まずは今日の新聞記事より一つ抜粋。


『フェルナンドはシュンスケからポジションを勝ち取った。


先日の試合でナカムラには1分も出場時間が与えられなかった。それはこれからも続くのか。彼に残された弾はせいぜいあと1,2発だ。来週には彼は日本代表戦でチームを離れることになっており、国王杯のヘタフェ戦を欠場することになる。それはチームでの信頼を勝ち取る機会を一つ失うことを意味する。ナカムラはこのリーグがスコットランドではないことを知っているし、ここではすべてが速く通り過ぎ去っていく。サッカーをうまくプレーすることを知るということと同様に、その土地に住むということ知ることは大切だ。そう、まさにこのバルセロナに。


反対に、フェルナンド・マルケスに対しては称賛しかない。ルイス・ガルシアは彼の謙虚さをうれしく思っており、ポチェッティーノ監督も彼の仕事に魅了されている。そして彼自身は同じことを繰り返すのみだ。


「エスパニョールの人々が僕を信頼していることに感謝しているよ」


ナカムラに我慢を余儀なくするもう一つの要因が一般的な生活への順応だ。日本の精密さが、町外れで生まれたインスピレーションに屈してしまう。マルケスは日本語が話せるか?他のすべての選手と同様に話せないだろう。ナカムラはスペイン語を話せるか?おそらくみんなが思っているよりは良いだろう。それならば、賢くなるべきだ』


要旨としては、バルセロナという土地にうまく適応できず、スペイン語にも問題を抱え、尚且つ「日本の星」は所属クラブでのポジションを失うリスクを背負ってまで日本代表戦に行かなければならない。その中で、次々と台頭してくる「スペインの原石たち」に、語学や他文化への順応というハンディを負いながらいかにこの状況を打破していくべきか、ということだ。


今、中村俊輔が置かれている状況は決して楽観視できるものではない。無論、そんなことは本人も理解しているだろうし、自身胸の内での葛藤が起こっていることだろう。



最近のこのブログの記事からもご覧の通り、ここスペインというのはサッカーのレベルが非常に高い。


プロのサッカー選手以外にも、3部、4部くらいに「うまい選手」がゴロゴロ転がっており、彼ら自身「今か、今か」と舞い込んでくる一瞬のチャンスを逃すまいと眼をギラギラ輝かせて狙っている。


この新聞記事にもある通り、ここでは全てが速く通り過ぎる。


もう一つの例として、おもしろい情報を。別の新聞記事から。


『元エスパニョールの選手であるラドゥカヌがバルセロナに帰ってきた。


彼のバルセロナへの帰還は驚きとともにもたらされた。なぜなら、彼は先週末、カタルーニャ州1部(5部)のポブレ・セックで公式戦“デビュー”を果たしたからだ。


「代理人がこのオファーを僕に提示してくれた時、もう一度スペインでプレーしたいな、と思って決めたんだ。これは一種の練習のようなもので、他のチームでプレーするためには重要なステップさ。2部Bのどこかでのプレー?構わないさ。」


このルーマニア人の5部でのプレーはそう長くならない見通しで、1,2カ月以内に別のチームに移籍する予定だが、それでも今所属しているチームで結果を残すことに全力を傾倒する姿勢を見せている』




このように、リーガ1部でプレーしたからといって、別に何も保証されることはない。選手として、いや監督や他のサッカーに携わる職に関してはすべて、「プロフェッショナル」という括りに限って言えば、


「結果を出し続けなければ生き残れない」


本当に、そんな厳しい世界に存在している人間たちだということだ。


幼少時代から、才能を発揮し続け、いわば「エリート中のエリート」コースにのっかることのできた人間など、スペインのサッカーではほぼ皆無だ。バルセロナのチャビやメッシ、R・マドリーのラウールやカシージャス。ざっと挙げても指で数えるほどであろう。


それ以外の人間は、1週1週確実に結果を残し、気の遠くなるような「栄光への階段」を、地道に、泥臭く、一歩一歩踏んで行く努力を続けているのだ。それしかないのだ。


中村俊輔は、日本で言えば「エリート中のエリート」だ。マリノスでユースから撥ねられたり、02年W杯で日本代表から落選したり、挫折は幾度かあるが、それでも彼のキャリアは日本の中でも図抜けて輝かしいことは疑う余地もない。


それでも、ここスペインでは「海のものとも山のものとも知らない異国人」であり、スペイン人の気質とも合わせてその実力を彼らに見せつけなければならない。えてしてスペイン人というのは、自分の目で見なければ納得しない人種であると僕は思う。


中村俊輔という日本でナンバー1の選手でさえ、そういった「スペインのエリート中のエリート以外」の選手たちと同じ土俵で戦わなければならないし、外国人であるがゆえに風当たりも厳しければ、評価も正当さばかり求められるとは限らない状況だ。


彼は、「スペインのエリート中のエリート」ではなく、他のン万人と転がる選手のうちの一人であることを強く自覚しなければならない。


俊輔自身も語っていた、「目に見える結果を残さないと・・・」という課題を、今こそ克服しなければならない時がやってきた。


ひとたび結果を残し、勝利に貢献し、それを維持することができるのであれば、彼らは手のひらを返したように俊輔を称賛し始め、たちまち定位置を手中に収めることができるであろう。




具体的にいえば、今彼に残された最後で唯一の手段は、FKでのゴールで勝利をつかむしかない、と僕は思う。




彼には言葉の問題と、性格上の資質での不適合がある。良い、悪いではなく、それが現実であるし、それは一朝一夕で直るものではない。それは改善できる問題だとは思うが、1試合1試合死ぬ気で戦っているリーガにおいて最早そんな時間は残されていない。



審判の時が、迫っている。