中国  宇宙技術の進展 月の資源利用? | 碧空

中国  宇宙技術の進展 月の資源利用?

中国 宇宙技術

【9月18日 産経ニュース】

【いかにも“中国的”なやり方で世界最大の電波望遠鏡】
8月6日ブログ“新技術の話題 「道路をまたぐバス」「セックスロボット」「自動運転車」”http://ameblo.jp/azianokaze/day-20160806.htmlで、中国の「道路をまたぐバス」という、自動車は「バス」の下をくぐりぬけて走る実にユニークで大規模な新交通システムを取り上げました。

“安全性、環境への影響、住民との問題、経済効率等々、いろんなことはあるのでしょうが、(中国経済崩壊の危険性とか、社会が抱える様々な深刻な問題といった話はさておき)こうしたものを作ってしまう中国経済・社会の活力というか、バイタリティーというか、かつて黒四ダムなどに挑戦していた日本社会が失いかけているものを感じます。”【8月6日ブログ】という「中国らしい新技術」の話題として紹介しました。

“何がすごいといって、「現在の車両でカーブを曲がれるかどうかは不明だという」という試作品をとにかく作ってしまうところがすごいです。”【同上】と中国のバイタリティーに驚いていたのですが、“中国メディアの取材によると、TEB(「トランジット・エレベーテッド・バス」)は退職した高齢者たちを中心に出資を集め、だまし取る大がかりな詐欺だったことが判明した”【8月28日 しらべぇ】とのことです。(まだ逮捕者が出たという話は聞きませんので、詐欺と確定した訳でもないのでしょうか?)
やっぱりカーブを曲がれない代物では・・・。

「道路をまたぐバス」は“ありゃりゃ・・・”という展開でしたが、下記の巨大電波望遠鏡は国家プロジェクトで完成品です。

中国 電波望遠鏡

【9月25日 時事】

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世界最大の電波望遠鏡=宇宙観測でもリード狙う―中国****
中国が南西部・貴州省の山中に建設していた巨大な球面の電波望遠鏡が完成し、25日に運用が始まった。口径500メートルの大きさは、同種の電波望遠鏡としては世界最大。軍事利用や将来の資源確保も見据え、宇宙開発を加速させる中国にとって、観測面でも世界をリードする狙いがある。
 
貴州省黔南プイ族ミャオ族自治州の自然のくぼ地を利用して建設された。反射鏡は地面に置かれた皿のような格好。面積はサッカー場約30個分に相当する。
 
中国メディアによると、宇宙観測の障害にならないよう半径5キロに電磁波の「静穏区」が設定され、住民約8000人が域外への移住を余儀なくされた。地元は観光客を誘致しようと、「天文科学文化園」を開設するが、展望台には携帯電話を含め電子機器は持ち込み禁止だ。
 
運用開始に当たり、習近平国家主席は祝賀のメッセージを送り、関係者に対して「世界の科学技術強国建設のため努力し、さらに大きい新たな貢献をするよう希望する」と指示した。【9月25日 時事】 
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“報道によると、この望遠鏡は「天眼」と命名され、構想から二十数年かけて貴州省の山中のくぼ地に完成した。総工費は約12億元(約180億円)。米自治領プエルトリコにあるアレシボ天文台(直径305メートル)を抜き、世界最大となる。137億光年(1光年は約9兆4600億キロ)以上離れた宇宙からの信号も受信できるという。”【9月25日 朝日】とも。

サッカー場約30個分に相当する電波望遠鏡、137億光年以上離れた宇宙からの信号も受信・・・・なんとも“すごい”と言うしかありません。

もっとも、壮大さも中国的なら、“住民約8000人が域外への移住を余儀なくされた”(朝日記事では“約1万人”)7というのも、中国らしいと言うか、中国のような国でないと出来ないとも感じられます。おそらく多くの住民は強制的に立ち退かされたのでしょう。

功罪の二面性がある新技術について、“罪”は切り捨てて、とにかく実現させるというのが中国的発想ですが、そこから得られる“功”も小さくないことも認めない訳にはいかないでしょう。


【将来の宇宙ステーション運用に向けて着実に前進】
中国の宇宙開発技術に関して言えば、国家プロジェクトとして推進しているだけに、その成果は目覚ましいものがあります。

素人にはよく意味が理解できませんが、先月には「量子暗号通信衛星」なんてものもありました。

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中国「量子暗号通信衛星」打ち上げ 盗聴不可能、世界初****
中国は16日午前1時40分(日本時間同2時40分)、甘粛省の酒泉衛星発射センターからロケット「長征2号丁」を使い、量子暗号通信の運用を目指す実験衛星「墨子号」を打ち上げた。

