2017-02-13 23:12:13

イラク  シーア派指導者サドル師主導のデモで首都混乱 “IS後”を睨んだ政治闘争活発化

テーマ:イラク問題

サドル師

(サドル師はアメリカのイスラエル大使館問題に関しても「エルサレムに米国大使館を転送することはイスラムに対する戦争のかつてない明白な公開と宣言だろう」との声明を出しているとか。【http://blog.goo.ne.jp/aya-fs710/e/2a9768cf3c06025f99cfe2b4db5e8956より】)

【モスル防御体制を強化するISだが・・・】
昨日ブログでシリア情勢を取り上げたので、今日はイラク・・・という訳でもありませんが。

イラクではモスル東部がISから奪還され、戦いの場は西部に移っています。

そんなモスルでのISの抵抗準備に関する記事。ちょっと面白いと言うと不謹慎ですが、隣接する住民の家々の壁に穴をあけて(もちろん強制)、IS戦闘員が家の中を通って移動できるようにするというもので、しかも穴をあける費用を住民に払わせているとか。

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IS、モスルで家に穴開け労賃要求 住民「踏んだり蹴ったり」と怒り****
イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」の牙城となっているイラク第2の都市モスル西部で、ISの戦闘員が移動経路を確保するため民家に勝手に穴を開けている上、その労賃としてその家の持ち主に金銭を要求していると、複数の地元住民が5日証言した。

政府部隊がモスル東部をISから解放する中、戦闘員は資金不足に陥っているもようだ。
請求額はわずか7000イラク・ディナール(約600円)だが、まさに踏んだり蹴ったりだと住民らはこぼしている。

モスル西部では、政府部隊による奪還作戦に備えてIS戦闘員が防御体制を強化している。

「ペプシ(Pepsi)通り」として知られる地区の住民、アブ・アサド(Abu Asaad)さんは「ダーイシュ(Daesh、ISのアラビア語名の略称)は有無を言わせず私たちの家の壁に穴を開けている」「ただ家を壊しただけの作業員に7000ディナールを支払うよう住民に強要している」と語った。
アサドさんによると、他にも数百人が同様の被害に遭っているという。

IS戦闘員らは住民に対して、徴収したお金は治安部隊からのモスル西部防衛に充てると説明したという。
 
モスルはISがイラク国内に持つ最後の主要拠点で、先月に東部を政府部隊が完全制圧。昨年10月17日に開始した大規模な奪還作戦で重要な局面の一つが終了していた。
 
ISによる報復を恐れてフルネームを明かさなかったアサドさんは「やつらは私たちに、穴の開いた家に残るか、それとも家を去るかを選ぶよう迫った」と話した。
 
モスル西部では大半の世帯に電気がまったく、あるいはほとんど供給されておらず、冬場は通常、気温が氷点下まで下がる。
 
隣接する民家に数珠つなぎに開けられた穴は、地上のトンネルのような役割を果たす。ISの戦闘員はそれを使うことで、イラク政府部隊や米国主導の有志連合による空爆の際に身を守りながら移動できる。【2月6日 AFP】
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ISは徹底抗戦の構えのようですが、流れ的にはモスル制圧は時間の問題でしょう。
米国主導の有志連合によるIS掃討作戦を率いる米軍のタウンゼンド中将は8日、数日以内に西部を奪還するための作戦を開始すると宣言しています。


【バグダッド「グリーンゾーン」 サドル師主導のデモで死傷者】
一方で、イラク国内の政情は安定しないようです。

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イラク首都のデモで7人死亡、「グリーンゾーン」にロケット弾****
イラクの首都バグダッドで11日、政府施設や各国大使館などがある旧米軍管轄区域「グリーンゾーン(Green Zone)」に行こうとしたデモ隊と警察が衝突して7人が死亡し、その数時間後にグリーンゾーンにロケット弾が打ち込まれた。デモとロケット弾発射の関連は分かっていない。
 
イラクの治安作戦を統括する統合作戦軍は、数発のカチューシャタイプのロケット弾がバグダッド市内のバラディヤトとパレスチナ通りから発射され、グリーンゾーン内に着弾したと発表したが、誰が発射したのかは明らかにしていない。

警察と内務省の当局者もAFPに対し、数発のロケット弾がグリーンゾーンに発射されたことを確認したが、発射の目的や死傷者の有無は確認できていないとしている。
 
グリーンゾーンに住むマイスーン・ダマルジ議員はロケット弾6~7発が着弾したようだとAFPに語った。グリーンゾーンに住む外交官はAFPに爆発音が4回聞こえたと話した。バグダッド全域で警備が強化され、数本の主な道路が通行止めになった。
 
バグダッドでは同日、グリーンゾーンにある選挙管理委員会の刷新などを要求するデモが行われていた。参加者の大半はイスラム教シーア派指導者、ムクタダ・サドル師の支持者でデモは当初平穏に行われていたが、警察の警戒線を越えてグリーンゾーンに行こうとした一部のデモ参加者が警官隊と衝突して7人が死亡。その数時間後にロケット弾が打ち込まれた。【2月12日 AFP】
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バグダッドの“グリーンゾーン”については、以下のようにも。

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イラクの首都に、グリーンゾーンと呼ばれる地域がある。ここはアメリカ軍が多数駐留する頃に、造られた地域だったと思うが、今ではイラク政府の官庁ビルや、外国の大使館、国際機関の事務所に加え、要人の居住区になっている。*

当然、このグリーンゾーン内部は住環境が、バグダッドの他の地域に比べて、格段に恵まれている、ということであろうし、治安もいい状態にある。従ってバグダッドの一般市民にしてみれば、羨望の眼差しで見られる地域、ということになる。*

