female and malesex 1992  | “Mind Resolve” ~ この国の人間の心が どこまでも晴れわたる空のように澄みきる日は もう訪れないのだろうか‥
    赤い魚と白い鳥  ~ female and malesex 
 
 
 
 
 すこしだけお腹をすかせた空を行く白い鳥が、次の島をめざし、
その生涯で七つめの海を渡っていました。
 彼がそれほど世間を知らぬことをよいことに、
海に住む赤い魚が水面に頭を出して、
「私をあなたのその嘴に挟んで、ほんのひと時だけこの空を飛んでくれたら、
私より、もっと美味しい魚の群の住む海を教えてあげましょう」
と云いました。
 『疑い』という言葉すら知らない白い鳥は、欲をかいてその海を想像し、
誘惑という空をぐるりとまわると、彼女の鱗が剥がれないように、
上手にそっと、その身体を掬いあげました。
 こうして赤い魚は、それまでいつも泳いで暮らしていた海の上を、
彼の翼によって飛ぶことができました。
 その空は海の中とは比べものにならないほど、涼しく壮快で、
彼女は今までにない解放感に満たされました。
 陽の光に照らされ、時には黄金色に、時にはオレンジ色に、キラキラと輝く彼女の鱗は、
白い鳥をうっとりさせました。
 彼は、いつでも空腹を満たすことができましたが、
そんな赤い魚をいとおしく感じ、また彼女との約束を信じ、
決してその嘴にある赤い魚を食べようとはしませんでした。
 しばらく飛んでいるうちに、赤い魚の身体はすっかり渇いてきて、
とても苦しくなってしまいました。
 鰓が貼りつき、尾鰭がしきりに捥いていました。
 彼は、そんな彼女の姿を見て、二つのことが心配になりました。
そしてその良心と欲望のもとに、自分の翼の付根に力を入れると、
一直線に水面まで降りて行きました。
 こうして、赤い魚は再び海へ戻ることができました。
 彼女はとても苦しい思いをしましたが、生まれて初めて空を飛び、
その広い海を見下ろしたことを心から喜びながら、
気持ち良く深いところまで泳いで行ってしまいました。
それを知った白い鳥は、慌てて海へ飛び込みました。
 が、瞬間、欲望だけに囚われ、己が鳥であることを見失ってしまったために、
彼はとうとう羽をすべて濡らしてしまい、海の中で、それはそれは苦しい思いをしました。
 間もなくすると、白い鳥は水面に浮かび上り、翼や首をバタバタさせていましたが、
やがて疲れ果て、結局、行く末も知れず、ただただ潮の流れに身を任せる破目になりました。
 そんなとき彼は、ふと思い付いたように息を止め、海の中を覗いてみました。
 潮がとても目に染みましたが、
そこには今までに見たことのない世界がありました。
 
 
                                 fin
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 なお、この内容も、2002年2月に出版された書籍『BAD LIFE 』の中で、
既に公開されているのでパクっても無駄・・・・・花咲か爺さんの隣に住むヨクバリジイサンが、
泉の畔でいくら錆びた鉄斧を水の中へ投げ入れても、
そこからは金のエンゼルも銀のエンゼルも出てこない。
 モリナガ・グリコ事件の狐目の男は、あなたの知らない処で笑っている。
 そして、姓名判断の霊星子先生は云う、
「あなたの未来は、まだ私のモノ・・・・」