小説再開です。小説とテツガク、私にとって通常運転はどっちだろう…?

タイトルは「OH、NO」と「NO NEW YORK」の混ぜ言葉です。

「NO. NEW YORK」はBOØWYの名曲ですな。うまくハマった。

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ただ、相談を受けたという気はしない。

俺は何もアドバイスをしていない。できない。

何も言ってないのに、そんな「俺しかいない」なんていわれちゃ…悪いじゃないか。

それに俺はそんな格好いい人間じゃない。

そうだ。

かっこ悪いのが本性だってこと。

言っておこうか。

外池にしか語っていなかった、別れた彼女のことを話してみることにした。

「実はね…」

 

職場を去る時に、彼女に別れ話をしたこと。

掛けた言葉と掛けられた言葉。

自分勝手に別れを決め、相手を傷つけたという思い。

でも、その思いに自分が切りつけられて、恐怖にとらわれていること。

外池の指摘で、この一行が加わった。

「俺は彼女のことを一人前と思っていず、だからこそ彼女に自分を批判されることを回避しようとした」

外池が俺の欠点を暴き立てたおかげで、最大の問題をクリアにできたのだ。

しかし、それを女性に語ることは、自分の汚点、黒い部分を知らせてしまうようで、つらい。

それでも、今日はそこまで語った。

 

真美は目を丸くして聞いていた。

嫌われればそれまで、むしろ危険なことがなくてよいかも。よい予防線になっただろう。

 

聞き終わって、ため息をつきながら。

「さわにい。ほんとに、ありがとうございます」

なんで? お礼??

「そこまで言ってくれるのは、私を一人前の人間扱いしてくれるからだと思う。そういう風に、嫌なことを話すのは勇気が言ったでしょ。うれしい」

……

なんかお腹がポカポカ暖かく感じる。

この旧都の寒空に、自分にとっての恥しい話で冷え切るはずだったのに。

「そっその、これ、ダメ男の話じゃないか。何がいいの」

「うっふふん、そこがいいの」

「はあ…そんなものか」

 

「ちょっと疲れちゃった」

「じゃじゃ、寝る用意しようか。シャワー? それともためる?」

言って真っ赤になってしまった。

お風呂に入る。

そうだ。当たり前だ。毎日のことだ。それにお互いなんの邪念もない。でも。

顔がまともに見られない。俺は真っ赤に違いない。

けど、赤いのは、ビールのせいだ。

バクバクバク。

ムネノコドウがあまりにも大きな音に聞こえて。真美にまで聞こえるんじゃないか。

「シャワーでいいです」

真美もうつむいたまま、のようだ。お互い表情がよくわからない。

 

水音が聞こえてきて。

テレビの音量を上げてみる。

ベッドで漫画を広げてみた。全然頭に入ってこない。あきらめてテレビをぼんやり眺めている。

しばらくしてシャワーは終わったらしく、静かになり、衣擦れの音ののち、真美はひょこっと出てきた。

「さわにい? ありがとう。どうぞ」

 

は―――。

お湯を頭から浴びて、ようやく少し落ち着いた。

そういえば、こんなシチュエーションはもう何年もなかったから、動揺したな。

バカ、俺。修行、修行。

何気なく過ごすんだ。

でも何のための修行だったかな。

少し歯車が狂い始めていた。

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この物語はフィクションです。