オランダに挑む日本人監督
今回は私のお勧めのコラムの紹介だ.
サッカーの監督に興味がある方や,日本サッカー界の小さな成長を見つけたい方などには,是非読んでもらいたい.
「オランダに挑む日本人監督」
オランダ人の子供達に囲まれながら、林雅人は勢い良くトロフィーを掲げた。
「3位決定戦で負けたのは残念ですけど、トロフィーの大きさは同じだから良しとしましょう!」
2月中旬、ドイツのドルトムント近郊でU11の室内サッカー大会が開催された。
ドルトムント、シャルケ、ヘルタ・ベルリン、ハンブルガーSVといったドイツの名門クラブだけでなく、オランダからフィテッセ、ユトレヒトなど計24クラブが参加した。
GKを含めて5人対5人でプレーする、ミニサッカー大会である。
その会場に、ひとりの日本人監督の姿があった。
林雅人、29歳。日体大を卒業した後、オランダに渡り、オランダサッカー協会の監督講習に通い続け、ついに昨年夏、1級免許を取得した人物だ。
講習に通う傍らフィテッセのU19でコーチとして働き、その仕事ぶりが評価されて、今季U11の監督に抜擢された。日本人がオランダのプロクラブで監督になるのは初めてのことだ。
「自分がU19のコーチをしているとき、ユースから6人がプロに昇格したんですよ。そのうち4人が、1軍のレギュラーになった。コーチが優秀だったということですかね(笑)」
今、林のU11のチームには、オランダ中が注目するタレントがいる。
ドレッドヘアをなびかせて、まるでダンスをするかのように相手の間をすり抜ける天才ドリブラー。
その少年の名前はイサ・カロン。
インテルやASモナコで活躍したモハメド・カロンのいとこだ。
「このままいったら、イサは間違いなくオランダを代表する選手になる。すでにフェイエノールトが獲得に動いているのが嫌なんですが(笑)。彼は気分屋だから、常に声をかけるようにしています」
イサと廊下ですれ違うと、「ゲンキ!」と日本語で挨拶してきた。
林に習ったのだという。
「こっちがオランダ語で挨拶してるんだから、向こうも日本語で答えるのが礼儀でしょう」というのが林の主張。
いずれイサはフィテッセから羽ばたく日が来るだろうが、日本人から指導を受けたことは一生忘れないはずだ。
林が評価されているのは、育成の能力だけではない。
先日、林は1軍のアデモス監督からの依頼で、ローダ戦のスカウティングを担当することになった。
林はローダの試合に足を運び、分析結果を監督の前で発表した。
すると、アデモス監督は嬉しそうにこう言ったという。
「素晴らしい分析だ!10点満点のうち、8点をあげよう。これからは1軍の戦術会議に自由に出席してくれ」
戦術好きのオランダ人を、日本人がうならせる──。
林にとって、これほど痛快な瞬間はなかっただろう。
ドルトムント近郊の大会で、林率いるフィテッセU11は1次リーグを突破し、2次リーグでは2位になって3位決定戦にまわった。
残念ながらビーレフェルトにPK戦で敗れたが、ドルトムントやニュルンベルクを蹴散らして4位になったことは、子供たちにとっても、監督にとっても大きな自信になったはずだ。
「今日は、ホントいい経験をしました。今はまだオランダに残っていろんなことを吸収するつもりですが、いつか日本のクラブで働きたい。育成をレベルアップさせることで、日本のサッカーは変わると思うから」
日本人がオランダのサッカーを学び、オランダの指導者界でもまれている。
オランダ流でも、日本流でもない、新たなスタイルが生み出されることを期待したい。
参考文献 Number 著=木崎伸也
優れた指導者がいないところには,優れた選手は育ちにくい事は間違いない.
また,今回取り上げられた林雅人さん以外にも世界で一流監督を目指す日本人はたくさん存在している.
そんな方達が,将来の日本サッカーの担い手になる事を期待したい.
セリエA 25節
セリエA 25節.
