日本のスポーツ界に疑問符?
長時間練習し、その成果をだす。
そうではなく、短時間に集中して、長時間やった分の練習をおぎなう。
将来の日本のトレーニングはどちらに傾くのか?
もちろん長時間集中できればいいが、そうとはいかない。
だからこの議論が繰り返されてきました。
実はこれまでもスポーツ界でずっと議論され続けてきたこのことが、現在のプロ野球で実験が行われていると言っても過言ではないのです。
今年のカープのキャンプは、ブラウン新監督の方針で大きく様相が変わりました。
カープのキャンプといえば、昔から猛練習で有名です。
実際、朝から日が暮れるまでグラウンドにボールが飛びかい、選手たちは休む暇もなくそれを追いかけていました。
それはピッチャーも例外ではなく、例年ものすごい球数の投げ込みが要求され、去年はなんと2500球だったといいます。
それがどんな効果を生むのかはわかりません。
しかしキャンプは1カ月間で、そのあいだに休日もあることを考えれば、毎日100球を投げる計算となります。
ペナントレース中は、先発して100球を投げれば、中4日ないし5日休養してまた先発するのが現在の常識と考えていいだろう。
それを考えれば、毎日100球というのがいかに苛酷なことかがすぐに分かります。
それをブラウン監督は変えたのです。
とくに、ピッチャーの苛酷な投げ込みに対しては、
「それはピッチングとはいわない。何も考えずただ投げているだけだ」
といって、1人10分、約50球に制限したようです。
ここまでを聞けば、当たり前のことをやったように思えます。
日本のプロ野球の練習は、カープにかぎらず長時間すぎるとは、アメリカからやってくる選手や監督によくいわれることだそうです。
彼らは、長時間だらだらとやるよりも、集中して短時間でやったほうがいいと考えるのが常識であり、それ以外に選択肢を持たない。
実際、アメリカの練習法はそうで、チーム全体で朝から日が暮れるまで合同練習するというようなことはまずない。
それでは足りないと思った場合は、個人で練習すればよいという考えです。
なぜなら、選手はみな個人事業主のプロフェッショナルなのだからと言うこと。
きっと、ブラウン監督もそう考えたのでしょう。
ところが、就任4年目のファイターズのヒルマン監督は、ブラウン監督とまったく反対のことを打ち出してきました。
去年まではブラウン監督と同じように考えていたらしく、ファイターズの全体練習は昼すぎに終わっていました。
ところが、今年はそれが終わるのは午後3時すぎで、そのあとも主力の小笠原や坪井、稲葉らまでが夕方まで特打ちをしたというのです。
それに対するヒルマン監督の答えは以下の通りです。
「この国では多く練習し、投手は投げ込まなければならないということを学んだ」
つまり、これまでは、アメリカ流に短時間で集中して練習し、それで足りない分は選手個人の自主性にまかせるという方法をとってきました。
しかし日本でこれをしていたら野球にならないと気づいたといっているのです。
手取り足取り、ああしろこうしろといいながら、朝から日が暮れるまで練習させないとどうにもならないという事ととらえてもいいのでしょう。
これは日本がプロになるまでも長時間練習を喫する社会だからでしょう。
結果はどちらの監督に吉と出るか分からないが、どちらも日本人として考えさせられる話で、もしかしたら、今後の日本のスポーツ界が少しずつ変わっていくかもしれません。