♪目と目で通じ合う 微かに…ん、色っぽい~(「MUGO・ん…色っぽい」工藤静香、1988.8)って。

中島みゆきの詞なんですよ。

ギャップ半端ない。もう29年も頭から離れない。

~~~~~~~~~~~~

「握手ですか? いいですよ…」

柔らかく、張りのある手。俺の手を何度も握った、ひとの彼女の小さな手。

指先から、優しさと強さが流れ込む。

「あ…」

思わずため息が漏れ、自分の声に驚いた。

「なんて声出すんですか…」

もう一方の手が添えられ、俺の右手を、真美の両手が包み込む。

いとおしむように。そして。

しびれるような快感に全身が包まれ…

 

「真美の手が、好きだ」

踏み出した一言は、もう戻らない。

 

「わたしも… でも…」

真美は俺の手のひらにカリっと、「の」の字を書き始める。

ぞくぞくする。

「待って」

”でも”の続きを聞きたくなかった。「いわないで」

俺はベッドから滑り落ちた。真美の隣に滑り込んだ。

見つめあった。瞼が震える。

しかし、彼女は微かに首を振り、視線を落とす。

唇を避けたのだ。

そうだ。「そこ」は彼のものだ。

ブロックされて、はっきり自覚した。

俺は、真美が好きだ。

 

そして、手を握り合う。指を絡めあう。

「湖畔の研修で一緒に踊ったときから… この手を忘れられないよ…」

「うふぅ… じゃ、あの時あなたの手、握らなければよかったのかな…」

「なんて意地悪なことをいうんだ…」

思わず指に力がこもる。ぎゅうっと手を強く握る。

力を抜いた刹那、指を一本ずつ擦りあげる。

手首をそっと握り、やさしくトントンとタップする。

お互いの息遣いを感じながら、そのまま肘まで上がる。

両手を背中に回し、ギュッと抱きしめた。真美の腕も俺に絡み、二人は強く抱き合った。

背中を切なく指先でかき上げられ、ふるるっと、体が震えた。

俺も真美の背中をそうっと撫で上げると、深く甘いため息が漏れた。

二人とも目を開けていられない。

「真美が、好きだ」

「あっ、だめ…」

今、俺の腕の中の、女の子はそれでも「それ以上」を許さない。

目を閉じたままつぶやいた。

「いけない…ん…だけど…」

 

お互いに、ただ指先で、快感を与えあうことだけに夢中だった。

いつの間に眠ったのか全くわからなかった。

どちらからともなく目を覚ました。腕枕した腕がとても痛い。

目が合うと、くすくす笑いながら額をこつんと合わせる。

それでも、慎重に唇を合わせない二人は、まだ逃げ場を探しているのか。

「何もなかった」けれど、カラダの芯から感じあっていた。

~~~~~~~~~~~~

この物語はフィクションです。