用心棒 | 映画のある生活

用心棒

Yojimbo
1961年、日本
110min、白黒

監督:黒澤明
出演:三船敏郎、仲代達矢、東野英治郎


素浪人がふらりと訪れたさびれた宿場町。
この町ではやくざと元締めが対立を深めていた。
立ち寄った居酒屋では早く町を出るように促されるが、
素浪人は双方に用心棒として自分を売込みを始める。
素浪人をめぐって争いはますます激しくなっていく。

※ネタバレ※
面白いですねー!!三十郎のルーツはここにあったのですね。
椿三十郎 』には椿が、そしてこちらには桑畑があったのです。
丑寅、亥之吉、卯之助など兄弟の名前が遊び心があって素敵。

キャラクターの性格が実に単純なのです。でもそれがいい。
うまく言い表せないのですが、何と言うか気負いがないのがいい。
仲代達矢以外の悪者が格好悪いのがいい。情けない悪者。
ステレオタイプな同情の余地もないほどみっともない悪者たち。
彼らのおかげで三十郎が引き立てられて魅力を増しています。

黒澤明監督のユーモアのセンスに驚愕です。意外だったんです。
三十郎と共に雇われていた用心棒が決戦当日こっそり逃げたり。
しかも三十郎が見ていることに気づくと手を上げて挨拶まで。
コントのようなシーンが度々登場してきて面白かったです。

脚本に隙がない。突っ込みどころが全くといっていいほどない。
無理に無駄に複雑にすることなく練られたシンプルなストーリー。
矛盾や不自然さを感じないんです。パズルのように完璧な組立て。

丑寅のお喋りな子分2人に迫るシーン。塀に影が映し出される。
はっとさせられました。素晴らしく効果的で洗練された演出。
三十郎が画面に映し出されることよりも緊張感が高まります。

やはり三船敏郎の存在感はすごいですね。画面が引き締まる。
敵に捕まりぼろぼろになっても威厳がある。迫力がすごい。
捕らえられていた部屋から逃げ出すシーンははらはらしました。

仲代達矢がまた格好いいんです。悪役が本当によく似合う。
救いようがないほど悪い役。良心のかけらもないような悪人。
目がすごくいい。争いのシーンなんか目がギラギラしています。

三十郎のキャラクターが本当に素敵。格好よすぎますよ、貴方。
居酒屋の親爺さんに指摘されたとおりです。悪人ぶった善人。
シャイなのでしょう。名声や富などには興味がないのでしょう。

最後、瀕死の卯之助に銃を渡すシーン。「弾は入っていない」
確認せずに渡します。このシーン、説明できないほど最高です。
これが三十郎なのですね。漢の中の漢とはまさに貴方のこと。

ヴェネチア国際映画祭
・男優賞(三船敏郎)
ブルーリボン賞
・主演男優賞(三船敏郎)