インテルは森本のいるカターニャと,中立地であるチェゼーナで対戦.
インテル 5-2 カターニャ
得点者はサムエル,ソラーリ,グロッソ,イブラヒモビッチ,クルス.
ディフェンスの選手もオフェンスの選手もみな入れての快勝はインテルの今年の調子のよさを表すものだと思う.
以前のインテルはFW陣に豪華メンバーをそろえながらも,安定感にかけ,爆発力だけのイメージがあった.
それに対して,今シーズンはシーズン序盤戦からイブラヒモビッチとクレスポの新加入2人がコンスタントに結果を残している.
そこにアドリアーノの復活が重なるから,インテリスタは笑いが止まらない.
そしてインテルには最高の控えであるクルスもいる.
彼の活躍に今シーズンも幾度となく助けられた.
そう,たとえば,Man of the matchをとったこの試合のように.
また,今シーズンのインテルの大きな特徴がディフェンスの選手の得点だ.
マテラッツィを初めとし,ブルディッソ,サムエル,グロッソとこのあたりのDFが大事な場面で点をとる.
勢いに乗ればインテルの爆発力はとまらない.
本職のディフェンスでもリーグきっての壁を築き上げている点も賞賛に値するだろう.
しかしながら,この試合の2失点の原因はコルドバのミスだ.
5点もとると目立たなくもなるが,安定したパフォーマンスを見せていてくれただけに少々残念だ.
それより何より今シーズンの快進撃を支えているのは,ヴィエラ,カンビアッソ,フィーゴ,スタンコビッチ,ダクール,サネッティ,ソラーリで形成される黄金の中だろう.
ここが幾度となくチャンスを演出し,最高のフィルター役をこなしている.
そんな中盤のヴィエラとカンビアッソが怪我,ダクールが出場停止となり,ファンを心配にさせた山場をなんなく乗り切った今年のインテルはやはり強い.
これでまた記録更新のリーグ戦17連勝である.
この勢いをとめられるチームが見当たらないのが,今シーズンのセリエAのもの足りないところだ.
しかしここまで連勝を続けると,夢の大台勝ち点100も現実味を帯びてきた.
世界中のインテリスタがそれぞれの夢を今年のインテルには抱いているだろう.
それだけ期待できるチームなのだから….
その他の結果は以下の通り.
アスコリ 0-0 リヴォルノ
エンポリ 0-2 フィオレンティーナ
カリアリ 0-2 ラツィオ・ローマ
パルマ 3-3 ウディネーゼ
ローマ 3-0 レッジーナ
ミラン 1-0 サンプドリア
シエナ 1-0 メッシーナ
チームを支える下部組織の存在
ゼロックス・スーパーカップ.
浦和を応援している身として,この話題に触れないわけにはいかない.
浦和 0-4 G大阪
結果として4失点の完封負け.
浦和自慢の攻撃陣は完全にシャットアウトされ,自慢の守備陣は崩壊した.
その試合内容も結果が示すとおり,終始ガンバペースで試合終了のホイッスルを聞くことになったのだから,昨年の浦和からしてみれば考えられなかった.
たしかにけが人は多かった.
昨季JリーグMVPの闘莉王に加え,代表クラスにまで成長した長谷部や相馬といった豪華メンバーがベンチ入りもせずスタンドから応援していた.
それでも内容はひど過ぎたように感じられた.
浦和サポーターからのブーイングの理由は,誰の目にも明らかで,選手たちもサポーターに何も言い返せないのが悔しかっただろう.
対照的にガンバは非常にいい戦いができていたと思う.
試合を見ている限り,ほぼ全員のコンディションがよかった.
浦和ディフェンスがクリアしたボールのほとんどをガンバが拾っていた印象を誰もが受けたことだろう.
攻め続ける事で,浦和に攻撃をさせなかった.
多くの攻撃はシュートで終わる事ができていたし,その運動量は浦和を凌駕していた.
そして今年もマグノアウベスの存在感は健在だ.
