We watch the "The Hunchback of Notre Dame" of Shiki Theater Company!
劇団四季の『ノートルダムの鐘』を観劇。
ノートルダム大聖堂のフォルムで繰り広げられる物語に、街を知っている人は過ごした時間を懐かしみ、知らない人はまだ見ぬ風景に思いを馳せる。
劇団が誇る名優、芝清道のフロロー。
冒頭から深みのある美声で観客を異国の地へと引き込む。
ミサ仕立ての楽曲が作品全体を包み、クワイヤ(聖歌隊)が登場人物の心情やその葛藤を浮かび上がらせる。
何といっても最大の見せ場は、カジモドの登場場面だろう。
ここは何が起こったのかは一切語れない。
何も知らずに目撃してほしい。
舞台の奥から、一人の男性が歩いてきたら、その動きの全てに目を凝らしてほしい。
遠くの席ならば、ぜひオペラグラスを!
この日カジモドを演じた田中彰孝は私生活でも実直で、過日電車の中で泥酔した男性を介抱したが、殴られて1ヶ月半の重症を負ってしまった。
程なくして稽古に復帰したというが、深い正義感に満ち溢れたカジモドが完成していた。
ソロの「陽ざしの中へ」は、作品から全身の感覚が抜け出せなくなる程、ハマってしまう。
『ノートルダムの鐘』の成功は、カジモドの場面全てが究極の驚きや、彼への愛しさを呼び起こすからだと断言する。
劇団四季は食わず嫌いの方も多く、関係者は常に悩んでいるが、この作品については自信を持って多くの観客に薦めたい。
役者すべての歌唱力が抜群のクオリティーで作品を仕上げており、ブロードウェイに負けないメンバーも!
ダンスシーンは僅かだが、ヒロイン、
が魅せる劇中のジプシーダンスが印象的で一瞬のうちに充足感を与えてくれる。
ユゴーの原作『ノートルダム・ド・パリ』は、万人に知られている名作。
あらゆるジャンルで作品化されているが、私にとっては愛するバレリーナ、イザベル・ゲランがガルニエ宮でエトワールの幕を降ろした大切な作品。
ゲランのエスメラルダを見納める為にパリに飛び、引退公演の日は、ノートルダム大聖堂でお参りをして、ポンヌフを渡り、ルーブル美術館を歩き回りながら心を落ち着け、サントノレのジャン・ポール・エヴァンでチョコレートを飲んで、Repettoに立ち寄り、ガルニエ宮へ…
バレエの『ノートルダム・ド・パリ』は、名コリオグラファー、ローラン・プティの傑作。
冒頭のイブ・サンローランがデザインしたカラフルな衣装の群舞に圧倒され、瞬時に視覚が釘付けになる。
そして男前のエスメラルダ。
バレエもミュージカルも、タンバリンを操りながらの登場が鳥肌もの。
大助祭フロローは、殆どの作品で根っからの極悪人として描かれているが、ミュージカルでは愛する弟を失い、その忘れ形見としてカジモドを育てている事をプロローグに入れている。
故にエスメラルダへの恋慕が彼を狂わせていく様子が、手に取るよう分かる。
カジモドのとてつもない孤独と物悲しさ、そして純真な愛が彼の強さであることは、どの作品にも共通している。
名作とはいえ、初見をする方のために、もう物語を詳しく語らないでおこう。
クチコミで絶賛されているので、チケットが完売する前にぜひ劇場まで足を運ぶためのスケジュールを空けて欲しい。
既に横浜は連日満席を続けている!
そして、席を埋めた観客たちは、スタンディングオベーションで、熱狂と感激の景色を役者たちへ返している。
2018年4月所見(2016年記事を改訂)
舞踊ジャーナリスト 恭華