量子暗号通信は理論上、盗聴が不可能な通信システムとされる。この種の衛星打ち上げは世界で初めて。国営新華社通信などが伝えた。
 
量子暗号通信は、光子(光の粒子)の量子力学的な性質を利用したもので、盗聴を避けながら暗号キーを共有できる通信手段。盗聴されると光子の状態が変化するため、盗聴を感知できるという。
 
墨子号では、衛星−地球間の高速量子暗号通信や広域の量子暗号ネットワークの各実験を進めて量子通信の実用化を目指す。実験が順調に進めば、2030年ごろには宇宙規模での通信網が完成する計画。【8月16日 毎日】
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また、今月15日には、将来の宇宙ステーション運用に向けた無人宇宙実験室「天宮2号」を打ち上げています。

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中国、宇宙実験室「天宮2号」打ち上げに成功****
中国の無人宇宙実験室「天宮2号」が15日夜、内モンゴル自治区の酒泉衛星発射センターから打ち上げられ、予定の軌道に乗ることに成功した。2022年ごろまでに独自の宇宙ステーションを建設する計画の一環。

中国は2011年9月に最初の宇宙実験室「天宮1号」を打ち上げた。「天宮2号」はその後継機で、現地時間15日午後10時(1400GMT、日本時間午後11時)に打ち上げられ、その様子は国営テレビで生放送された。

10月には2人の宇宙飛行士を乗せた宇宙船「神舟11号」が打ち上げられ、軌道上で「天宮2号」とドッキングする。

宇宙飛行士らは「天宮2号」に1カ月前後滞在し、将来の宇宙ステーション運用に向けたシステムの試験や各種の科学実験などを行う。

中国の宇宙開発計画の当局者は今年4月、2022年の運用開始を目指して、2018年ごろから独自の宇宙ステーションの建設を始める計画を明らかにしている。【9月16日 ロイター】
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この「天宮二号」にも前出の量子配送鍵実験機器が搭載されており、「墨子号」と同様に、地上局と量子暗号通信の実験を行う予定とのことです。

“2022年の運用開始”ということですが、そのころには米航空宇宙局(NASA)がロシアなどと共同で運用している現在の国際宇宙ステーション(ISS)は終了することになっていますので、宇宙ステーションは中国の独壇場となることもあるのでしょうか。

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中国「第2の宇宙ステーション」打ち上げ成功 今後10年間かけ規模拡大の意向****
中国は9月15日、宇宙ステーション「天宮2号」の打ち上げに成功した。4~6週間以内に有人宇宙船「神舟11号」をドッキングさせ、さまざまな科学研究を行う計画だ。

無人宇宙実験室「天宮2号」は、「長征」ロケットで打ち上げられた。今後、2人の宇宙飛行士が搭乗する「神舟11号」を天宮2号にドッキングさせる計画がある。(中略)

宇宙飛行士たちは天宮2号に約1カ月間滞在し、ラボの生命維持システムのテストや科学研究を行う予定だ。中国国営の新華社通信によると、医学、物理学、生物学といった分野の実験のほか、量子鍵伝送、宇宙原子時計、太陽風の研究も行われるという。

中国は、強固な宇宙計画の一環として、今後10年間をかけて(天宮2号を)普通の大きさの宇宙ステーションへと規模を拡大する意向だ。宇宙担当の当局者によれば、その下準備のため、2017年に中国初の無人補給船「天舟1号」を天宮2号に向けて打ち上げる予定だという。

中国が最終的に計画しているモジュール式宇宙ステーションは、重量が約60トンになるとみられる。天宮よりもかなり大きいが、420トンの国際宇宙ステーション(ISS)と比べるとまだ小さめだ。

中国の大型宇宙ステーション打ち上げは、ISSの運用が中止される時期と重なる可能性がある。米航空宇宙局(NASA)とそのパートナーは、2024年までISSの運用を継続すると約束しているが、その後ロシアは独自路線を取る可能性がある。

中国は、ISSに関係する欧州諸国に対して、2020年代半ばに自国の宇宙ステーションを訪問するよう誘いかけている。

中国は米国との協力にも関心を寄せているが、米国議会は、宇宙飛行活動に関して中国との直接協力をNASAに禁じる法案を可決している。【9月18日 産経ニュース】
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外部からドッキングのもようを撮影する小型衛星「伴星2号」によって「天宮2号」と「神舟11号」のドッキングは「記念撮影」されるそうですから、近日中に中国から誇らしげな映像が配信されるでしょう。


【月の裏側をめざす目的は「理想の核融合燃料」ヘリウム3独占?】
2013年、月面探査機「嫦娥(じょうが)3号」によって米、旧ソ連に続き3カ国目となる月面着陸に成功した中国には“月の裏側計画”もあります。

