つい3日前、2014年のハリウッド版ゴジラの続編の予告編が公開されました。前回の映画からしてゴジラそのものの恐怖を描くのかと思ったら、中盤から別の怪獣が出てきて、最終的にモンスターバトルとしてしまったのが観る側にとっては評価の分かれるところでしょう。今回はさらにさらに多数の怪獣を登場させて、東宝が昔やってきたようなシリーズもののような展開のスぺクタル映画に仕立てているそうです。まあVFX満載で200憶円以上の製作費をかけた超大作とあれば見に行かざるを得ないのが僕の性ではありますが…
さて2016年に公開された日本のゴジラことシン・ゴジラは劇場でも見ているのですが、その当時はストーリーの半分以上を占める会議のシーンの連続に飽きてしまって今一つ感動することができませんでした。ところが先日ふと思い立ってDVDで見返してみたら、なかなかどうしてこれはゴジラが今の日本に現れたらどういいうことになるかを極めてリアルに描いた作品だと認識を新たにしました。日本のゴジラでは1954年の初代ゴジラが一番ゴジラの恐怖を描いていると僕は思ってきたけど、シン・ゴジラはそれ以上にリアルに怖い存在として描かれていて良かったです。2年前に劇場公開されて、1年前にはTVでも放送されているので、ゴジラファンは当然見ているものとして以下はネタばれ満載で話を続けます。
庵野秀明が設定したゴジラのもっとも特筆すべき点は、ゴジラが東京湾から上陸する当たって、海で生活するために必要だったひれの付いた第一形態から、多摩川河口を遡上して上陸する時には足の付いた第二形態へと姿を変え、地上を歩行ししていくうちによりしっかりととした足が形成され直立歩行が可能が可能な第三形態へと陸上の生物として進化し、いったん海に戻った後鎌倉に再上陸する際には第三形態からさらに2倍の身体に進化した第四形態へと次々に姿を変えることです。そしてこの第四形態のゴジラは足は岩山のようにがっしりとして太いですが、上半身にいくに従って細くなり、顔がこれまでのゴジラより小さめになっているので下から見上げると遠近法で体高がより大きく見えます。そして尻尾は異常に伸びていて体高の2倍以上ありますが、自在にくねらせながら行く手の街を壊しながら行く様は圧巻です。体表は固く黒い皮膚で覆われているのは従来の踏襲ですが、皮膚に刻まれた無数のひだは体内に抱える原子炉を示すように燃えるような赤で染められて、生命感にあふれています。さらによく観察すると、長い尻尾の先端はまるでエイリアンのように無数の牙の付いた口のようにも見えます。腕はほとんど使わないので恐竜のように退化して細くなっています。その結果今までのゴジラの中でも全体のプロポーションが最も整っていて迫力があるように僕には思えました。
さてストーリーはこの無敵のゴジラに対して想定外の災害として、政治家、官僚、自衛隊が一致団結すべく次々と会議を開きながら対応していくといういかにも現代日本らしい描写で淡々と進みます。しかし膨大な情報を一気に観客に流すために、登場人物のみんなが相当な早口でしゃべるのでついていくのが大変です。僕が劇場ではあまり感動しなかったのはこのせいです。しかしDVDで落ち着いて観ると、ハリウッドの映画ではありがちなヒーローと悪役との対立とか、愛しい家族との別れといった個々の人間ドラマは全く無く、ゴジラに巻き込まれた人間全ての群像形として描いていく様は、まるで昭和の猛烈に働く日本のサラリーマンを風刺しているかのようで痛快でした。そしてゴジラに蹂躙されがれきの残骸が残された街はまさに東日本大震災の被災現場のようでした。そして住処を奪われた人々が体育館等に避難し、自衛隊から炊き出しのサービスを受けているシーンは日本人としては他人事とは思えないものでした。
さて人類の叡智を超えた無敵のゴジラをどうやって倒したかは、ここまでお付き合い頂いた皆さまご自身でご確認下さい。今までのゴジラ映画で登場したような荒唐無稽な兵器は登場せず、あくまで今ある技術だけで対応しているところがリアルです。