に与えられる“サイ・ヤング賞”を受賞するなど、投手として充実期を迎えた。
2021年も17試合8勝5敗、防御率2.59、137奪三振、1.00WHIPと安定した投球を見せているなど、まさにMLBトップ級の実力者であると言えます。
一方で出場停止処分を受けて以降、実戦でのプレー機会からは離れていることもあり、そういった点が影響を与えるのか、またNPBのボールへの対応がどうなるのかが気になるところです。
どの球種も一級品の質
上記はトレバー・バウアーの球種別データです。
2021年の配球を見ると、ストレート(40.2%)、カットボール(21.6%)、スライダー(18.6%)、カーブ(11.2%)、ツーシーム(5.8%)、チェンジアップ(2.6%)となっています。
まずストレートですが、2021年は平均152.0キロ、最速157.0キロを計測。またスピンレート2784というのはMLBトップ級の数値を叩き出していて、2021年のパーセンタイルランキングではストレートの回転数は100パーセンタイルと凄まじい評価を与えられています。
特徴的な球種となっているのがカーブ。
2021年はスピンレート3013と抜群の回転数を叩き出していて、こちらもMLBトップ級の数値を叩き出しています。バウアーはこのカーブについて、「ナックルカーブ」として使っていると自身のYouTubeチャンネルで明かしています。
球速も平均130.2キロとストレートとの球速差もあり、大きく縦に落ちる軌道で動くこともあり、ワンバウンドするほど手前にあるにもかかわらず、打者が空振りをする事やストライクゾーンに決まりながらも打者が仰け反るなど曲がりの大きさは抜群です。
その他、カットボール、スライダー、ツーシーム、チェンジアップも投げ分けており、打者に的を絞らせない投球術も有していると言えそうです。
プレー映像
↑2021年の投球映像
平均152.0キロを計測し、MLBトップクラスの回転数を誇るストレートや抜群の精度を誇る変化球をピッチトンネルも駆使して投じ、また5シーズン連続で奪三振率10点台以上を叩き出すなど、まさにMLBトップクラス級の実力と実績を持つなど歴代の外国人投手とは比較にならない投手の来日が叶うことになります。
サイ・ヤング賞受賞者では1962年にドン・ニューカムがNPB入りした事はありますが、外野手としてプレーしていたため、投手としてプレーするのは、バウアーが初となります。
また先進的な練習法を積極的に取り入れることでも知られていて、重さの異なるボールを使った壁当てや動作解析によるフォーム分析や高速度カメラによる球種分析など現在では当たり前のような練習を先んじて取り入れています。
しかし不安な部分もあり、約21か月間実戦からは離れている事や粘着物質の使用の嫌疑をかけられた事や数々の問題行動など懸念される材料は多々あると思われます。
ただ野球へ対する貪欲な姿勢は依然として変わっておらず、2019年オフに来日した際には「将来、NPBでプレーしたい」と発言した事やMLBへのリベンジも果たしたいという意思もあるのではないかと思われます。
思わぬ形で実現した来日が、チームに何を起こすのか注目です。