昨日はスーパーカップ初のハットトリックを記録した.
昨シーズンのようなスーパーゴールはなかったにせよ,こぼれ球を押し込める選手は嗅覚があると言われる.
一人で崩して一人でゴールを陥れるマグノアウベスが,昨日のようなゴールを積み重ねれば,もしかするとシーズン30ゴールを記録するかもしれない.
それが期待できる選手だということは多くのファンがご存知だと思う.
ユース上がりのSB安田理大も,大胆な攻め上がり,初先発とは思えない活躍を見せ,シーズン開幕のレギュラーをぐっと引き寄せた.
私にはガンバユースは非常によい選手を輩出する印象がある.
昨日活躍した安田や,日本期待の若手家長,オシムジャパン入りも果たした二川,ザルツブルグ入りを決めた宮本,ガラタサライで不動のレギュラーとして活躍する稲本もガンバユース出身だったと記憶している.
高校サッカーや,他チームからの補強を主にするチームが多い中,ガンバを支えているのは下部組織なのかもしれない.
このことは世界を沸かせるF.C.バルセロナにも言えることだ.
多くのチームの模範となるようなすばらしい下部組織をもつガンバに対し,見習うべきところが多いのが,昨季王者の浦和なのかもしれない….
下部組織の充実がJリーグの課題の一つだろう.
そういった意味では,小さいタイトルとはいえ,スーパーカップを浦和ではなくガンバが掲げた事は日本サッカー界にとってよかったのかもしれない.
個人の意見としては残念ではあるが.
そして,Jのどのチームもほしがったであろう阿部の活躍が見る事ができなかったのが一番残念だった.
天をも味方につけた勝負強さ
UEFAチャンピオンズリーグ.
そのシーズンのクラブ世界一をきめる大会といっても過言ではないこの大会の決勝トーナメントの火蓋が切っておとされた.
インテル 2-2 バレンシア
セリエAを独走するインテルと,リーガで調子を上げてきているバレンシアと言うbest16きっての好カードとなった.
我らがインテルは,ここ数年はチャンピオンズリーグでの対戦は恒例となったバレンシアとの対戦だったが,2失点を喫しての引き分けで試合を終えた.
結果から見ると第二戦をホームで戦える上に,アウェーゴールを2点も奪った形となったバレンシアが有利になった事はまちがいないだろう.
試合内容はマテラッツィの「運がなかった」の一言に尽きる.
前半はインテルが圧倒的にゲームを支配し,バレンシアに付け入る隙をあたえない.
まさに「攻撃は最大の防御」の状態であった.
特に中盤の4人の構成はすばらしく,それに加えサイドバックの積極的な攻撃参加でバレンシアを圧倒していた.
それでもイブラヒモビッチのシュートがポストをたたくなど,前半は内容のわりには,1点どまりで折り返すこととなった.
後半にはいると,インテルの運動量が落ちた事もあり,バレンシアが息を吹き返してくる.
それでもインテルの守備陣は集中力をかくことはなかったが,ビジャのスーパーゴールによりバレンシアは同点に追いつくことに成功した.
その後見事なパスワークからマイコンの1点を加えリードを奪ったインテルだが,天はバレンシアに味方をしているようだった.
後半終了間際,CKからのこぼれ球をバレンシアのシウバがスーパーボレー.
ボールは美しい軌道を描きインテルゴールに吸い込まれた.
試合を圧倒したのはインテルだったが,いい結果を得られたのはバレンシアであったことはたしかであり,バレンシアはここ一番での勝負強さをアウェーの地で見せ付けた.
それでも試合を支配されたインテルを相手に第二戦をホームでどう戦うかが鍵となりそうだ.
対するインテルも引き分けでは厳しくなった今,第二戦は勝利しかないと言っていいだろう.
第二戦が行われるバレンシアの地で,より魅力的な試合が展開されることが期待できそうだ.
更新再開のお知らせ
こんにちは.久しぶりの更新となります.
覚えてくれている方がいれば幸いです.