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中国が1万年もエネルギー独占!? 次は「月の裏側」探査“世界初の偉業” 恐ろし過ぎる目的****
・・・・さて、今回明らかになった“月の裏側計画”ですが、中国国営新華社通信(2015年9月8日付英語電子版)によると、今回、月の裏側をめざすのは、初の月面着陸を果たした「嫦娥(じょうが)3号」の予備機「嫦娥4号」です。
 
中国の科学技術分野の最高研究機関、中国科学院の月面探査部門に所属する科学者、ツォウ・ヨンリャオ氏が、9月8日に開かれた深宇宙(地球から遠く離れた宇宙)の探査について話し合うフォーラムで、20年までに嫦娥4号を打ち上げると明言。
 
複数の欧米メディアに、中国政府から依頼された専門家が過去1年間にわたり査定調査を実施したと説明したうえで「成功すれば、われわれが月の裏側に到達した世界最初の国になるだろう」と胸を張りました。

「5号」が月の裏側を撮影し帰還、2年後に岩石を採取・・・電波の届かぬ難題、解決めど
この計画については、同じ月面探査部門のチーフ科学者、ウー・ウェイレン氏が今年5月、中国の国営テレビ局、中国中央電視台(CCTV)に対し、月の表面を月面探査車で調べるため、嫦娥4号を月の軌道に送り出すことになるだろうと語っています。
 
実際、中国側の準備は“万全”です。既に2014年10月24日、月から探査機を帰還させるための実験として、嫦娥5号(4号とちゃいますよ!)の試験機「嫦娥5号T1」の打ち上げに成功しました。このT1は月の裏側を回り、翌11月1日、大気圏に再突入し、無事、地球(内モンゴル)に着陸しました。
 
そして中国の英字紙チャイナデイリー(9月3日付電子版)によると、中国政府は、T1が撮影した嫦娥4号の着陸予定地点の鮮明な画像を公開しました。月面から約30キロの地点から撮影したといい、解像度は1メートル級の凄さです。
 
こうした準備を経て、嫦娥4号は月の裏側でさまざまな調査を行いますが、中国ではまず、2017年に嫦娥5号を月面に着陸させ、搭載した探査車を使って月面の地下2メートルの地点の岩石などのサンプルを採取し、それを地球に持ち帰る計画です。
 
これまで各国が月の裏側を調査できなかったのは、地球から見えないうえ、電波が届かず、そちら側の宇宙船と通信ができないからなのですが、どうやら中国はこの難題の解決にもメドをつけたようです。【2015年9月29日 産経WEST】
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地球から見えないうえ、電波が届かず通信ができない月の裏側・・・・という問題は、裏側にいる探査機と地球との間を無線信号で中継するための宇宙船を月の軌道上に送り込むことで解決できるそうです。

「この方法は、米航空宇宙局(NASA)が火星に送った無人探査機「オポチュニティー」や「キュリオシティ」で実現したことと同じで、それほど困難なことではない」「中国の宇宙開発は、月面への着陸も通信衛星の構築も可能であると証明しており、20年までに月の裏側に探査機を送り込むという彼らの目標は間違いなく実現可能である」(豪メルボルンのモナッシュ大学の天文学者、マイケル・ブラウン博士)【同上】

「宇宙プロジェクトは複雑なように見えるが、基本的な概念が確立されてから数十年経っており、決してハイテクなものではない。意欲と資源があれば、多くの国が参加できる」【5月9日 香港アジア・タイムズ】とのことです。

かつて、中国が大型の衛星を打ち上げた際に、東京都知事の石原某老人は「支那のロケット技術など規模が大きいだけで大したことがない。日本の精緻なロケット技術の方がずっと優れている」といった趣旨のことをTVで語っておられ、現実が認識できない老人には困ったものだ・・・と感じた記憶があります。

現在の日本には、宇宙開発といった分野に注ぐ「意欲と資源」はあまりないようです。

中国が並々ならぬ「意欲と資源」を宇宙技術開発に注ぎ込んでいるのは、単に国威発揚や軍事面だけでなく、将来に向けての資源の確保が目的である・・・・という話が以前からあります。

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月に存在する夢の資源・ヘリウム3、中国が独占を画策か―英紙****
2014年8月7日、環球時報(電子版)によると、英紙タイムズは5日、中国が月に存在する夢の資源・ヘリウム3の独占を狙っていると伝えた。

宇宙の初期においてビッグバン原子核合成の結果生まれたヘリウム3は、太陽風によって供給され続けているものの、地表の大気層などの影響で地球上にはごく微量しか存在していない。一方、月には太陽風から供給された数十億年分のヘリウム3が堆積している。

