それから3日目に、桐子が面会に来た。
ばつが悪くて言葉が出なかったが
武は深々と頭を下げて、桐子に
すまん
そういったきり、無言だった。
桐子は、状況を聞きたかったと言っていたが
そこまで詳しく話してはいけない決まりになっていて
弁護士に任せてると答えると
差し入れに何が必要かと聞いてきたので
お経本
ぽつりとそういった。
桐子はうなずいて、
そうよね。
これは意味のある出来事だから
こうして仏様にしっかりと武さんが祈っていかなければ
何もいいことは起きないってかいてあったわ。
私もご祈念する。
そういって帰っていった。
警察官が、その後差し入れを渡すときに
お念珠はひも状のものだから入れられないからね。
本はいいよ。
そういってなぜか片目をつぶって手渡してくれた。
武は、自分がなぜこのような目に合うのかを知りたいと思った
その日からお経を読み、お題目を唱えながら
仏様にこんな事がなぜ起きる自分の命なのか
どうか教えてくださいと
真剣に祈った。
相手がたまたま悪かったのか
自分の理性がないのか
どちらにしても、頭を強打したその相手の男が
軽い傷で済みますようにと祈る武だった。