私が学生と言うこともあり,受験勉強に迫られておりました.
将来をきめるとても大切な時期なので,ブログは休止状態にありましたが,自分にとってこのブログはとても大切なものだと感じ始め,再び更新させていただくことにしました.
これからは「継続は力なり」をモットー頑張っていこうと思います.
以前のように毎日更新というわけにはおかないかもしれませんが,これからもよろしくお願いします.
黄金時代の到来を夢見て…。
レアル改革始まる・・・。
ここ3シーズンタイトルから見放されている“白い巨人”ことレアル・マドリー。
その原因の1つは、大きな権力をもつポストに居座っていたペレス会長にあることは間違いないでしょう。
今月の初めに行われた会長選挙でカルデロン新会長の就任が決まり改革の第一歩が踏み出されることになりました。
レアルは現在のところ、ジダンの引退が決まり、(剥奪された)セリエA優勝に大きく貢献したカンナバーロと、エメルソンの獲得に成功しています。
レアルはすでに伝統と言ってもいいくらい、長い間守備力の弱さが目立っていたので、今回の補強はほんとに効果の大きいものと言っていいと思います。
この2人が加入してから2シーズン連続優勝という輝かしい実績を残したユーベの事は多くの人が触れていると思うのであえて書く必要もないでしょう。
今回、レアル改革の目玉はここに挙げた2選手よりは、“優勝請負人”との呼び声高い元ユーベ監督のカペッロ監督といえます。
彼は現在チェルシーのモウリーニョ監督と並んで、世界で最も優秀な監督の1人と言っていいでしょう。
彼の就任こそが今回のレアル改革での最も大きな功績かもしれません。
彼が就任するだけで、優勝の2文字に大きく近づくことは間違いないでしょう。
これまでの経歴を見ても他の監督とは比べ物にならないほどの結果を残してきています。
過去に率いた4チーム全てでリーグ優勝を果たすという結果だけでもそのすごさが十分にわかりますね。
ミランでは5年間で4度のスクデット獲得(リーグ優勝)と1度のUEFAチャンピオンズカップ優勝をしました。
無敗優勝も成し遂げましたね。
レアルでも就任1年目でリーグ制覇を達成し、ローマには18年ぶりのリーグ優勝もたらしました。
ユーベでの活躍は言うまでもありませんが、就任してから2年連続優勝をはたしました。(この2年分の優勝は八百長疑惑で剥奪された)
過去15シーズンで8度のリーグ優勝という脅威の数字こそ“優勝請負人”たる由縁でしょう。
カペッロ率いるレアルが、黄金時代に突入したといわれるバルサをとめることができるかどうかに注目が集まりますね。
バルサの方も、テュラム、ザンブロッタと超一流選手を補強し磐石の体制を築こうとしています。
ほぼ完璧に近いバルサで、さらに補強を加える必要性があるとすればGKくらいでしょう。
おそらくレギュラーで使われるであろう新加入選手が入ったことで、昨年よりは完成度の面では低いチームとなっているかもしれませんが、そのポテンシャルの高さはチェルシーと並び、世界一といって間違いないでしょう。
バルサの最もおおきな損失はやはり、テン・カテの放出でしょう。
日本ではまったくと言っていいほど知名度のないテン・カテですが、バルサの戦術を支えたのは間違いなく彼であり、今回アヤックスの監督就任ということで助監督を辞めることになりました。
世界一の選手を抱え、世界一面白い集団で、リーガ・エスパニョーラ、チャンピオンズリーグを制して現在のりにのっているのがライカールト監督。
その右腕として計り知れないほどの貢献をしてきたテン・カテのいなくなったバルサをどう仕上げていくかで彼の本当の実力がためされます。
話がそれましたが、マンチェスター・ユナイテッドの正式な発表がまだなようですが、ファン・ニステルローイのレアル加入が決まったようですね。
現在間違いなく世界で5本の指に入るFWなだけに、彼の加入は大きいでしょう。