関係者は「ヘリウム3に対する中国の態度は日に日に真剣になってきている」と指摘する。中国の科学者らは月に存在するヘリウム3を核融合などに利用することによって、少なくとも世界全体の1万年分のエネルギーをまかなえると考えている。

中国は経済成長の持続のために大量のエネルギーを必要としているが、多くの都市の汚染は極めて深刻で、石炭採掘や火力発電などに対するさらなる代価を負担しきれなくなっており、代替エネルギーの開発が急務となっている。

台湾淡江大学の博士は最近の論文で「中国は月での採掘活動が全人類にメリットがあると考えている。一方で、競合相手が少ないことから、中国がヘリウム3の独占を狙っているのではと推測する人もいる」と記した。

ノッティンガム大学の未来学者クリストファー・バーナット准教授は、「月でのヘリウム3の採掘活動に関する前途に消極的になりすぎるべきではない。これは誰が投資するかという問題に過ぎない。定期的な選挙による制限を受けず、資金力も豊富な中国は最適な位置にある」と指摘した。

一方、月での採掘活動に疑問を呈する科学者もいる。ロンドン大学マラード宇宙科学研究所の責任者アンドリュー•コーツ氏は、「地球と月の間の輸送方式はまだ完全ではない。核融合炉もまだ実現できていない。ヘリウム3の利用はすばらしいアイデアの1つだと思うが、まだ夢物語の段階だ」と指摘している。【2014年8月12日 Record china】
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ヘリウム3とは“太陽の中の核融合反応で、ヘリウム3ができます。このヘリウム3は、太陽風(太陽から流れてくる粒子の流れ)に乗って、月へ届きます。月には大気がありませんので、ヘリウム3は月の表面の砂(レゴリス)に吸着されます。 月ができてから45億年の間に、太陽からのヘリウム3は月の表面の砂にずっと吸着され続けてきたと考えられています。”【http://moonstation.jp/faq-items/f606】とのことです。

「理想の核融合燃料」とされるヘリウム3ですが、少なくも「現在の技術水準」では困難な問題を伴います。

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ヘリウム3を含むのは、月の砂の中に含まれている鉱物「イルメナイト」です。月の砂には、イルメナイトが約10パーセントほど含まれています。イルメナイトは、粒子の大きさが8〜125マイクロメートルととても細かいため、太陽から月表面に降り注ぐ太陽風に含まれる微粒子を吸収しやすい性質を持っています。

ヘリウム3は、月の砂を600度以上に加熱すれば得られます。しかし、ヘリウム3は月の砂に均等にごくわずかずつ含まれているだけですので、そのためには膨大な砂を処理しなければなりません。

仮に、ヘリウム3を10トン取り出そうとすると、月の砂は100万トンも必要になってしまいます。日本の年間消費電力をまかなうために、月の砂を毎日3000トン近くも処理しなければなりません。

また、いま研究されている核融合に比べて、ヘリウム3の核融合は、必要な温度が高く、技術的にもたいへん難しいとされています。ですから、実用化できるのはもっとずっと先のことになると思います。

このようにヘリウム3によるエネルギーを使えるのは、まだまだ先の話ではあります。しかし私たちが将来月に進出して、月面基地を作る頃になれば、あるいはヘリウム3による核融合発電で、快適な月の生活を送れるようになっているかも知れません。【前出http://moonstation.jp/faq-items/f606
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どの程度本気で中国が月の資源利用を考えているのかは知りません。カーブを曲がれない「道路をまたぐバス」のような話なのか、それでも試作品をつくるバイタリティーが最後には成果をつかむのか・・・。
中国の宇宙技術が着実に前進していることは間違いないでしょう。


【中国技術の「品質問題」】
最後に、中国嫌いの人たちのために、中国の技術開発の問題も。

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中国製戦闘機、アフリカで「品質問題」、5年で3分の1が墜落大破****
2016年9月20日、米政府系放送局ラジオ・フリー・アジア(RFA)は、中国製戦闘機の品質がアフリカで問題となっていると伝えた。

中国の軍事動向に詳しいカナダの民間研究機関「漢和情報センター」によると、中国は先ごろ南アフリカで行われた航空見本市で、中国が自主開発したL−15練習機と中国がパキスタンと共同開発したFC−1(梟龍)戦闘機の売り込みをかけ、ナイジェリア空軍からFC−1戦闘機の受注を獲得したと一部で報じられていた。だが、同センターの平可夫(ピン・コフ)編集長は、ナイジェリア空軍関係者の話として、この情報を否定した。

同関係者は「中国製J7戦闘機をこの5年間で12機輸入したが、すでに4機が墜落して大破した。今は学校の飛行試験で使用しているだけだ」と話しているという。【9月23日 Record china】
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