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かろうじて踏みとどまったけれど、気持ちは二人、共犯者だった。
いや。俺はまだ、卑怯者だ。
俺が口火を切らなければならない。「ケージ君より俺を選んでほしい」と。
彼女に「そう」させるのならば、そのきっかけは、俺が責任を負うべきだろう。
真美がもし俺を好きで、ステディとして選ぶならば、ケージ君への「裏切り」は避けられない。
彼女にそんな選択をさせていいのか。「選ぶのは彼女自身」と涼しい顔をしていられるのか。
俺はそれほどのものか。
学園祭二日目だから学校に向かわなくてはならない。
玄関にふたりで出た。
そして彼女は市内観光ののち故郷に帰る。
それから?
しばしの別れなのか、永の別れなのか。
気持ちは確かめ合った…と思う。しかし踏ん切りがつかない。
情けないことだが、俺にはまだ時間が必要だと思う。
この祭りの間、時間に止まっていてほしいと思う。
その時。
まだ中にいるのに、真美がドアを再び閉めた。俺にしがみついてくる。
精一杯背伸びをして、俺の唇に、キスをした。
昨夜以上の快感が、「そこ」から全身を襲う。
思わず、痙攣したように、強く強く、彼女を抱きしめる。
小さく、強い声で。耳元で彼女は告げた。
「さわにい…これ、約束のキスよ…!」
彼女の責任で決断するという宣言。
思いっきり先を越されてしまった。
「なーに?」俺の顔を見て心配そうに聞く。
つくづく彼女は苦労する相手を選ぶ。
「ばか… 俺なんかに…」
「じゃあ二人ともばかだね…」
もう一度、ゆっくりと、やさしくキスをした。
朝の寒さもあまり感じなかったほど、夢見心地で学園祭に臨む。
「さわにい! 研究室に配達して!」
「さわにい、そっちのも運んで」
クラス中にからかわれている。
一夜でみんなにさわにいと呼ばれるようになった。
その呼び方をされるたび、昨夜と今朝の思い出がよみがえり、電気が走り、胸がうずく。
誰も見ていないところで、そっと唇を撫でてみた。
クラスの女の子たちにからかわれながら、俺は本当に浮かれていた。
中江真美と、気持ちがつながっている確信からだ。
学園祭は終わり、自治委員の方の慰労会があったが、俺の楽しそうな姿を、外池が見つめている。
なにか感づいているかもしれなかった。
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この物語はフィクションです。