萩国際大学といえば、「あぁ」と思い出す人もいるだろう。
2005年に民事再生法の適用を申請した、あの大学である。
来春、その萩国際大学が山口福祉文化大学へと変わる。
その現在を、読売新聞「大学再編 大学再生」の特集で取り上げている。
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読売新聞 2007年2月1日
再出発する大学が、双方向の遠隔授業で教育の充実を図る。
渋谷から東急東横線で4駅目。学芸大学駅(東京都目黒区)近くのビルに、遠隔授業用の小さな講義室二つが準備されつつあった。
画面が映し出される先は、山口福祉文化大学(山口県萩市)。萩国際大学から今春、名前を変え、学部も、国際情報学部(定員300人)から、福祉を中心にしたライフデザイン学部(同140人)となる。
学部長予定者の大島侑(たすく)さん(71)は、社会福祉の分野で名前が知られた存在だ。山口県出身でもあり、白羽の矢が立った。福祉系大学は増加が続き、教員は奪い合いと言われる。大島さん自身、道都(北海道)、聖カタリナ女子(愛媛)、岡山県立、大妻女子(東京)の各大学で教授を務めてきた。
山口県内にも、福祉系の学部を持つ大学は複数存在する。萩は、最寄りの空港から車で1時間以上かかり、地の利が悪い。「名の通った先生ほど多忙。非常勤講師を中心にした遠隔授業で教育の質を高めたい」。これが新しい経営陣の判断だった。「いい先生を集めることが出来た」。理事長の村本章治さん(58)は胸をはる。
萩国際大は、吉田松陰の松下村塾跡に近い高台に1999年、山陰地方初の4年制私大として開学した。しかし、1度も定員を満たせないまま、2005年に民事再生法の適用を申請した。大幅な定員割れを留学生で埋めようとしたが、留学生が事件を起こし、地域の信頼をなくすという悪循環だった。
新たなスポンサーは、設計、建築、不動産事業などを展開する企業グループ「塩見ホールディングス」(本社・広島市)。村本さんは、ここから送り込まれた。授業料免除を乱発したかつての経営陣について、大手化繊メーカーの部長だった村本さんは「数さえ集まれば補助金に頼れるといった待ちの姿勢で、どうすれば学生が呼べるかに真剣ではなかった」と手厳しい。
昨年の新入生は3人。新しい大学も定員を満たすにはほど遠い。「30人くれば10倍。モノは考えよう」と文部科学省の担当者から励まされたほどだ。学生の募集活動は「ゼロからではなく、マイナスからの出発」と関係者は口をそろえる。
それでも、「妥協はできない。卒業できる見込みのない学生を入学させるわけにはいかない」(村本理事長)と推薦入試での調査書の数字にこだわる。児童養護施設出身者の入学枠といったユニークな選抜も検討。「明治維新胎動の地」にちなんだ「萩学」も売り物にしたいという。大島さんも「24時間稼働の大学に」と意欲的だ。
ただ、地元から学生を呼び込むにもハンデはある。萩市の人口は6万人に満たない。小さな町の小さな大学の行く末は、まだ定まらない。(中西茂)
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校名変更、学部の改変を行なっても、かなり厳しい状況であることは変わりない。
ただ、この記事で注目したのは、理事長が現状を包み隠さず話していることだ。
新入生が3人。普通は言いたくはないことだろう。
しかし、その現実を受け止めて、その上で今後のビジョンを語っている。
これから、いくつもの大学が潰れていくだろう。
ここ数年、なんとか踏ん張ってきた大学も、体力の限界がここ3年程度でくるのではないかと思う。
そうした環境下でも大学は増えている。
大学が新たなチャレンジをするのは構わない。
しかし、その際に学生を巻き添えにすることは、極力避けてもらいたい。
せめて、その判断を受験生ができる環境は作るべきだろう。
学生数を「非公表」としている大学が、まだある。
定員割れをしていれば、公表したくない気持ちはわかるが
補助金をもらっている教育機関として、そこまでの情報公開は必要ではないだろうか。
そういう点で、今回の記事で少しだけ山口福祉文化大学に好感を抱いた。
(とはいえ生き残りがかなり厳しいことに変わりはない)