創作しているとつい自作の登場人物に感情移入してしまう経験ありませんか?

今回は私もきついです。

きつい展開では読者にとっても「いいね」押しにくいんですね!

訪問者数が伸びてるのに「いいね」が伸びないのはそういうことか。

幸せな展開では「いいね」が増えたのはそういうことか。

(「いいね」は主人公に「よかったね」ではなく、作者に「がんばったね」と押していただければ)

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目の前に真っ黒な大きな幕が下りてきた。

ひどく寒い。いや、何も感じない。座っている空間ごと地下の深い穴に降ろされたようだ。

「頭蓋骨の底にひびが入ってたけど命は何とか助かったって…けど…踵とか脛の骨とか、腰とかいっぱい潰れて…歩けるようになるか予断を許さないって」

それがどういう状態なのか、実感がわかない。もっとちゃんと勉強しておけばよかった。外池ならわかるんだろうか…埒もないことを。彼女だって学生だ、分かるわけがないだろう。

思考は空回りし、すぐ急ブレーキを掛けて止まった。

「ねえ、予断を許さないって、どういう意味だっけ? お医者さんの話が頭に入らないの…」

真美の声で、回転を止めたはずの世界がまた回り始める。

 

「落ち着いて、真美」…落ち着くのは俺だ。「なにがあったの」

「私、ケージ君と話をしに行って…もう支えられないって言って…

 ケージ、『わかった』って立ち上がって…ベランダにゆっくり歩いて行って…飛んだの」

低く静かなすすり泣き。

 

泣きつくし、泣き足らず、湧いてくる涙に足をすくわれ溺れている。

「真美… 行くよ。そっちへ行く…」

「来ないで」

静かに、はっきりと彼女は言った。

「今はダメ。二人だけで過ごす時間が必要なの。私たち、今、話もできないで、その手前で立ち止まっているから」

『私たち』。その響きに、大きな不安に襲われた。

 

なんということだ。

俺は自分で何もせずに、彼女を追い詰めて、急がせた。

その結果がこれか? 俺が引き起こしたのではないか?

急がせたことはもちろんまずかった。

いや。彼女への恋心がそもそも間違いだったのか?

彼氏のいる女の子を愛してはいけなかったのか?

 

「おおさわ…」

外池貴子が俺の顔を見て息を飲む。

自分の表情がひどいことに、彼女の態度をみて気付く。

ちょっとこっちへおいでと、校舎の端の階段にひきずっていかれた。

「…何があったか知らないけど。よく学校へ来れたね。自殺でもしかねない顔よ」

『自殺』。そのことばにびくっと体を震わせる。

「きゃっ…」

しかし、それで何かを察した外池は、ふうっとため息をつき、優しいまなざしになる。

「ねえ。一応聞いて。学園祭打ち上げと実習打ち上げ兼ねてお疲れ様会やるんだけど、参加どうするかって確認取ってるの」

「それは… ちょっと…」

「今すぐ返事しないでいいよ」

手を振って外池は去っていく。

教室では女の子同士で、何か話し合っているのがわかる。

しばらく気遣われるのだろう。

 

俺はまだ女の子を愛してはいけないのだろうか…?

許されてはいなかったのだろうか?
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この物語はフィクションです。