彼のような総合力にすぐれたタイプであればセリエAでも通用すると思われるだけに、リーガ・エスパニョーラへの移籍は少し残念ですが、彼の活躍に期待したいですね。
現在センタリングにあわせる技術はトレゼゲと並び世界一といわれるルートだけに、ベッカムが生きることは間違いないでしょう。
また、ペナルティーエリアの中で絶対的な影響力を発揮するということで、ロビーニョや、カッサーノとの相性は気になりますね。
ロナウドとの2トップとなれば、現在世界最高の2トップでしょう。
しかし相性を考えると同時起用は難しいかもしれません。
自分が監督であれば迷うことなく起用しますが(笑)
今後もレジェス、アシュリー・コールなどの獲得が噂されていますね。
カペッロのサッカーはつまらないと言われます。
それでもとても魅力的なチームなだけに、ついつい夢を見てしまいますね。
今年のリーガ・エスパニョーラの最有力優勝候補は間違い泣くバルサでしょう。
しかしもしかするとバルサの黄金時代をとめ、レアルの黄金時代が始まることになるのかもしれません。
ワールドカップを終えて
4年に1度のサッカーの祭典ワールドカップ。
2006年ドイツ大会はイタリアの優勝で幕を閉じましたね。
今大会は過去に例を見ないくらい強豪国が順当に勝ち進み、ベスト8が決まった時点では、ブラジル、イタリア、アルゼンチン、ドイツ、イングランド、フランスと数少ない優勝国の中のなんと6チームが残るというサッカーファンにとってはたまらない大会となったことでしょう。
今大会の波乱が最も起きたのはベスト4を決める4試合と言って間違いないでしょう。
イタリア対ウクライナだけはイタリアが順当な勝ち上がりを見せました。
しかし王者ブラジルが、予選リーグで韓国などに苦戦していたフランスに敗れ、イングランド史上最強とうたわれたイングランドは、エリクソン監督の下、非常につまらないサッカーをベースとしており、デコを欠いたポルトガルに土を付けられています。
そして今大会最も美しく、面白いサッカーを見せていたアルゼンチンが、批判が耐えなかったドイツに敗れ去っています。
現在は3トップを張るチームも多く、世界的に攻撃サッカーの時代といわれています。
ベスト8の国の中でも守備的な国はイタリア、フランス、ウクライナくらいでしょう。
伝統的な守備の国、イタリアでさえも、名将リッピは攻撃的なチームをうたってワールドカップに望んできました。(ふたを開けてみれば、他の国に比べ、多少守備的な面が多く見られた。)
エース、シェフチェンコあってのカウンターサッカーを展開するウクライナは今大会きっての守備的なチームでした。
ジダン、アンリと攻撃陣にタレントをそろえたフランスは守備的と言っても、他のチームに比べてであり、実際にはどちらにも偏らない総合的なチームと言っていいかもしれません。
準決勝ではイタリアがリッピの積極的な攻撃的な采配でドイツを下し、フランスはアンリのもらったPKにより決勝へとこまを進めましたね。
最後になってみれば、いくら攻撃サッカーの時代だと言われていても、守備的な2チームが勝ちあがる結果となりました。
「いいストライカーがいれば試合に勝てる。だがいいディフェンダーがいればタイトルがとれる」
というジョン・グレゴリーの言葉を実感するワールドカップとなりました。
もちろん両チームとも攻撃陣にタレントをそろえていることは間違いでなく、総合力で他のチームを勝っていたから決勝の地を踏むことができたことは言うまでもありません。
大会前から前評判の高かったイタリアと、優勝候補に挙げられる事のなかったフランスとの対戦はご存知の通りイタリアの勝利という形で幕を閉じました。
ジダンの退場は本当に印象的でした。
W杯の決勝が引退試合で、引退試合に退場しながら、優勝はできなかったもののMVPを獲得するという最高にかっこいいですね。
