AIIBはインフラ模倣銀行だ ー見切りつけた習政権 | にゃんころりんのらくがき

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AIIBはインフラ模倣銀行だ 見切りつけた習政権、

人民元を押し付け

2017.6.17 08:09

 

 中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)の正体はアジアインフラ模倣(Imitation)銀行である。北京は加盟国・地域数でアジア開発銀行(ADB)を上回ると喧伝するのだが、自力でドル資金を調達、融資できず、ADBや世界銀行のプロジェクトの背に乗って銀行を装っている。元締・中国の外貨準備は減り続け、対外借金がなければ底をつく。ドル本位のAIIBに限界を見て取った習近平政権はユーラシアのインフラ整備構想「一帯一路」の決済通貨を人民元にしようともくろむ。

 

 韓国・済州島でのAIIB第2回年次総会会場では韓国企業などが最先端の情報技術(IT)インフラ設備の売り込みを競っているが、AIIB目当てでは「とらぬたぬきの皮算用」同然だ。ドル建て金融のAIIBの信用の源泉は元締・中国の外貨準備で、残高は3兆ドル余りだが、帳簿上だけだ。海外からの対中投資や融資は中国にとって負債だが、当局はその外貨を強制的に買い上げて、貿易黒字分と合わせて外準に組み込む。外貨の大半が民間の手元にある日本など先進国とは仕組みが違う。

 

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 グラフを見よう。外準は3年前をピークに急減している。対照的に負債は急増し、昨年末には外準の1・5倍以上だ。外国の投資家や企業が中国から資金を一斉に引き揚げると、外準は底をつくだろう。

 

 中国外準を見せ金にして昨年初めに開業したAIIBには世界最大の債権国日本とドルの本家米国が参加を見送った。当然のように国際金融市場はそっぽを向く。米欧の信用格付け機関はAIIBの格付けを拒否するので、AIIBはドル建て債券発行ができない。

 

 AIIBはやむなくADBや世銀との協調融資で当座をしのぐ。5月末時点の融資額は授権資本金1千億ドル(約11兆1千億円)に対し21億ドル余りにすぎない。加盟国の多くは割にあわないことを恐れ、当初約束した出資金の払い込みを渋る。

 

 習近平国家主席は5月中旬、北京で開いた一帯一路の国際会議で、人民元資金、7800億元(約12兆8千億円)をインフラ整備用にポンと出すと表明した。国際通貨としての信用力が貧弱な人民元でも不自由しない企業は中国の国有企業に限られるので、韓国や欧米企業は受注で二の足を踏むだろう。借り手国は人民元の返済原資確保のために、対中貿易に縛りつけられる。AIIBに見切りをつけた習政権は中国による中国企業のためのプロジェクトを周辺国に押し付けるだろう。(産経新聞編集委員 田村秀男)

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【AIIB年次総会】
交錯する各国の思惑 「くず債券」扱いのまま、

信用獲得へ日米参加が必須

 

 中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)を舞台に関係国や周辺国の“思惑”が交錯している。

 「日本の記者は(AIIBに)関心が高いね。どうして政府代表は来なかったのかな」。会場で名刺交換したAIIB中国人幹部は記者にこう畳み掛けた。

 

 関係筋によると日本政府は年次総会の「招待状」を受け取っていたが政府代表を派遣せず、慎重姿勢を貫いた。一方、「中国側はAIIBに日米を引き込まなければ立ち行かない」(国際金融筋)のが実情だ。

 

 インフラ建設で1件当たり数千億円の投融資を行うには国際金融市場で債券を発行し、民間資金も調達する必要がある。だが、AIIBは債券の「格付け」がなおも得られず、「ジャンク(くず)債券」扱いのまま。高金利を示さないと市場で資金調達できない。

 

 17日の会見で、金立群総裁は年内の格付け取得に自信を示したが、最大の懸念は格付けの良しあしだ。

 

 最大の出資国である中国は米格付け会社のムーディーズ・インベスターズ・サービスに追い込まれている。中国の国債格付けは先月、1989年の「天安門事件」以来、28年ぶりに格下げされた。債務負担増が理由で、中国政府に焦燥感が広がった。AIIBが得る格付けが「中国」を超えることは、不可能だ。

 

 国際金融筋は、「信用力の高い日米が参加して初めて、アジア開発銀行(ADB)や世銀のような最上位の格付けが得られる上、ODA(政府開発援助)の長年にわたる実績を使わなければ途上国支援は“絵に描いた餅”」と指摘した。

 

 北京のAIIB本部の人員は日本なら地銀にも及ばぬ100人ほどの陣容。ADBが職員数千人で融資審査を独自に行うのとは対照的だ。しかも中国側は、鳩山由紀夫元首相をAIIBの顧問役に就任させたことが“逆効果”になっていることに気づいていない。

 

 年次総会を通じて際立ったのがインドの交渉術の巧みさ。AIIBが金融面で支援する中国主導のシルクロード経済圏構想「一帯一路」の国際会議が先月、北京で行われたが、インドは安全保障上への懸念から政府代表の派遣を拒んだ。

 

 メンツを失ったにもかかわらず、AIIBは来年の年次総会をインドのムンバイで開くと決め、インドの基金向けに165億円の初の投資案件も承認した。地政学的にインドの協力が欠かせないと、譲歩した。

