「あんまりしつこいと灰にするわよ?」
にっこり微笑むと、二人は返事の代わりに無言でこくこくとうなずき、機敏な動きでイスに戻る。その顔色が悪くなったように見えるのはアズミの気のせいではないだろう。
「で、何の話だったかしら?」
「今回のイタズラの主犯が誰かという話だ」
ヨシナリが半ば呆れたように応えると、アズミはそうだったわね、と手を叩く。笑顔のままだったが、先ほどまでの冷たい空気は和らいでいた。
「結局のところ、あんたたちはあたしを犯人にしたいようだけど、あたしとしては、犯人が名乗り出てるのにそれを否定するのはどうかと思うのよ」
「俺たちはアズミを犯人にしたいんじゃなくて、アズミを含めて犯人だって言ってるんであって――」
「犯人なんてもういいじゃない、誰でも」
わずらわしいとばかりに顔の前で手を振れば、ヨシナリが口を挟んだ。
「誰でもいいなら、認めればいい。責任転嫁(あそび)も大概にしておけ」
「……つまらないわねー」
視線を床に投げたまま、アズミは憮然とする。
「なんでこんなの作ったのかしら、あたし。過去に戻れるなら、絶対こんなの造らせたりしないのに」
「どうせ平行線で終わるのだわ」
キクネはひとりごちたつもりだったが、アズミは聞き逃さない。
「どういう意味よ」
「そうでしょう? だってアズミとアズミが話し合ったとして、どっちも譲らないでしょ
う。そのまま攻撃魔法合戦に突入。二人を中心に巨大クレーターの出来上がり。それでも両者一歩も譲らず交渉決裂。疲労困ぱいによる一時休戦中にどうでもよくなって、周囲の損害をよそにあっけらかんと終幕するのだわ」
キクネが息継ぎもそこそこにまくし立てると、アズミ以外の全員が納得顔でうなずき、当の本人はきょとんとする。
「あたしが勝つに決まってるじゃないの」
その自信はどこからくるんだろう。全員が思ったが口には出さなかった。