世界一を決める祭典で、一番活躍したとされる選手が現役を引退するのだから、サッカーというスポーツは不思議ですね。
もちろん、僕の中でのMVPはジダンではなかったと思っています。
ジダンは守備面での活躍がほとんど見られない上に、優勝もしておらず、7試合で2回もレッドカードをもらっており、3得点1アシストといっても、そのうちの2得点はPKによるもので、本当はPKをもらった人こそ評価を受けるべきだと考えるからです。
フランスであれば、守備面、攻撃面(2得点2アシスト)の両方で大車輪の活躍を見せたヴィエラこそが、MVPにふさわしいといえるでしょう。
そしてもっとふさわしい人物はイタリアのカンナバーロとブッフォンの2人と言っていいでしょう。
大会を通して2失点という脅威の数字を残したイタリアの守備を支えたのは、間違いなくこの2人です。
リッピ監督の機能美さえ感じさせる守備の戦術はもちろん賞賛に値します。
それを体現し、なおかつ目を見張るプレーを見せ続けた2人にはMVPをとってもらいたかったですね。
神がかり的なスーパーセーブをし続け、オウンゴールとPKによる失点しか許さなかったブッフォンと、その直前で世界最高のフィルター役となったカンナバーロこそMVPにふさわしいです。
ブッフォンは以前、
「フットボールとは極めてシンプルだ。俺がシュートを全て止めれば、チームが負ける事はないのだから」
という発言をしていましたが、思い出さずにはいられないプレーを今大会みせてくれました。
MVPは人の主観によって決められます。
世界最高峰のプレーヤーの引退がかかっていたとはいえ、そこは公平な判断をしてほしかったです。
大会のMVPは世界最高のプレーヤーに贈られる賞ではなく、世界最高のプレーをみせた人に贈られる賞であるのだから・・・。
逃げ勝つ時代の到来は許されない
逃げ勝つ時代の到来は許されない。
昨晩行われたW杯のアルゼンチン対ドイツの試合。
試合結果は1-1(PK2-4)でのドイツの勝利。
結果を見れば強豪国同士がすばらしい試合を展開したかのように思われる。
だが、実際の試合はそれとは程遠いものだった。
ドイツはこれまでの4試合を攻め勝って来た。
スーパーゴールも生まれ、自国開催ということもありベスト8に残ったチームの中で最も勢いのあるチームと言っても間違いないだろう。
「ドイツのサッカーはおもしろい。」
と思った人も少なくないだろう。
対するアルゼンチンは1試合目はペケルマン監督の弱気な采配が垣間見え、1点を守りに行く最悪な展開。
それでも何とか勝利をおさめ、2試合目以降は人が変わったような積極的な采配をみせ、世界を魅了するチームを作り上げてきた。
ブラジルの監督に「アルゼンチンサッカーに感銘をうけた」と言わしめるほどである。
リケルメ、アイマール、サビオラ、テベス、クレスポ、メッシと攻撃陣には癖の強い主役がそろい踏み。
この攻撃陣が魅力的な攻撃を展開し、とにかく攻め勝って来たのがアルゼンチンだった。
こんな2チームの戦いは意外な展開を見せることになる。
これまでの攻めきる姿勢がウソのように守りを固めるドイツ代表。
これに攻めあぐねながらも、攻撃の手を緩めず、攻め続けることでドイツに攻撃をする暇を与えないアルゼンチン。
前半は完全にこういった試合が展開された。
支配率がアルゼンチン65%、ドイツ35%という驚きの前半も特にチャンスシーンも生まれずに終わることとなった。
後半開始早々、リケルメのCKをアジャラがあわせて先制をしたのはアルゼンチン。
ここまで守り続けてきたドイツが攻撃を開始する。
ここからはそれなりに面白い試合が展開されると思ってまもなくアルゼンチンのペケルマン監督はW杯1試合目に戻ったかのような弱気な采配。
王様リケルメをピッチの外に追いやって守備を固める最悪の展開。
案の定後半35分に追いつかれ延長へ。
延長はそれなりの試合をした両チームですが均衡は破れずPK戦へ。