そうしたことから、市民に不満が高まると、このグリーンゾーン地域に対する、抗議デモが行われている。その意味では必ずしも、安全地帯とも言い切れないのかもしれない。【2月13日 佐々木 良昭氏 「中東TODAY」】
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デモで7名が死亡・・・ほかの国なら大きな問題となりますが、イラクだと「まあ、イラクだから・・・」ということで大したニュースにもなりません。

更に、ロケット弾が撃ち込まれ、しかもパフォーマンス的な1,2発ではなく6~7発も・・・これもほかの国なら大騒動になりますが、イラクだと「まあ、イラクだから・・・」ということで大したニュースにもなりません。

そういう訳ででしょうか、この騒ぎに関するニュースで他に目にしたのは下記のCNNのみ。
CNNは警官の死亡は伝えていますが、デモ隊側の死者は報じておらず“7人が負傷”とも。

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デモ隊と治安部隊が衝突、警官1人死亡 イラク首都****
イラクの首都バグダッド中心部で11日、アバディ政権への批判を強めるイスラム教シーア派の指導者、サドル師を支持するデモ隊が治安部隊と衝突し、市当局によると警官1人が死亡、7人が負傷した。

サドル師は同国の選挙管理委員会が腐敗しているなどとして改革を求めている。
支持者らは、政府機関や外国大使館が集まる市中心部の旧米軍管轄区域「グリーンゾーン」の境界にまで到達した。現場のビデオには、警察側がデモ隊に催涙ガスを発射する場面が映っている。

サドル師は衝突後の声明で、治安部隊が非武装のデモ隊に過剰な実力を行使したと非難。人権団体の介入を求め、アバディ首相の責任だと主張した。

アバディ首相も声明を出し、国民には平和的なデモを実施する権利があるが、公の秩序も重要だと指摘。暴力についての調査を指示し、責任者の逮捕を約束した。

国連イラク支援団(UNAMI)は首相が調査を指示したことを歓迎すると述べ、双方に平静を呼びかけた。
イラク合同作戦司令部によると、グリーンゾーンには同日、市東部からロケット弾が撃ち込まれた。デモとの関連は不明。ロケット弾による死傷者は報告されていない。【2月12日 CNN】
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“7人が死亡”なのか、“7人が負傷”なのか・・・いくらイラクでも“7人が死亡”だともっと大騒動になりそうに思えますので(サドル師が“非難”だけではすまさないでしょう)、“7人が負傷”なのかも。わかりません。


【“IS後”を睨んだ政治闘争】
いずれにしても、騒動の張本人はまたもサドル師です。
サドル師は昨年5月にもグリーンゾーンにデモ隊を突入させ死傷者を出しています。

2016年5月1日ブログ“イラク政治をかく乱するポピュリスト・サドル師の「グリーンゾーン」突入”http://ameblo.jp/azianokaze/day-20160501.html
2016年5月25日ブログ“イラク・シリアで対ISの軍事作戦が開始されるも、両国ともに問題も”http://ameblo.jp/azianokaze/day-20160525.html

昨年5月のデモは、内閣改造に伴い“政治改革断行を首相に迫る”という名目(実際は、自派勢力の拡大要求でしょう)でした。

サドル師はイラク戦争終結後、米軍を相手に“サドルシティー”などでシーア派民兵組織マフディー軍を率いて反米抵抗運動を展開した人物ですが、今は議会内の有力なシーア派勢力の指導者となっています。
しかも、シーア派最大の民兵組織を率いており、政府の治安維持が十分でないとして、シーア派住民が多い地区に独自に民兵部隊を展開しています。

サドル師は事あるごとに、政治が腐敗しているとか、治安が守られていない・・・として政府に圧力をかけていますが、腐敗にしても、治安問題にしても、サドル師自身がその元凶である・・・との指摘も。

“政治的嗅覚が鋭い”サドル師の動きが活発になっているのは、昨年騒動と同じように、やはりIS退潮がはっきりしてきたことから、“IS後”のイラク政治を睨んでのものでしょう。

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バグダッド・グリーン・ゾーンの戦い*****
・・・・今回のサドル派の怒りは、主に元首相のマリキー氏に、向けられたものであり、カチューシャ・ロケット弾に加え、銃器やナイフも持ち込まれたようだ。従って、警察側も当然、それを阻止できるだけの装備が必要であり、死傷者が多数出たということであろう。

こうした大規模な衝突が起こったということは、言葉を変えて言えば、イラクがIS(ISIL)との戦いの時期から、次の段階に入った、ということではないのか。

つまり、今回のグリーンゾーンに対するデモと衝突は、次の段階でサドル派がどのような権益を、得ることが出来るのかにかかっている、ということではないか。

アラブ世界での政治的な衝突の裏には、常に権力闘争があり、その権力闘争の裏にはいつも利益が存在する。言ってみれば、グリーンゾーンに対するデモは、経済行為の一種だ、ということではないのか。【2月13日 佐々木 良昭氏 「中東TODAY」】
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このあたりはシリアと同様です。

シリアでは“IS後”を睨んで関係国・各勢力が勢力圏確保に動いており、イラクではサドル師のような政治勢力が国内政治での有利な位置取りを目指している・・・といったところでしょう。

その意味では、今後、クルド自治政府と中央政府の“綱引き”や、多数派シーア派に対するスンニ派勢力の権限要求なども活発化するのではないでしょうか。

そうしたことから、イラクは三分割統治しかないのでは・・・という指摘もありますが、多数派シーア派のサドル師などは受け入れないでしょう。この人が暴れると、まとまる話もまとまらなくなります。

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