 

 対中関係悪化が続韓国の文在寅大統領は16日の演説で、「(朝鮮半島の)南北が鉄道でつながるとき新たな陸上・海上シルクロードが完成する」と強調。協力姿勢もみせながらAIIBを利用し、北を巻き込んでユーラシア大陸に陸路からも“直結”するとの政治的な野望をにじませた。

 (済州島 河崎真澄)

 

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苦境の中国主導AIIBに日本主導のADBが救いの手

 

2017.05.19

 

 鳴り物入りでスタートしたAIIB(アジアインフラ投資銀行)が早くもコケ、日米中心のADB(アジア開発銀行)の存在感が増している。AIIBは加盟国数こそADBを上回ったものの、実際に払い込まれた出資金は定款上の資本金の7%にも満たない。単独融資はほとんどなく、多くはADB融資に相乗りしただけだ。産経新聞特別記者の田村秀男氏がレポートする。

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 苦境に立つAIIBに救いの手を差し伸べる国際機関がある。他ならぬADBである。実は、財務官上がりの中尾武彦ADB総裁は財務官僚時代から親中派として省内で知られる

 2014年前半に習近平政権がAIIB創立に向け日米などに工作を始めたとき、中尾総裁は拒否反応を示す米国とは対照的に理解を示した。理由はアジアのインフラ資金需要が旺盛で、ADB単独では間に合わないというものだ。中国はインドと並ぶADBからの大借り入れ国である。資金需要に応えるというなら、まず中国にADBへ全面返済させるのがスジのはずだが、中尾氏は「問題ない」と断じた。

 中尾氏はアジアの資金需要について、2009年の試算で8兆ドルに上ると言った。2017年3月には総額26兆ドル、毎年1.7兆ドルに上ると大きくかさ上げしたが、実需とはかけ離れた誇大妄想値に近い。アジア各国がインフラ整備したくても、実行は返済条件次第だ。

 そもそも発展途上国全体の国際市場での証券発行は残高でみても2兆ドル程度である。それに近い規模の資金需要に国際金融市場が応じられるはずはない。中尾氏らはそんな破天荒な予測をAIIB肯定の材料に使っている。

 

 一帯一路、AIIBそしてSDR通貨人民元のいずれも、「中華経済圏」という名の習政権のアジアの陸海制覇戦略そのものだ。インフラ整備は中国に直結する軍事転用可能な高速道路、鉄道、空港、港湾を意味する。習政権はインフラ整備をミャンマーの少数民族に提示し、少数民族を民主化政府から離反させ、自国の影響下に組み込もうとする。地政学的膨張は南シナ海に限らないのだ。

 毛沢東肖像付き紙幣は国際金融市場で信用されなくても、中国のおびただしいモノとヒトがアジアに浸透すれば、普及して行く。ADBが日本の資金などを使って整備を進めたメコン川流域には中国人と中国企業が進出し、環境は破壊され、下流域は洪水に見舞われている。

 安倍晋三政権はAIIBや人民元問題が見かけ上小さくなったからと言って、親中派の官僚にまかせてはならない。トランプ政権とはしっかりと安全保障上の視点を確認すべきだ。


 【PROFILE】たむら・ひでお/1946年高知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。日経新聞を経て、産経新聞記者となる。現在、編集委員と論説委員を兼務。『人民元の正体 中国主導「アジアインフラ投資銀行」の行末』(マガジンランド)、『人民元・ドル・円』(岩波新書)、『財務省「オオカミ少年」論』(産経新聞出版)ほか著書多数。

 ※SAPIO2017年6月号

 

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インフラ融資、AIIBと協力も ADB年次総会開幕で中尾総裁
2017.5.5 06:05     
          アジア開発銀行の年次総会開幕に合わせ、記者会見する中尾武彦総裁=4日、横浜市

アジア開発銀行の年次総会開幕に合わせ、記者会見する中尾武彦総裁=4日、横浜市

 日米が主導するアジア開発銀行(ADB)の第50回年次総会が4日、横浜市で開幕した。記者会見した中尾武彦総裁は中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)に対し、人員などADBの優位性を強調した上で、「インフラ融資にはたくさんの資金がいり(両者は)協力する必要がある」と述べた。感染症や高齢化への対応を目的に、国際協力機構(JICA)と保健分野で包括提携することも発表した。

 中尾総裁はADBのスタッフが約3000人であるのに対し、AIIBは約100人で、現在は融資額も10分の1程度に過ぎないことを指摘。「ADBは大きなポテンシャルと長い経験がある」とアピールした。

 推計では、アジアの2016~30年のインフラ需要は合計26兆ドル(約2900兆円)に上る。ADBは教育、保健分野などにも融資を行うが、AIIBはインフラが中心で、中尾総裁は「ライバルになる必要はない。(インフラの)需要はあるし、それぞれ強みが出てくる」と説明した。

 一方、鳥インフルエンザや重症急性呼吸器症候群(SARS)など世界的大流行(パンデミック)の脅威が増しているうえ、各国とも高齢化で医療サービスなどの提供が課題になっている。対応を誤れば、今後のアジア地域の発展のリスクとなりかねない。そこでJICAと保健分野で連携を強化し、情報共有や人材交流などを実施。衛生状態の改善に効果がある上下水道などのインフラ整備でも協調融資を行う。