攻撃サッカーを売りとする両チームの試合は2人の小心者のおかげでくそ試合に。
決勝トーナメントで守り勝つことは至難の技であり、最後まで攻めきるチームだけが金色の宝物を手にしてきた過去を誰もが知っているはずなのに。
いつになってもW杯では逃げ勝つ時代の到来は許されない。
攻めて、攻めて、攻めて観客を魅了するチームこそが優勝を手にできるのである。
サッカーの祭典は最高のジンクスを持っているのである。
全てのサッカー選手が目指す黄金に輝くトロフィーは誰の手に掲げられることになるのであろうか。
コラム「試合を決めたリケルメの魔法」
W杯も予選リーグを全て終了し、折り返し地点を迎えていますね。
久々の更新となる今回はコラムの紹介となります。
今回のW杯の主役の1人であるリケルメについてのコラムです。
是非多くの人に読んでほしいと思います。
「試合を決めたリケルメの魔法」
今大会のアルゼンチンを、リケルメ抜きに語ることはできない。
この絶滅危惧種に属する古典的プレーメーカーは、広い視野と多彩なアイデアで、危険なパスを次々に送り出す。
その一方で運動量は少なく、守備も当てにはならない。
前監督のビエルサが、リケルメに見向きもしなかったのにはそんな理由がある。
だからこそ、現監督のペケルマンの決断は注目を集めた。
守備を免除する代わりに、攻撃のすべてをリケルメに託す。
それこそが、ペケルマンが採った戦術だと言ってもいい。
ある意味で、懐古主義的なこの戦術が、成功するか否か。
今大会の注目点のひとつである。
グループCの初戦、リケルメのリケルメたる所以は、早くも発揮された。
24分、左サイドのFKから、リケルメが鋭いボールをニアサイドに送ると、ボールはゴール前にこぼれ、これをクレスポが難なく押し込む。
コートジボワールの攻勢に、さしものアルゼンチンもタジタジになっていた時間帯での、それだけに貴重な先制点だった。
さらに、この試合最大の見せ場となる2点目は38分。
ドリブルで持ち上がったリケルメは、左に流れてきたM・ロドリゲスに一度パス。
そしてリターンパスを受けると、コンマ何秒というわずかな、それでいて決定的なタメを作り、右足でスルーパスを放った。
際どいタイミングで飛び出してきたサビオラは、ジャスト・オンサイド。
きれいにDFラインと入れ替わると、GKの鼻先でボールを突き、ゴールへと流し込んだ。
スルーパスとは、DFとDFの間、いわゆる“門”を通すパスのことだが、このパスを出したリケルメと、受けたサビオラの間に、相手選手は4人。
伝家の宝刀は、実にふたつの門をぶち抜いたのである。
前半を終えて、アルゼンチンが2対0でリード。
スコアほどに、実力にも、チャンスの数にも、差があったわけではない。
だが、限られたチャンスを決定機にまで仕上げるという点で、アルゼンチンが、いや、リケルメが一枚上手だった。
後半に入ると、アルゼンチンはこのまま試合を終わらせてしまえとばかり、自陣からゆっくりとショートパスを回し、時間を費やすことを優先した。
だが、ここにスキが生まれた。コートジボワールは高い位置からプレスを強め、怒涛の反撃に転じると、ついにワールドカップ初ゴールを奪う。
82分、右サイドを抜け出したB・コネのクロスは逆サイドへ流れたが、そのボールをディンダンが拾うと、そのままドリブルでゴールライン際まで持ち込み、グラウンダーで再びクロス。
これをドログバが左足できれいに合わせて2対1とした。
その後も猛攻を仕掛けるコートジボワール。
だが、必死の猛攻も、百戦錬磨の伝統国相手に、前半失った2点は大きすぎた。
アルゼンチンの出場14回、優勝2回に対し、コートジボワールは初出場。
歴史や伝統では到底及ばないが、志向するサッカーは、よりモダンなものであった。
マンツーマン・ディフェンスをベースに、攻撃ではリケルメに頼るクラシカルなサッカーを展開するアルゼンチンに対し、コートジボワールには、攻守両面にモダンな組織的戦術が採り入れられていた。
