福田総理になって、尻すぼみとなった教育再生会議。
昨年12月に第三次報告を出して区切りとしたが、メディアもこれまでほど取り上げることはなかった。
そもそも安倍総理の肝煎りで委員も選出されたわけで、いわば「安倍ジャパン」。
オシムジャパンと異なり、監督が辞任してしまったわけだから、メンバーのモチベーションの維持は難しい。
さて、では元気だった頃の教育再生会議はどうだったのか?
安倍ジャパンの爆発力が垣間見える資料がある。
中央教育審議会 大学分科会 委員懇談会 議事録・配布資料
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/gijiroku/001/07020511/007.htm
この後半に「教育再生会議における高等教育関連の発言」として議事要旨からの抜粋というものがある。
2007年1月29日の会議で使用されたものなので、初期の教育再生会議の記録が出ている。
基本的にこういった資料は専門的なものが多いので、正直読んで面白いものは少ない。
ましてや議事要旨などは正直眠くなるので、あまり読みたいものではない。
しかし、この議事要旨抜粋は思わず最後まで読みきらせる魅力に溢れている。
一部の発言を紹介すると、
渡邉委員(ワタミ社長)
「日本の教育が崩壊した原因は、競争原理が全く働いていない教育現場と、大学入試がゴールであって大学卒業後がゴールでない教育の実態である。率直に申し上げると、バウチャーを導入し大学入試を廃止すればこの国の教育はよくなると確信している。」
中嶋委員(国際教養大学長)
「日本の大学が悪かったのは、国公立大学法人化以前の教育公務員特例法が原因である。教授や助手として採用されたら辞めさせることができなかった。今もまだ国立大学の教員の5パーセントは教壇に立たせられない。淘汰が必要である。」
小野委員(日本学術振興会理事長)
「教育界の建前主義、隠蔽主義、国民の期待に本当に応えていない点に問題がある。大学の教育学部の改革が必要である。教育学部の教員の数は多い。これをバイオ等の定員に振り替えていくと大学は活性する余地がある。また、教育学部の教員が社会に目を閉ざし、昔ながらの論理等に縛られている。」
といった具合で、大学は言われたい放題である。
はっきり言って、全員がフォワード、ゴールゲッターのようである。
議事要旨抜粋とはいえ、ほとんどディフェンスの姿は見当たらない。
それが最も表れているのが、塾禁止の議論からの展開。
詳しい流れは、議事録本文 を読んでもらえればと思うが
塾禁止の流れが強まったところを事務局が牽制した場面からの話である。
__________________________________________
(事務局)(塾禁止の議論を受けて…)
入試をやめて、卒業試験にすれば塾はいらなくなるかもしれない。塾禁止が先ではない。
(中嶋委員)
第3分科会ではそれをやろうと私は思っている。
(野依座長)
今の日本の大学生が世界的に見てレベルがどうかも大事なこと。世界に負けている。
(中嶋委員)
昔は英語力も高かった。外国と比べなくても、昔の日本と比べても、英語力は落ちた。これで国際社会をリードできるか。
(渡邉委員)
大学受験を卒業に持って行くとか、ゴールを変えることによって塾のあり方は大きく変わる。塾禁止はそういう形で実現できるのではないか。
(野依座長)
大学と高校の信頼関係が大事。高校が書いた成績書が信頼できないから、もう一度テストすることもやっている。
(池田委員)
企業が変わり、大学が変われば、当然、高校、中学と下りていく。上から変える必要もあると思う。
(小宮山委員)
制度を変えたときにどうなるかとよくシミュレーションする必要がある。日本で大学入試をやめてどうなるか。結局勉強しなくなるだけ。教育改革は現状を良く見ながらやらないと間違える。
大学もまずやることは、入試をやめることではなく、卒業をきちんと認定していくこと。
(野依座長)
入学試験のあり方もいろいろとあると思う。これからワールドワイドな頭脳獲得合戦になった場合、全員試験する訳にいかない。アメリカの一流の大学院では試験はしていない。
(小宮山委員)
している。面接で厳しい試験をしている。
(野依座長)
中国などにはエージェントがあって、そこの推薦状で学生を取っている。
(小宮山委員)
MITなどは推薦状で来た学生をしばらく見て、駄目だと思うと、そこからの推薦は受け付けないとしている。チェック機能を働かせている。
_________________________________
かろうじて小宮山委員(東京大学総長)がディフェンスしているが
危うく塾禁止と一緒に大学入試も禁止されるところである。
正直、凡人には思いつかない発想だ。
教育再生会議は多々議論を巻き起こしたが、具現化への道は険しかった。
しかし、是非多くの人にこうした議論があったことを知ってもらったほうが良いと思う。
そのためには報告書ではなく、この議事要旨抜粋のような形のものを書籍化でもしてくれればと思う。
『教育再生会議 戦いの軌跡』とでも銘打って出せば、結構売れたりするんじゃないだろうか。