昨年も、この時期に発行されていた東洋経済の大学特集『本当に強い大学』


昨年のエントリでも書いたが、様々な切り口で各誌が大学特集を組んでいるなかでも

この東洋経済の特集は最も充実したものとなっている。

また付録としてついている大学四季報は、各大学の財務状況を把握する上では重宝する。


さて恒例のランキングについては、細かく見ていくと突っ込みたくもなるが、

まぁこれだけ数字を集めて、様々な角度で検証しているので、これ以上を要求するのは酷だろう。

各指標の基準を読み込んだ上で見ていけば、相応に納得もできる。


なので、もし大学のランキングが掲載されている本、雑誌でお勧めをするならば

この『本当に強い大学』か『大学ランキング』を推すだろう。



しかし褒めまくっていても面白くないので、あえて揚げ足を。



それはランキング・評価の一元化を、そろそろ止めてもいいんじゃないか、ということ。


個人的には嫌いなキーワードだが、とにかく個性を出せと大学は言われている。

しかし評価が一元的であると、その個性というものが埋没しやすい。


分かりやすい例として国際基督教大学の事例を見てみよう。


付録の「大学四季報」には各大学の財務状況を中心に掲載されており、

わかりやすく「収入」「健全性」「資金力」「教育投資」を指標化している。


さて国際基督教大学の教育投資の評価はBである。

(この項目はA+、A、A-、B+、Bの5段階)


大学業界に詳しい人には、言いたいことが分かってもらえると思う。

国際基督教大学は決して教育投資が少ない大学ではない。

学費も高いがそれ以上に教育投資をしていることで有名だ。にもかかわらず評価指標はB。

なぜこうしたことがおこるのか。


実は単純な話で、この教育投資の項目が

教育研究経費÷帰属収入という算出方法をとっているからだ。

国際基督教大学は少人数教育を重視しているので必然的に人件費の割合が高くなる。

その結果、教育研究経費の割合は相対的に低くなり、この計算式では最低の評価となった。

つまり少人数教育という個性は、ネガティブな要素として「教育投資」の項目に現れたといえる。


こうした違和感というものは、一つの基準に当てはめていけば、必ず生まれるものだろう。

そして、その点に東洋経済も気がついている。

だからこそアメリカの事例を引き合いにリベラルアーツの特集を組んでいる。



ひとつのランキングに国公私立、すべての大学が並ぶというのは、大きなインパクトがある。

(そして、きっと雑誌も売れる)

しかし東洋経済には、そろそろ次のステップに移って欲しい。

それは、分野別の評価軸の確立だ。


研究大学としての評価軸、総合大学としての評価軸、リベラルアーツとしての評価軸、

同様にビジネススクールの評価軸や法科大学院、会計大学院の評価軸もあって良い。


単純にCOEやGPの採択件数をまとめて組み込むのではなく、

研究大学であればCOEを、リベラルアーツであればGPを重視するというように

評価軸のウェイトの置き方をそれぞれで考えてみても良いのではないだろうか。


これだけの特集を組むことができるのだから、、と、つい期待してしまう。


追記:

今回の特集の冒頭で紹介している大学市場のデータ(P36,37)はよく話題に上るものだが、

2ページにわかりやすくまとまっているので、大学に関わる上では是非知っていてほしいものだ。