それでいて、ブラック・アフリカン特有の爆発的なスピードには、前回大会のセネガル以上のインパクトがあった。
しかし、その一方で、決定的に欠けていたものもある。
サイドからドリブルで仕掛けられる選手はいた。
決定力抜群のセンターフォワードもいた。
だが、これらの多彩な武器を最大限に生かし、しっかりと攻撃の道筋を整理してくれるパサーがいなかった。
勝敗の差は、伝統と新興の差でも、クラシカルとモダンの差でもない。
アルゼンチンにはリケルメがいた。
この試合に限っては、それこそが勝敗を分けた最大の要因である。
参考文献 Number 浅田真樹=文
守備に全く参加せず、攻撃の時も全力疾走をほぼ全く出さないそのプレースタイルは「1970年代の司令塔」と評されます。
時代錯誤な司令塔が大会のMVPになる可能性は決して低くありません。
そんな時が来た時世界は「時代は繰り返される」という言葉を発することになるでしょう。
世界一おもしろい集団が歓喜の渦につつまれる。
久々の更新となりますね。
今回書くのは昨日行われたチャンピオンズリーグの決勝についてです。
結果は皆さんがご存知のように2-1でのバルセロナの勝利という形になりました。
最高に面白いチームが通算2度目の優勝をきめました。
試合は前半開始早々、アンリに決定的なチャンスがめぐってきましたね。
エブレのクロスを完璧なトラップでディフェンスをかもったアンリがビクトール・バルデスとの1対1を落ち着いてシュート。
しかしこれはビクトール・バルデスのファインセーブに防がれました。
この後からは戦前から予想されていた通り、バルセロナのポゼッションサッカーをアーセナルがカウンターサッカーで迎え撃つという型にはまっていた感がありましたね。
前半17分には相手ゴールにむかって飛び出したエトーが、レーマンに倒され、これによりレーマンは一発レッド。
その後のボールをジュリーが押し込んでいただけに、審判がアドバンテージをとらなかったのは不思議でした。
このプレーで10人になったアーセナルですが、前半終盤にはシュミレーションで奪ったFKからキャンベルが押し込み先制します。
バルサにとってはまさしく最悪な展開といっていいでしょう。
この後のアーセナルはアンリを残し、あとの全員が守備に専念するという勝利にこだわるサッカーを見せます。
引いて守ったアーセナルを相手に、バルサも相当てこずっていました。
ロナウジーニョが中央でもって、エトーにパスを通すと、ワントラップでディフェンスを交わしたエトーがシュートを放ちますが、アルムニアにはじかれポストに当たったシーンもありましたね。
右から、ファン・ボメルとジュリーが幾度となくボールを放り込みますが、それでもアーセナルの守備を崩すことはできません。
逆にアーセナルもアンリが独力でプジョールとマルケスをかわし、チャンスを作りますが、追加点を奪うことはできません。
後半途中にはバルサのライカールト監督が動き、ラーションとベレッチを投入。
これがあたりましたね。
後半76分途中出場のラーションが値千金のスルーパスを通すとエトーがこれに反応し、確実に決めて同点とします。
これで守っているだけでは勝てなくなり、動き出したアーセナルのゴールをバルサの攻撃陣が再びおとしいれます。
ラーションのアシストでベレッチが追加点を加え2-1。
この後は危ないシーンもなくバルサがビックイヤーを掲げるホイッスルを聞くこととなりました。
ライカールトの采配が見事に当たりましたね。
途中出場の選手が試合を決めるという形での勝利でしたしよりうれしかったのではないでしょうか。
世界最高の選手を抱える、世界で最も面白いサッカーをするチームが、事実上の世界一のクラブになったわけです。
クライフが率いたドリームチームについに並んだわけです。
これから数年はバルサの黄金時代が続くことになるのかもしれません。
楽しみな限りです。