ブログが完全創作連載に入ったのに、意外に「いいね」いただけて…

ありがとうございます。ついつい更新ペース上がってしまいます。

では本文!

~~~~~~~~~~~~

コンチキチン。

コンチキチン。

俺の下宿は、四条烏丸が近い。

学校からは少し遠いので、友人は寄り付かないで静かな環境だが、祇園祭の期間中はとても賑やかだ。

何日か前から、街には鉾が組み上げられ、出入りはひどく邪魔になっている。

日中はお囃子の鉦や太鼓の音が鳴り響き、祭りが近くなることを実感させてくれている。

旧都の夏を埋め尽くす祭りがやってくる。

 

毎日の暑さに耐えながら前期のテストが終わり、残念ながら追試も受けた。

外池はすべて一発合格だ。さすがだ。

その勢いで、今年は自治会のブロック合宿研修に行くようだ。

俺の土産話ばかりじゃつまらなかったろう。楽しんでくればいい。

 

俺の今年の夏休みの始まりは、松山からのお客様方御一行様を迎えることだ。

「おっひさっしぶり~ さわにいぃぃ!」

元気な声に呼ばれて、思わず顔がほころんだ。

客は結局3人となった。

3人とも同じ高校出身で、真美のほか、マコト君とサヤカさん。この二人は同じ大学に通っているというので、付き合っているのかと思ったがそうではないようだ。

「ただ仲がいいんですよお。なんかずっといるよね。ケージ君も…」

あ、と言いながら付け加えた。「今日は来なかったね」

「ケージくんも誘ったんですけど… ぎりぎりまで迷ってたけど、やっぱり来ないって」

俺の表情を見てか、真美はすぐ明るい顔に切り替わる。

「よろしくお願いしますね! さわにい!」

 

「うわ…すごーい」

「人多すぎー」

「これが山鉾!? 動くの?」

「提灯や飾りがきれーい」

「あー子供が乗ってる…かわいいぃ」

ぴいひゃらや。

ぴいひゃらや。

宵山のまちに、囃子が鳴り続ける。

祭りの風情だ。

人でごった返す通りを4人で固まって歩くが、頭一つ飛び抜けている俺と違って、客人たちは埋もれてしまいがちだ。

見とれて見上げていたり、きょろきょろしているとはぐれてしまいそうだ…

 

真美がいない!

はぐれたか!

てか誰もいない!

「真美!?」

呼んでもお囃子で聴こえないだろう。

この人込みを後ろに進むのは至難の業だ。

しかしその中からにゅっと手が伸びてきて…

手首にピタッとあてられた。

「ひゃっ!」

「あーよかった、さわにい!」

真美の手であった。

 

「この店寄りたいって言ったのに、聴こえなかったんですね!」

「うん、聴こえない!」

「聞こえてるじゃん!」

「こんな近くだから聞こえてるんだよ! 電波でもキャッチしなきゃ」

実際、少し声を張り上げたくらいでは聴こえない。

 

「じゃー手をつなぎましょう!」

真美の汗ばんだ、小さな手が俺の手をギュッとつかむ。

ぴりりっ。「あっ」手のひらに電流が走る。

肉付きが良く柔らかい。あの研修のダンスを、一瞬で思い出す。

コンチキチン。

ぴいひゃらや。

手をつなぎながら歩くと、夜店や雑貨屋は灯篭のように怪しく輝く。

暗くなる街にお囃子がグルグル重なり、不思議空間へと変わっていく。

この時間が続けばいいのに。もうちょっとだけ――。

~~~~~~~~~~~~

この物語はフィクションです。